読んだり、書いたり、編んだり 

神去なあなあ日常(三浦しをん)

神去なあなあ日常神去なあなあ日常
(2009/05/15)
三浦しをん

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『We』やら本を背負って売りにいって帰ってきたら、くたびれてしまい、早めに布団に入ってごろごろしながら久しぶりに三浦しをんの小説を読む。出た頃には、山のようにリクエストがついていて、読まずにいた一冊。さすがにもうガラガラに空いていた。

主人公は、横浜うまれ、横浜そだち、勉強も全然好きじゃなかったし、成績もよくなかったし、高校を出たら「適当にフリーターで食っていこうと思っていた」平野勇気。

高校の卒業式当日に「先生が就職先を決めてきてやったぞ」と担任に言われ、家に帰ったらすでに母ちゃんは勇気の部屋にあれこれのガラクタを運びこんでいて「着替えや身のまわりの品は、神去村に送っておいたから。みなさんの言うことをよく聞いて、頑張るのよ」と言い、父親からの餞別を勇気に渡すと、家から叩き出した。

どこへ行くんだよ!3万の餞別でどうしろっての!ふざけんな!と怒鳴ってもむだだった。勇気は担任に新横浜の駅まで送られ、神去村への行き方を書いた紙を渡されて「一年間は帰ってこられないぞ。体に気をつけて、しっかりやれ」と送り出された。

新幹線で名古屋まで、そこから近鉄で松阪まで、さらにローカル線に乗り換えて山の奥へ奥へ。最初は旅行気分だったが、ローカル線の途中で携帯は圏外になり、ローカル線の終点へ迎えにきた軽トラに乗せられて、また1時間。そうしてついたのが三重県中西部の神去(かむさり)村。高校生以上の若い者はほとんど村を出てしまい、高齢化と過疎がすすむ村。

村の人たちの口癖は「なあなあ」。「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」といったニュアンスの言葉で、語尾にも「な」がつくことが多いので、おっとりした口調に聞こえる。
平野勇気は、そんな神去村で、林業に就業することを前提に国が助成金を出す「緑の雇用」制度で、研修生として受け入れられたのだった。ついた翌日から始まったのは、熱心な指導。チェーンソーの扱いから始まり、先輩たちに、どやされ、しごかれ、励まされながら、当初は何度か脱走をこころみた勇気も、しだいに林業の仕事の奥深さを知り、山奥の村の暮らしにもなじんでいく。

都会育ちの勇気には信じられないことや、はぁ?と思う風習もいろいろとあり、ヨソ者の勇気をほんとうに村の行事に参加させていいのかというやんわりとした抵抗にもあうが、山火事の消火に尽力したことを契機に、そうした見方もすこしずつ消えて、48年に一度という神事にも勇気は加わることになる。

その勇気自身が、先輩のヨキ宅でほこりをかぶっていたパソコンを使い、神去村での一年を書いたかたちでさしだされる物語。

▼「日本の森林で、人間の手が入っとらん場所なんかないで。木を切り、気を使い、木を植えつづけて、ちゃんと山を手入れする。それが大事なんや。俺たちの仕事や」(p.67)

先輩の厳さんにそう言われても、林業にかかわったばかりの勇気にはじゅうぶんのみこめないが、木の育つ時間、土の威力、山とひととの関係、そんなのもじんわりと感じられ、疲れた身体に爽快な風が吹くような話だった。

うまいなー、三浦しをん。

(10/1了)
 
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高校卒業と同時に横浜から山奥の神去村に林業の研修生として送りこまれた勇気。 彼がその地で過ごした1年を描いている。 【送料無料】神去なあなあ日常価格:1,575円(税込、送料別) 親と高校教師が勝手に進路を決めてしまうというのは、かなり無謀。 作者の三浦は、こ…
2011.11.21 17:05
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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