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福島原発の真実(佐藤栄佐久)

福島原発の真実福島原発の真実
(2011/06/23)
佐藤栄佐久

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先月読んだ『原発社会からの離脱』で、佐藤栄佐久さんが知事をつとめた頃の福島県、そして福島県職員のあり方に興味をもった。飯田哲也は「中身のある議論をさせるという文化を徹底されていた」と書いていた。

その佐藤さんが書いた『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』も読んでみたいが、図書館にみあたらないので、先にこの『福島原発の真実』を借りてきた。

国がすすめてきた原発推進政策に対して、原発立地県の知事としての経験をもとに、県民のいのちをあずかる知事として福島県が真っ当に主張してきたことが書かれている。そして、度重なる事故隠し、データ改竄、それでも力づくでプルサーマルを進めるのだという勢力のことが書かれている。

2003年4月、プルサーマルを受け入れた自治体に対して、使用済み核燃料に対して拠出する電源三法交付金の額を大きく増やすという「アメ」を出してきた資源エネルギー庁に対して、佐藤さんはこう書く。

▼…なりふりかまわぬそのやり方は、私が問題提起した「原発とはもともと危険なもの。そのことを認めた上で、どうしてもエネルギー確保のために必要なら、考えうる最大の安全対策を行い、地元の了解のもと運転をする」という考え方のみじんもない政策である。(pp.185-186)
この年の4月、福島原発のトラブル隠蔽から、安全点検のために東電のもつ原発17基がすべて運転停止し、まるでこの夏のように、東京発のメディアでは「大停電がくる」とあおられた。佐藤さんは、「首都圏大停電」を盾にとって原発を動かさないと言っているかのように書かれた。

佐藤さんが、原発再稼働を受け入れるかどうか、福島県民のいのちを守るために設定した条件はふたつ。「事故情報を含む透明性の確保」と「安全に直結する原子力政策に対する地方の権限確保」、どちらも何度も問いかけ、求め続けてきたことだった。

しかし、福島県はなんども、なんども裏切られる。そもそも、原発をめぐる「ガバナンス」が異様なのだった。

▼…東電や原子力関係者は原発の専門家であり、一番詳しいわけだが、原発が異常を検知して自動停止したり、警報が鳴りっぱなしになっても「わからないけどまあいいや」と運転を続け、トラブルが深刻になったとしても地元や県は放っておいて、東電本店に連絡すればよい。東電は、監督官庁である通産省に報告すればそれでよいというのが、原発をめぐる「ガバナンス」なのだった。これでは地元はたまったものではない。
 さらに、東電には、「念のため、止めて点検してみよう」というフェールセーフの思想がないということがわかった。専門官を信頼できない。ということは、地元は常に危険にさらされているということだ。(p.28)

これは1988年暮れからトラブルが三度も起こっていたのに、原子炉は三度目の警報を受けて(それも6時間も警報鳴りっぱなしで運転したあげくに)やっと停止されたという事故の際に、知事になったばかりの佐藤さんが痛感したことだ。

原発を稼働すれば「使用済み核燃料」がどんどんたまる。とりわけ毒性が高く、核兵器にも転用できるプルトニウムがやっかいだ。原発が「トイレのないマンション」と言われるのは、その使用済み核燃料の処理も最終処分地も決まらないまま、原発を稼働してきたからだ。しかも、国際的に「余分なプルトニウムは持たない」と公約している日本。

使用済み核燃料の再処理でとりだしたプルトニウムを通常のウラン燃料にまぜて、通常の原発で燃やすというプルサーマルは、この「プルトニウムをどないかせなあかん」ところから推進されてきた。

だが、東電や経産省ともやりあってきた中で、「プルサーマルは本当に必要なのだろうか?」という疑問が佐藤さんの胸にはうまれていた。

最初に結論ありきで、つまりプルサーマルをやることが前提で住民理解がどうのとか安全性がどうのと検討するのではなくて、プルサーマルについて「白紙」から検討を始めるという福島県エネルギー政策検討会が設置された。10年前、2001年のことだ。この検討会の「中間とりまとめ」が、飯田哲也が全国民が読んだほうがいいと言った「電源立地県 福島からの問いかけ あなたはどう考えますか?~日本のエネルギー政策~」(pdf)である。

なぜ検討会を設置するに至ったか、中間とりまとめの冒頭にはこう書かれている。

▼…このように国策として一旦決めた方針は、国民や立地地域の住民の意向がどうあれ、国家的な見地から一切変えないとする一方で、自らの都合により、いとも簡単に計画を変更するといった、国や事業者のブルドーザーが突進するような進め方は、本県のような電源地域にとって、地域の存在を左右するほどの大きな影響を与えかねないものです。こうした動きに左右されず、地域の自立的な発展を図っていくためには、電源立地県の立場で、エネルギー政策全般について検討し、確固たる考えのもとに対処していく必要があると考え、エネルギー政策検討会を設置いたしました。(中間とりまとめ、p.4)

その検討のあらましが、国の見解と並べるかたちで、『福島原発の真実』の中盤以降で紹介されている。

議論を重ね、真摯な検討をしてきた福島県には、原発関係者(その多くは何次にもわたる下請けの労働者や技術者)から、内部告発が続々と寄せられるようになった。その一部が紹介されているが、こんな状態で、外には「安全です」と繰り返しながら原発は稼働してきたのかとぞくぞくした。

「必要だから、正しい。安全だ」という日本社会の至るところにある嘘と欺瞞はメルトダウンしたのだ、と佐藤さんは書いている。それは佐藤さんが陥れられた汚職事件の取り調べにあたった検察にも言える。「目的」をもって動き、決めたストーリーに当てはまらない証拠は隠したり改竄したりし、自分たちに都合よく書いた「シナリオ」通りに突き進む。

原発だけではないし、検察だけではないのだと、つくづく思った。

(10/3了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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