読んだり、書いたり、編んだり 

ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸(絵 ベン・シャーン、構成・文 アーサー・ビナード)

ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸ここが家だ
ベン・シャーンの第五福竜丸

(2006/09/26)
絵 ベン・シャーン
構成・文 アーサー・ビナード

商品詳細を見る

第五福竜丸のことは、ビキニ水爆実験による「死の灰」で被曝し、無線長だった久保山愛吉さんが亡くなったこと、そこから水爆反対運動が起こったが、その反対運動と広島や長崎の被爆者のこととはあまり結びついていなかったらしい、というようなことを知るのみだった。

ベン・シャーンの絵に、アーサー・ビナードが文をつけた、こんな絵本があるのを知って、図書館で借りてみた。

広島型原爆の1000倍を超える爆発力のビキニ水爆実験。1954年3月1日。太平洋は広く汚染され、放射能の雨は日本にも降ったという。第五福竜丸は、ビキニ環礁の近くで延縄漁をしていた。「近くで」といっても、そこは米軍が定めた危険区域外の公海だった。

「原水爆の 被害者は
 わたしを さいごに
 してほしい」といって
かれは なくなった。
ひとびとは わかってきた──
ビキニの海も 日本の海も アメリカの海も
ぜんぶ つながっていること
原水爆を どこで 爆発させても
みんなが まきこまれる。
 (p.38)
「久保山さんのことを わすれない」と
ひとびとは いった。
けれど わすれるのを じっと
まっている ひとたちもいる。
 (p.40)

巻末に、アーサー・ビナードが「石に刻む腺」という文章を書いている。そのなかで、第五福竜丸について、久保山愛吉さんについて、知らずにいたこんなことを知る。

▼…「水平線にかかった雲の向こう側から太陽が昇る時のような明るい現象が3分くらい続いた」と、無線長の久保山愛吉が、爆発時の様子を語った。経験豊かな彼は、自分たちが軍事機密に遭遇してしまったことを察知し、仲間に大声でいった──「船や飛行機が見えたら知らせよ。そのときは、すぐに焼津に無線を打ち、自分たちの位置を知らせる。そうでなければ無線は打たない」。発信が傍受されれば、自分たちが攻撃目標にされかねないことも分かっていた。
 死の灰にまみれて、放射能病に耐えながら、第五福竜丸の23人の乗組員は自力で、二週間かかって母港の静岡県焼津に帰った。自らの体験を語り、水爆の生き証人となった。(p.53)

サッコとヴァンゼッティ事件も描いたベン・シャーンが、生涯の最後に描いた連作が第五福竜丸、Lucky Dragon Seriesだった。このシリーズを久保山愛吉さんを主人公として描いたことについて、ベン・シャーンはこう語っているという。

「放射能病で死亡した無線長は、あなたや私と同じ、ひとりの人間だった。第五福竜丸のシリーズで、彼を描くというよりも、私たちみなを描こうとした。久保山さんが息を引き取り、彼の奥さんの悲しみを慰めている人は、夫を失った妻の悲しみそのものと向き合っている。亡くなる前、幼い娘を抱き上げた久保山さんは、わが子を抱き上げるすべての父親だ」 (pp.54-55)

亡くなったとき、久保山さんは40歳だった。今の私より若い。

「ひとは 家をたてて その中にすむ」という焼津の町の風景から始まる絵本は、「船にのれば そこは みんなの家」と、出港した第五福竜丸は23人の漁師たちにとっての「家」なのだと伝える。私たちみなが住む、それぞれの「家」はここにあると、本のタイトルは伝えているのかなあと思う。

(9/4了)
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/4079-0711447e
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ