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世界屠畜紀行 THE WORLD'S SLAUGHTERHOUSE TOUR(内澤旬子)

世界屠畜紀行 THE WORLD'S SLAUGHTERHOUSE TOUR世界屠畜紀行
THE WORLD'S SLAUGHTERHOUSE TOUR

(2011/05/25)
内澤旬子

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この「世界屠畜紀行」は、雑誌『部落解放』に連載されてたときにだいぶ読んだ。単行本になったときにも読んだおぼえがある。文庫になったというのを見つけて、またまた読む。「屠畜という仕事のおもしろさをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった」(p.461)と、内澤さんはあとがきで書いている。文庫本になって、そのイラストはだいぶ小さくなってしまっているが、連載のときはイラストはもっとばばーんと大きかった。

屠畜という仕事を、こんなんして、こんなんして、こんなんで、めっちゃおもしろいねんで!この仕事、と内澤イラストはむんむんと伝える。「現場に立てば…作業に見入ってしまうくら好きなのだ」と、スケッチブックを取り出していそいそと屠畜の過程を記録してきたものが、この本にはつぶさにまとめられている。

同時に、取材を続けていくなかで、動物をつぶす現場に見入り、血がしたたり、内蔵がひきだされ、肉になっていく過程を見ていて飽きない、おもしろい、すごい、と思う自分の感覚は「少数派」なのだと内澤さんは気づいていく。
「肉になるまでの過程」はなかったことにしてほしいというかのように、動物をつぶす場面はテレビにも出てこないし、本もほとんどない。そこには屠畜の仕事にかかわる人が差別を受けてきたということが関係しているのだろうが、そうは言っても、日本でおおっぴらに肉を食うようになってもう150年も経っていて、これだけ肉食がフツウのことになってるのに…と、思うわけである。

動物をつぶすのは忌まわしいだの穢らわしいだのという感情は、日本以外の場所でもあるものなのか?もっとあっけらかんとやってるところもあるんじゃないのか?そんな疑問を胸に、内澤さんはさまざまな屠畜現場を訪ね歩いた。大きな工場も、個人でやってる小さなところもあり、訪ねた時期もさまざまで、「ここでは、こう」と一般化はできないかもしれない。それでも内澤さんは、「文化や経済状態、地理条件を異にする各地域で、今、肉はどのように屠畜されているのか、そして当事者や周囲の人間が屠畜という行為をどう思っているのかを、できる限り聞きまくってきた」(p.13)のである。

東京の芝浦屠場は行ったことないけど、20年くらい前(学生だった頃)、大阪松原の旧屠場へフィールドワークで2度ほど見学に行ったことがある。打額から始まり、皮をむき、内蔵を出し、背を割って枝肉になるまでの行程と、「なかみ」を洗ってるところなど、むんむんとした屠場のなかを、すべって転ばんように気をつけて歩きながら、見せてもらった。今は、芝浦屠場みたいに、もっと機械化されてるんかなと思いつつ(新しくなった屠場へ私は行ったことがないので)、内澤さんのイラストをじっくり見ながら、本文を読む。屠場のなかの蒸し暑いような熱気と、血や脂のにおいと、フィールドワークのあとのごっつい聞き取りの話とが、ごっちゃになって思い出される。

屠畜という仕事、屠場への悪意と偏見に満ちた視線は、現在も存在すると内澤さんは書く。芝浦屠場にも、胸が悪くなるような文章が書き連ねられた匿名の手紙が何通も送りつけられるという。そうした悪意を向けてくる人たちに、内澤さんはこう問いたいという。
▼言い古されたことだけど、問いたい。この人たちは肉を食べてるんだよなあ。屠畜を「穢らわしい」と思っていて、どうして肉を食べることができるんだろう。

 今、芝浦屠場のある品川駅港南口は、再開発でぴかぴかの高層ビルが建ち並ぶ地域に変身した。…(中略)…
 屠畜は、ふだん忘れられがちだけど、人間の基本的な営みのひとつだ。人間が肉体の存在すら忘れそうな、究極に都市化した空間と隣り合わせに屠畜場があることで、大事な感覚を思い出させてくれると思う。(pp.235-236)

屠場を避けるココロは、火葬場を迷惑施設だとかいうて避けるココロと似てるのかもと思った。

本としては、『ホルモン奉行』と通じるものがある。そういえば、あの本も文庫になったはず。また読もうかな~と思う。

(7/8了)

屠場※ちょうど、リバティおおさか(大阪人権博物館)では本橋成一さんの写真展「屠場」を開催中
~8月28日(日)まで休館日カレンダー
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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