読んだり、書いたり、編んだり 

しずかな日々(椰月美智子)

しずかな日々しずかな日々
(2010/06/15)
椰月美智子

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避暑と休養の3日のあと、同居人の里からの帰りに読むものを何かと本屋に寄って買った本(同居人はこのときに『図書館戦争』を買っていた)。帯と解説を北上次郎が書いていたのと、帯の背に「劇的ではない人生をこれからも生きていく」とあったのを見て、この本にした。日経の水曜夕刊で、毎週三人の目利きが三冊ずつ本を選ぶ「エンジョイ読書」欄。北上次郎はその選者のひとりで、ほぼ月に一度まわってくる北上の回を私は楽しみにしているのだ。たとえば一番最近の回は8/17、北上が星を4つつけた作は久保寺健彦の『GF』

椰月美智子の本は、何か読んだことがあるはずで、名前もおぼえているけれど、読んだのが何だったか記憶がはっきりしない(ブログを検索してみると、北上が解説でふれているのと同じ、『十二歳』『未来の息子』を私は6年前に読んでいるらしい)。でも、この『しずかな日々』を読んで、椰月美智子をくっきりおぼえた。

小学5年の夏休み、えだいちは母方のおじいさん宅で住むことになる。ほかの仕事をすることにしたと村田製麺所を辞めた母さんが「引っ越すことになるわ」と言うのに、えだいちは「絶対にいやだ」と抵抗する。これまでだったら、母さんについていっただろう。ぼくは誰からも気づかれない幽霊みたいな子どもだった。でも、5年になって、同じクラスになった押野と友だちになった。押野たちと三丁目の空き地で野球をするのもたのしいし、学校もたのしいし、飼育委員になったからグッピーにえさをやらないといけないし…「絶対に転校したくない」。
学区の関係でそういうわけにはいかないという母さんの言葉に、えだいちは「もういいんだ」と思う。学校でも口をきかなくなった。押野とのたのしい思い出を、もうこれ以上ひとつも増やしたくなかった。この短かったたのしいときを、早く忘れてしまいたかった。

「どうしても転校するのがいやだったら、おじいさんの家から学校に通えるわ」
そうして、えだいちは、夏休みに入った日から、母さんとはわかれて、おじいさん宅に住むようになった。

その小学5年の夏が、この物語には書かれている。その夏の日々を読んでいて、なつかしいような、思い出すとさびしいような、何が起こるかとわくわくするような、いろんな気持ちが混ざった。

▼人生は劇的ではないとぼくは思う。父親が生きていたら、まったくちがう人生だっただろうと思ったことは何度もあるけれど、そんなことを言ったらきりがない。ぼくらは日々なにかしらの選択をして生きている。五年生のあのとき、母さんについて一緒に引っ越していたら、ぼくの人生はまるでちがったものになっていただろう。でも結局、今の自分というのは、これまでの過去を全部ひっくるめた結果なのだ。(p.256)

今朝、夏休みがすんだ小学生たちが学校へ向かう姿を久しぶりに見た。大人になったら1ヶ月はあっという間だけれど、小学生の頃の夏休みは、長かったなーと思う。

(8/21了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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