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ファンタジーが生まれるとき―『魔女の宅急便』とわたし(角野栄子)

ファンタジーが生まれるとき―『魔女の宅急便』とわたしファンタジーが生まれるとき
―『魔女の宅急便』とわたし

(2004/12/21)
角野栄子

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こないだの『ラスト ラン』がおもしろかったので、前々から本は知っていたが読んでなかったのを借りてきてみる。この人は20代でブラジルに渡り、ブラジル暮らしの経験があった。「その頃、日本政府が奨励していたブラジルに移住しようと思ったのも…」(p.71)とある。

1935年生まれの角野さん(父と同い年の人だ)、その20代というと1950年代の後半から1960年代の前半。そんな頃に、日本政府がブラジル移住を奨励していたというのも初めて知った(移民てのは、もっと昔の話だとばかり思っていた)。

角野さんは「戦争も終わり、外国の文化に自由に接するようになって、私たちのような若者は、外国に強烈な関心を持つようになった」(p.71)という。父のことを考えると、そういう強烈な関心を父も持っていたんやろうなあと思う。角野さんが結婚した相手は、建設中のブラジルの新首都ブラジリアを見てみたいという気持ちをもっていて、それを聞いた角野さんも「えーっ、新しく首都をつくっちゃうの?そんなことできる国があるの?いいね、いいね、いこう。もっと珍しいものも見られるし」とすぐその気になる。

そして、ブラジル行きは、太平洋・インド洋・大西洋をわたる船旅と、二年間のブラジル暮らし、そのあとヨーロッパ、カナダ、アメリカとほぼ世界を一周するような旅になった。
▼ブラジルには知り合いもなく、住む家もなく、仕事もなく、もちろんお金もない。こんな話をすると、「そんな無謀なことをよくやったわね、強いのね」といわれる。とんでもない、それはほんとうにとんでもないのだ。行動力があることが、かならずしも現実的に考えるしっかりとした心をもっていることとは限らない。でも考えすぎると、できることもできなくなってしまうことだってある。不安だらけだったけど、不安はとってもあこがれに近い。そしてあこがれからは思わぬ力がうまれるし、ときには大きな贈り物も授けてくれる。(pp.89-90)

ブラジルへ向かう二ヶ月の船旅の記憶のなかで、水平線の話がよかった。

▼あの一本の線からいつかは何かが現れる。それはなんだろう…なんだろう…。心が浮きあがるような気持ちだ。なにも見えないのに、見るものがいっぱいある町中を歩くより退屈しない。それが何日も何日もつづいても、不思議なことにあきたりしないのだ。その一本の線から見えない扉が、毎日あきつづけ、想像するたのしみを送ってくれるのだった。まさに贈り物をあけるときのようにわくわくする。それはおおきくって、まったく自由な心の遊び場だった。たった一本の線だからこそ持っている魔法だったと思う。(p.91)

この浮きあがるような、わくわくする心が、その後に角野さんが物語を書くようになり、書き続けてきた力なのだろうと思う。ブラジルの少年を書いた角野さんの初めての本『ルイジンニョ少年』を、読んでみたくなった。

(8/10了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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