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精神病とモザイク(想田和弘)

精神病とモザイク精神病とモザイク
(2009/06/17)
想田和弘

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じわじわ暑くなってきたせいか、休養不足か、ここ数日お腹を下したり、お腹が重かったり、どよ~んと調子がわるい。梅干しでお粥を食べて、ごろごろして、合間に仕事。

Weフォーラム前にあとちょっとのとこまで読んでた本を読み終える。この著者の想田さんは最近『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』を出したせいか、こないだ書評欄に顔写真入りで出ていた。(想田は「そうだ」と読むそうで、ソーダ村のソーダさんて、もしかしたらこの字かな~と思った。)

想田さんは「精神」という映画を撮っていて、この本は主にその映画の話だが、映画「選挙」を撮った人でもあった。自分の撮る映画のことを「観察映画」と想田さんは言う。
撮影前にリサーチ・打ち合わせをしない。構成表や台本を書かない。少人数で撮る。長回しをする。ナレーションやテロップによる説明、音楽を使わない。─それが、「観察映画」の方法論とスタイル。
▼…僕はこの名称に、自らの先入観や勝手な想像に現実を当てはめていくのではなく、目の前の世界をしっかりと冷静に観察して、その結果を映画にするのだという決意を込めている。また、観客も、スクリーンで起きることを受動的に観るのではなく、能動的に自分の目で観察して欲しいし、作り手としての僕は、観る人が自由に観察できる余白を映画に残したいという意味もあった。(pp.46-48)

想田さんは、外来専門の精神科診療所「こらーる岡山」を撮りはじめる。患者たちと一緒に診療所を立ち上げた山本昌知先生は、以前勤めていた精神科病院で、1960年代に病棟から鍵を外していく運動をした人。「こらーる岡山」は、みな地域社会で暮らしながら治療を続けている。

実際の撮影許可は患者さん一人ひとりから取ることを条件として、想田さんは「カメラを持って診療所に来てよい」という許可を、こらーる岡山の活動者会議を通じてもらっていた。患者さんに当たっていくと、10人のうち、8、9人は「ノー」で、精神の病に対する偏見やタブーが強くあることを想田さんは実感していく。そこには精神科の患者や病院に対する「お化け屋敷」観があるのだろう。

▼しかし、実際に患者さんに接してみると、世間に流布しているあの「狂人」のイメージはなんだったのかと、拍子ぬけするくらいみんな「普通」である。事実、一人ひとりと個人的に知りあうまで、誰がスタッフで誰が患者なのか、僕には見分けがつかないことが多かった。スタッフだと思って撮っていたら、実は患者さんだったということも何度かあった。(p.62)

「病んで」いるのは誰か? 撮影の際の話から、映画に出ることを決めた登場人物との対話、山本医師との対話に、映画「精神」を観た人たちの反応もまじえて、この本は書かれている。

映画の登場人物・吉澤さんは、山本先生の言葉を借りて「人薬(ひとぐすり)が大切なんだ」と言う。
▼向精神薬を飲ますよりは、側になんか言える人が一人や二人居るというのがね、薬の何倍か効果があるわけですよ。…僕らの後ろには、32万人が病院で暮らしてるわけです。在院日数も長い。閉鎖病棟やそういうなかで暮らしている状況で、モノを言えるのは、今外に出ている俺たちなんだ、というね。(p.139)

山本医師はこう語っている。
▼何十年も患者さんと接してきて、信頼される、信頼するということがどれだけ大事かということを、患者さんが訴えてくるのですよ。自分を信じられないとか、他者に信じてもらえないということで、しんどい思いをしとる。信じる力をつけるのが、非常に大事だと。
 総合的に見れば、信じてる人を裏切るのはものすごい力がいる。不信な、信じられてない人を裏切るのは簡単なんだけどな。だから、人間は信じあうというのが大事なんではないかと思うわけですわ。それがなかったら、生きるのがしんどいですよ。(pp.178-179)

私は想田さんの映画を見てないけど、テロップもナレーションも入っていないという。例えば「○○さんは統合失調症で、もう何年間も苦しんでいます」とナレーションが入ったり、「○○さん、統合失調症歴何年」とテロップが付くことで、それが見る人の視野を限ってしまうというのは想像がつく。想田さん自身、「この人は患者さんです」と紹介されてカメラを回していたら、たぶん違うことを撮ってしまっていると思うと語っている。

今は私も、想田さんが言うように「ドキュメンタリーは主観の産物」だと思っているが、以前は「ドキュメンタリー」というのは「淡々と事実をうつしたもの」くらいに思っていた。それは、映画を撮ってる人と知り合ったり、映像と文字と媒体は違っても「編集」という仕事を自分がするようになったのも大きいと思う。たとえばある講演会を聞いても、私がまとめたものと、別の人がまとめたものとでは講演録は違ったものになるだろうなと。

「精神」「選挙」そして、最新作「Peace」、どれも見てみたい。

(8/8了)
 
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この本知ってる
って当り前だ(笑)
監督にサインしていただいた本を持っているんだから

健康に気をつけて、ご活躍くださいませ(^-^)
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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