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エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学(すぎむらなおみ)

エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学エッチのまわりにあるもの
―保健室の社会学

(2011/03/10)
すぎむらなおみ

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タイトルが気になっていた本の著者・すぎむらさんが、こんど箕面のらいとぴあセミナーに来る!というので本を借りてきて読む。

「すぎむらと同じ気もちのゆれを経験してみよう」と思われるなら、ぜひ第10章からとあったので、10章から読んでみる。10章は「「援助交際」とはなにか」。すぎむらさんを混乱に陥れた、3人の生徒・アヤナ、イズミ、ウヅキの話。

アヤナ「…男の人が、あたしのためにお金を払うんだよ。すごくない? で、みんな、あたしをほめる。あたし、先生なんかより、ずっとたくさんの男の人にほめてもらってるとおもうよ」(p.222)
イズミ「あったりまえじゃん。むこうはお金があるんだし、お金もらうから対等につきあえるんだよ」(p.222)
ウヅキ「…わたしは、気分がいいの! モテモテ気分ってか、女王さまになった気分。ほめられるって、いいよ」(pp.222-223)

どうも、3人とも「援助交際」で自尊心が高まっているらしい。すぎむらさんは混乱しながら、彼女らそれぞれの事情もふりかえりつつ考える。
▼…「さみしさ」の穴うめだったら、彼氏でも友人でもよかったのではないか。注意をひくためだったら「暴走族」にはいってもいい。「援助交際」を嗜癖や自傷行為の一種とかんがえるなら、「リストカット」も「摂食障害」もえらべた。しかし、「援助交際」なのだ。(p.226)

それらを手軽にみたせるのが「援助交際」ではないかとすぎむらさんは考える。「"女子高生"というブランド」さえあれば。では、そのブランドを成立させているものはなにか? 学校から、生徒から、性的なニュアンスを消し去ろうとする学校文化こそが「援助交際」を可能とする「女子高生ブランド」を生みだしているのではないか。性的な身体をもっている高校生が、そのように身体を使うのは禁止されている、その落差が"発情装置"になるのではないか。

魂に悪いとか、身体を売るなんて心に傷がつくとか、そんなことを言って生徒を止めるのは簡単でうるわしいかもしれない。でも、援助交際=悪という前提やその是非を問う議論よりも、高校生はこうあるべきという規範に沿うよう生徒を指導するよりも、自分の価値観がぐらぐらになるかもしれへんところで、生徒と向きあわれへんのか!と、すぎむらさんは書いている気がする。

援助交際について先生どうしで話し合ったときに出た率直な意見は、しかし「先生としては、こんなことは言えないよね」と封じられてしまう。教師としては、親としては、○○としては「言えないよね」というのは、立場?常識?保身? ぐるんぐるんといろんなことを考えながら10章を読んで、本のはじめから読む。  

自分が生徒に「こうであってほしい」と考えてきたこともまた常識にしばられていたのかもと書くすぎむらさんの言葉は、読んでいて、きもちに添うかんじがする。「こうあるべき」「こうするべき」よりも、いま自分の前にいて、こう生きている生徒の姿をうけとめ、そこから自分をかけて、考えてるかんじがする。

とくに印象に残ったのは、性的虐待について書いた7章で、高校生の相談する先が「実質的にない」ということだった。児童相談所に電話をかけたすぎむらさんは、「もう17歳なんですよね。こちらも手いっぱいで… どうしても小さい子どもや命の危険があるケースが優先になりますから」と言われ、女性センターでは「未成年のかたは… こちらはDV被害にあっている女性むけなので」と言われる。本人でなくても、ぐったりしてしまう。じゃあ、たすけを求めたい高校生やティーンエイジャーが頼れるところは、どこにあるのかと。必要な人がそこにおるんやからやるんやと、そうふみきれない制度のうすさ、線引きのわからなさ。

この本は、各章のはじめに「LLページ(日本語がにがてな人にもやさしく読めるページ)」があり、章のなかにも「言葉のせつめい」がやはりLLページでもうけられている。誰もがよめる、たのしめる本というこんな試みがあることは知ってはいたが、実際の本で取り入れられているのを見るのは初めてに近い。

すぎむらさんが、明日のセミナー「からだのこと、性のこと、思春期のこどもたちにどう伝える?!」で、どんな話をしはるんか、すごくたのしみ。

(9/30了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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