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野生哲学─アメリカ・インディアンに学ぶ(管啓次郎、小池桂一)

野生哲学─アメリカ・インディアンに学ぶ野生哲学─アメリカ・インディアンに学ぶ
(2011/05/18)
管啓次郎、小池桂一

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『シートン動物記』で知られるシートンの話が序章に書かれている。まだ原初の野生を保っていたカナダ東部の森林地帯と西部の大草原で育ったシートンは、1902年にウッドクラフト・インディアン協会という少年組織をつくる。

シートンは、自分をとりまく圧倒的な「大地」の存在に気づき、そこにむかしから住んできた人々の生き方をみごとだと思い、自分もあんなふうになろうと決意する。シートンは、自分自身をひとりのインディアンに作りかえようとしたのだという。

▼こうした、まるで無根拠な、「非本質的」な転身によってのみ、われわれの生き方のほんとうに深い変革はもたらされるのではないか。個人としても、社会としても。「模倣」の重要性を真剣に考えないかぎり、ぼくらは「文化」という現象の本質にも、「思想」という力の核心にも、けっして到達することができない。(p.24)

この本の著者のひとり、管啓次郎は、シートンのように「このエッセー自体が、ぼくにとっての、「インディアンになる試み」そのもの」だという。大地の神聖さ、「土地」とは何か、動物、植物、太陽とは何かが書かれていく。
「土地を知ることだけが、生存をささえる。」
土地の人々は、それぞれの住む区域で、数百年ときには数千年にわたって経験的に確立されてきた「土地との関係」を、その秘密とともに、実践的な知識として継承してきた。けれど、ヨーロッパ型の国家は「土地との関係」をまだ一度として真剣に考えるにいたっていない。

▼ぼくらは…すべての物質が商品化された都市の末端に自分を接続することで、かろうじて生きている。…都市/貨幣/商品の巨大な複合に組みこまれ、その中で自分の資産に見合ったニッチ(生態的地位)を見出し、そこで駆け足で生涯をすり抜けてゆくのが、現在のわれわれ(ほぼ)全員の運命だ。(pp.42-43)

生きるとはどういうことか。何のためか。
遊牧民族カイオワの世界では、語ることと祈ることはひとつ。かれらは祈るために生きる。日々の行動を律する規則、それ自体が祈り。

植物を育てることが祈り。
動物を狩ることが祈り。
太陽や月を見上げることが祈り。
水を汲むことが祈り。
風を感じることが祈り。


人間は土地の一部をなし、土地の一部であるヒトが関係性の全体を尊重し、その気持ちを表すのが祈り。

「人間であること」を、管啓次郎はこう書いている─「関係性が織りなす存在としての人間、誕生にはじまり死で終わるつかのまのあいだヒトであるにすぎない自分という存在、だが個の生涯や身体を超えて時空のいろいろな方向に延長されてゆく可能性のある私」(pp.85-86)。そして、人間化されていない大地の美しさにふれるとき、人はあらためて「人間であること」を考えるのではないかと。

管啓次郎の名を知ったのは、『1995年1月・神戸』に引用されていた文章がもと。その引用されていた文章が入っているというので『トロピカル・ゴシップ』を読み、ふと気づいたら、今年の上半期、日経夕刊の「プロムナード」欄でこの人が週に一度コラムを書いていた。この本は、図書館の新着コーナーに面陳されてて手にとった。

この本のなかで、平原インディアンのあいだでは、互いに言葉が通じない部族同士がコミュニケーションを図るための、手話体系ができあがっていた、という話が出てきた。この手話では、「ポーニー族」と本物の「狼」が、おなじ動作によって表される。(その動作の説明を読むと、日本手話の「大阪」にちょっと似てる気がする) 「言葉が通じない同士」の使う「手話体系」。この見方は、手話をやはり言語として見てないんかなと思った。

(8/15了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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