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原発はなぜ危険か―元設計技師の証言(田中三彦)

原発はなぜ危険か―元設計技師の証言原発はなぜ危険か―元設計技師の証言
(1990/01/22)
田中三彦

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かつて原発の設計に携わった技師が、在職中にあった「原子炉圧力容器の"ゆがみ矯正事件"」を例に、原発の「安全性」がどのような根拠の上になりたっているかを述べ、その危なさを訴えた本。

「あとがき」で、原発の設計に携わっていたときの自分の心の状態を「じつに恥ずかしいことだが」と著者の田中さんは書いている。
▼…少なくとも私は…原発の建設というものが地域社会にどのようなインパクトを与えるのか、一度も考えたことはなかった。原発が地域の様相を、あるいは個人の暮らしを一変させることに思いを馳せたことは一度もなかった。原発に心の底から不安を抱く人たちがどれだけいるかということも考えたことはなかった。今日ほどではないにしろ、1970年代前半当時にも「反原発」はあり、われわれがつくりつつあった原発が住民の批判にさらされているという話は耳にすることはあった。しかしそのようなとき私が考えていたことを正直に記すなら、それはせいぜい、原発を支えている"高度な技術"を一般の人びとが理解できないからだろう、という程度のものだった。(p.191)

そんな田中さんの原発に対する態度を決定的に変えたのは、チェルノブイリ原発事故の記録映画(※)。瓦礫の山のように崩壊した原発の姿に、「原発の設計に携わっていたとき、こんな情景は想像すらしなかった。大きなショックだった。もはや、原発は合理的に弁護する対象ではないと思った」と田中さんは書いている。
田中さんの在職中にあった「原子炉圧力容器の"ゆがみ矯正事件"」は、福島第一原発四号機用の原子炉圧力容器が完成間近にどうしたわけか楕円形にゆがんでしまったことがわかり、簡単にいえば、ゆがんだ部分にジャッキをかませて加熱し、それでゆがみを矯正したというものだった(正確には「クリープ・リラクゼーション」現象という)。

そんな直し方をして、ほんまに強度は大丈夫なのか?

田中さんが原発の危なさを書いていく文章は、「応力」とか「脆性」とか「安全係数」とか、工学方面ないし理論的な用語のいろいろが出てきて(そのせいか、新書というスタイルには珍しく各章に注がある)、そこのところはちょっと小難しい印象を与えるけれど、読んでいくとおおよそのことは分かる。原発がどれほどの安全性をキープしてるか、というよりは、原発がどれほど危ないかということに納得がいく。

工学を修め、科学を生業とし、専門家とよばれる人たちが、こと原発に関しては批判精神を失うものとみえる。田中さんは、その機械的な反応、無人格性、無批判性こそが、この先原子力発電が継続されていく際の最大の危険要素かもしれない、と述べている。

▼…一般に科学的あるいは技術的な理論やデータを前にして、専門家全員の見解が一致するなどということはありえないことである。しかしこれまで日本の原子力発電は、意見の対立や批判精神がまったく存在しないモノトーンの集団によって推進されてきたとしかいいようがない。いかなる問題を前にしても、国や有識者、電力会社、原発製造メーカーの見解はつねに一つの方向にまとまり、けっして"内輪もめ"といった醜態をさらすことがない。唯一彼らが批判精神をむき出しにするのは、反原発に対してである。(p.119)

この本が出たのは1990年、チェルノブイリ事故のおよそ4年後で、その時点で田中さんが様々な例(ひび割れ、亀裂、破断、故障…の数々)を引いて書いている"運転中の原発"の危なさと、それぞれの危険に対する原発推進派や政府の対応を読んでいると、20年以上経っても、全然変わってへんのやなと、そこがおそろしい。

たとえば、一時冷却材ポンプの取り付けボルトに次々とひびが入った事態に、国は記者会見をひらき、「ただちに安全上問題が生じるわけではないが」というマクラを述べ、「念のため予防安全の観点から」云々とボルトの点検および取り替えを実施すると言ってみたり(これは1988年のこと)。「ただちに」でないならば、いつ問題は生じるのか? 

※シェフチェンコ監督の「チェルノブイリ・クライシス」と、写真集『チェルノブイリ・クライシス』
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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