レーナ(ジャクリーン・ウッドソン)
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『わたしは、わたし』を返したときに、同じ著者の『レーナ』を借りてくる。本の表紙は前から見ていたが、読むのは初めて。
いまは「黒人の町」といっていいオハイオ州のチャンシーに住むマリーのクラスに、白人の転校生がやってくる。名前はレーナ。マリーの父に言わせれば「白人のクズ」(父さんがこう言ったとき、マリーは「人間よ」と言う)。"黒人は差別されてきた"と頭にぐりぐり入ってて、だから"登場人物のビンボーなほうは黒人"と思ってる人が読んだら、マリーとレーナのどっちが黒人でどっちが白人なのかわからなくなるかもしれない。
マリーが、「皮膚の色が薄いだけで、黒人なのかな」と思うくらい、レーナは"黒人らしい"。小綺麗にしていて、ベストドレッサー賞をとったこともあるマリーのほうが、"まるで白人みたい"なのだ。
2人は親しくなっていく。マリーの"親友"だったシェリーは「あの子とつきあうつもりなの?」とマリーに迫ったりするし、マリーの父はレーナのことをやはり「白いクズ」だと言い、あまりつきあうなといわんばかりの態度。でも、2人はいろんなことを話すようになる。
レーナの母さんは死んでいて、マリーの母さんは出ていって、2人とも母がいなかった。2人の共通点があるとしたら、そのことくらい。
レーナはマリーにきく。「あんた、お父さんが好き? だれよりも好き?」 うなずくマリーに、レーナは「あたしも、父さんが好きになれるといいんだけど…」という。父さんがあたしを愛しすぎているから…「話しても、誰も信じないんだ」「そんなことありえないって、みんな言うんだ」。
マリーが、レーナのことを知ったのは、それからしばらくあとのこと。「あんたは、家の中なら服を脱いでもだいじょうぶだよね」「あんたの家のお風呂場は鍵がかかるよね。それに、毎朝鏡の前に立って、自分の姿を映してみたって、なんにも…なんにも起こらないんだよね」
「うちの父さんは、あたしに変なことするんだよ」 それを聞いて「まさか、嘘なんでしょ…」と言うマリー。 「ほんとだよ、マリー。母さんが死んでからこっち、ときどき…」 耳をふさいで「自分の娘になんて、まさか」と言うマリー。
「嘘じゃないよ、マリー」
「嘘なんか、ぜったいついてないよ」
2人は、お互いのことを話す。泣いたり、笑ったり、怒ったりしながら、お互いのことを知っていく。マリーは、レーナと友だちになるまで、チャンシーではなんでも黒人と白人に分かれているという事実に気づいていなかった自分に気づく。2人は、「ふたりの人がいつまでも友だちでいる方法」として、互いの秘密を守る約束をする。マリーは、出ていった母さんに、出せない手紙を書いて、戸棚の奥につっこんでいることをレーナに話す。
レーナはそれから、妹にまで手を出すようになった父から離れるため、妹をつれて家出する。「手紙書くからね、マリー」と最後に言って、レーナの電話は切れた。
なんど読んでも新しいことが見えてきそうな、いろんなテーマの重なりを感じる作品だった。つい一気読みしてしまったが、また読もうと思う。
(7/25了)
マリーが、レーナのことを知ったのは、それからしばらくあとのこと。「あんたは、家の中なら服を脱いでもだいじょうぶだよね」「あんたの家のお風呂場は鍵がかかるよね。それに、毎朝鏡の前に立って、自分の姿を映してみたって、なんにも…なんにも起こらないんだよね」
「うちの父さんは、あたしに変なことするんだよ」 それを聞いて「まさか、嘘なんでしょ…」と言うマリー。 「ほんとだよ、マリー。母さんが死んでからこっち、ときどき…」 耳をふさいで「自分の娘になんて、まさか」と言うマリー。
「嘘じゃないよ、マリー」
「嘘なんか、ぜったいついてないよ」
2人は、お互いのことを話す。泣いたり、笑ったり、怒ったりしながら、お互いのことを知っていく。マリーは、レーナと友だちになるまで、チャンシーではなんでも黒人と白人に分かれているという事実に気づいていなかった自分に気づく。2人は、「ふたりの人がいつまでも友だちでいる方法」として、互いの秘密を守る約束をする。マリーは、出ていった母さんに、出せない手紙を書いて、戸棚の奥につっこんでいることをレーナに話す。
レーナはそれから、妹にまで手を出すようになった父から離れるため、妹をつれて家出する。「手紙書くからね、マリー」と最後に言って、レーナの電話は切れた。
なんど読んでも新しいことが見えてきそうな、いろんなテーマの重なりを感じる作品だった。つい一気読みしてしまったが、また読もうと思う。
(7/25了)
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