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権利擁護で暮らしを支える―地域をつないだネットワーク(PASネット編)

権利擁護で暮らしを支える―地域をつないだネットワーク権利擁護で暮らしを支える
―地域をつないだネットワーク

(2009/02)
PASネット編

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成年後見制度のことは、『We』172号で、米田さんと菊地さんの話「地域で安心して暮らすために―障害者にとっての成年後見制度」をまとめていた頃に、図書館でレファレンスも頼んでいろいろ読んでみた。「成年後見」というと図書館の本は(たぶん出版されてる点数も)年寄り方面ばっかりで、わざわざ"障害者にとっての"と言うて本を探してもらったのだった。

この本は、そのレファレンスのときには出てこなかったけど、西宮の青葉園の清水さんなどが書いてるというので見つけだして借りてきた。

「成年後見」とか「権利擁護」というと、なんだか話がすぐお金方面へいってしまって「財産管理」てな言葉が本にも出てくるのだが、この本はちょっと違っていた。「ひとが自分らしく生きるという素朴で単純なことを支援する、それこそが権利擁護である」といい、権利擁護に対する一般的な見方への違和感があって、それをちゃんと説明しないと「権利擁護や支援がご本人のものにならない、地域での暮らしを支えるものにならない」と感じたという。(その違和感の話はとくに終章に書いてある)
清水さんは1章で、青葉園のなかでも、とりわけ障害が重く、日常のほとんどすべてに支援が必要なちえさんの自立物語を書いている。ちえさんの母が私の体はもうあかんのよと入院するとき、「この子はここでしか生きていかれへんねん!ここに残していくしかないねん」と青葉園に残していったちえさんの話。通所施設の青葉園に、泊まり、そこで暮らしはじめ、阪神大震災を経験して避難所から仮設ホームへ、そして一人暮らしをはじめたちえさん。

清水さんは、権利擁護に成年後見制度を使って特段変わったことはないけど、本人のちえさんも、自分たち支援の輪も堂々としたんですよと書いている。「そやから大事なんは一人ひとりの存在の値打ちや。一人ひとり私はここにおると…、ここにおるんや、そして堂々と生きていくんや…堂々と」(p.38)。

▼「私はここに居ます」一人ひとりが価値的存在として、そこにいる。それにもかかわらず私たちは保護やあるいは更正訓練、そしてまたサービスの対象、要援護、さまざまな口実を使い、結局ここにいないものとしているのではないでしょうか。人は「私はここに居ます」と生きていこうとしている。そのことをみんなが認め合うことが、一人ひとりのその存在の価値を腹の底からお互いに認め合っていくのが、権利擁護支援ではないでしょうか。(p.38)

清水さんは、さいごに「ちえさん、二十年も一緒にいさせてもらってありがとう。あなたのおかげで私もここにいられました」と書く。おたがいさまで、おかげさんで、それがこの本がいう支援の相互性かなと思った。

▼…実は支援というのはどちらかの一方的な関係になるものではなく、ご本人は支援を受けながら支援者や周りの人に影響を与え、支援者も支援しながらご本人に支えられるものであるように思います。それは支援というかかわりが、ご本人の「思い」と社会との折り合いをつけていくことであり、支援者や社会自身も「折り合い」をつけていくために常に変わっていくからではないでしょうか。(p.ii)

この本に入ってる実践の話は、どれも「こう生きたい」にどう添うか、試行錯誤も含めて書いてあって、そうや、制度はこうやって生きていくためにあるんやと思うところがいっぱいあった。たとえば2章に書いてある保佐人と被保佐人との関係づくり。

手元にお金があると、ついつい欲しいものを買ってしまい、生活費がなくなる満さん。そのたびに「お金ないねん」と電話がかかってきて、「ちゃんと計画的に買い物せなあかんよね」と話し、「今回だけやで」とお金を届ける。それを何回も何回も繰り返すうちに、手持ちのお金が残るようになってくる。

▼…失敗を避けることが大切なのではなく、失敗を確認していき満さんにわかってもらえるようにするのが、本当の支援なのだと思います。その失敗を安心して繰り返すことができるのも、「支援の輪」があるからだと思っています。(p.49)

権利擁護は財産管理なのか?見守りという名の放置になってないか?あるいは権利擁護というて生活管理になってないか?擁護してるものは何なんか?暮らしを支えるって、何なんか? この実践、ときどき立ち戻って、読みなおしたいと思う。

(7/12了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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