読んだり、書いたり、編んだり 

星間商事株式会社社史編纂室(三浦しをん)

星間商事株式会社社史編纂室星間商事株式会社社史編纂室
(2009/07/11)
三浦しをん

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漢字が13も並ぶ小説のタイトルもなかなかないような気がする。久しぶりに三浦しをんの蔵書検索をして借りてきたもう一冊。

主人公は、星間商事株式会社社史編纂室ではたらく川田幸代。かつては企画部で、郊外の大型ショッピングモールを手がけたこともあるが、あまりにも忙しくてプライベートな時間が持てないくらいだった。「べつに出世したいとは思っていない。割り振られた仕事を着実にこなし、見合うだけの給料をもらい、夜と週末は必ず体が空く」という生活をしたいと上司に伝え、飛ばされた先は社史編纂室だった。

社史編纂室のメンバーは、揃いも揃ってどこかから飛ばされてきたようで、部長に至っては幸代をはじめ同僚のみっちゃんも矢田も見たことがなく、幽霊部長とよばれていた。

社史編纂のための部署だが、創立60周年には結局間に合わず、作業はほとんど進まないままのゆるゆるの職場で、幸代はプライベートのほとんどをつぎこんでいるといっていい「同人誌」づくりのコピー作業を休み時間にこっそりやったりもしていたのだ。

そのこっそりコピーが、編纂室の課長にばれたところから、話は立体的になってくる。なぜか課長は、社史編纂室で同人誌をつくろうとぶちあげ、自分が主人公(しかもなぜか若侍)という小説をいそいそと書いてくる。
本来の業務である社史編纂のための調査の過程で見つけた「1950年代の穴」、なぜかほとんど資料が残っておらず、かつての先輩社員たちに話を聞いても詳しく語りたがらない「高度成長期の最初のころ」の部分を、幸代やみっちゃんが熱心に調べだしたところへ、脅迫ハガキが届き、その「穴」は会社にとってふれられたく内容らしいことがわかってくる。

幸代の書く同人誌のための小説と、課長の書いてくる自分史まがいの小説と、星間商事にとって「ないこと」にしておきたいある時代の話とがからみながら、幸代のまわりの人間関係におきる変化をまじえて、物語はすすむ。

同人誌は、高校以来の友人である実咲と英里子とともに、ずっと仲よくやってきた。結婚し、子どもが2人になった英里子が語る「育児を手伝うだんなさん」というほめられ方のヘンさ。オタクな趣味を隠したままつきあってきた相手から結婚を申し込まれて迷った挙げ句、同人誌の世界から抜けるという実咲。幸代がつきあってる洋平は、アルバイトをしてお金が貯まるとふらりと旅に出て、短ければ一週間、長ければ一年近く音信不通のまま、それでも旅の終わりには幸代のもとへ戻ってくる。

その洋平との関係のさびしくて楽しいところや、つきあっている相手に同人誌のことを言えないまま結婚を迷う実咲のことを考える幸代に、洋平はこんなことを言う。

「たとえば俺は、一人で山へ行く。さびしいけど、楽しい。それがいいんだ。なにかを好きだと思ったり、なにかをせずにはいられないと思ったりするのって、ひとの心の一番大事な部分だろ」(p.17)

いろんな話が錯綜して、読んでいる途中でやや混乱したが、社史編纂室が一丸となって「裏社史」の同人誌をつくりあげ、それを「表の社史」とともに発送してしまうまでの勢い(と対照的に日々はぬるい仕事ぶり)もおもしろかったし、親から結婚への期待をほのめかされながら、雑草的生命力はあるもののそういうこととは縁遠そうな洋平との話もわかるなーと思えるところがあって、イッキ読み。

戦争賠償とアジア、高度成長時代のあれこれの話は、そういう面もきっとあったのだろうと思いながら読んだ。

(10/2了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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