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知られざる原発被曝労働―ある青年の死を追って(藤田祐幸)

知られざる原発被曝労働―ある青年の死を追って知られざる原発被曝労働
―ある青年の死を追って

(1996/01/22)
藤田祐幸

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次号『We』では、藤田祐幸さんのインタビューを掲載する。藤田さんの本はいくつか図書館にあり、この古いブックレットは現在手に入らないこともあって、予約して待っていた。

順番がまわってきて借りてきて、昨日読んだ。ほんまに原発って、運転中も、定期点検で止まってるときも、こんなに被曝者をうみだすんやとぞっとした。今も、福島や他の原発で、こんな風に被曝をしながら作業してはる人がいてるんやと思うと、つらいものがある。亡くなった嶋橋伸之さんは、とりわけ定期点検中の作業で被曝をかさね、8年半のあいだに累積で50ミリシーベルトの被曝となったころに白血病を発し、29歳で亡くなっている。

嶋橋さんのご両親は、会社側から、「今後なんの異議もいいません」という念書をとられ、労災並みの弔慰金の支払いを受けた。だが、そこに、労災認定を求めることは禁じていないのに着目して、申請を決意した。慎重に準備をおこなうあいだに、申請準備を察知した会社側はご両親に圧力をかけてきたという。

▼そんなことをすれば反原発派に利用されるだけだ、というのが会社側の言い分だった。それに対して、母親の美智子さんは、私たちが反原発派を利用するのです、と答えたという。(pp.12-13)

このブックレットが出た当時で、日本で原発に起因すると労災認定を受けたのはわずか3人。嶋橋さんはその1人だ。
50ミリシーベルトは、「放射線業務従事者」が、年間ここまでの被曝は許されるという基準値(5年間で100ミリシーベルト以下、女性や妊婦はもっと低い基準値)。一般の人の年間被曝限度は1ミリシーベルトとされているから、50倍。(★この基準は、電離放射線障害防止規則の2章で定められていて、7条では事故の際の緊急作業では100ミリシーベルトまでの被曝が許容されていた。このたびの原発事故で、福島第一原発での緊急作業に限り、この基準がさらに引き上げられ「250ミリシーベルト」となった※。)そして、文部科学省は、子どもの年間被曝を20ミリシーベルトまで許容した※※。嶋橋さんの年間被曝量は最大だったときで9.8ミリシーベルトだった。

「平成23年東北地方太平洋沖地震の特にやむを得ない緊急の場合に係る実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」

※※「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」(文部科学省)

この一般人の50倍(現在の福島原発の作業に関しては250倍)という被曝を放射線業務にかかわる労働者は法的に認められているため、「法で定められた限度よりはるかに低い被曝であって、安全性に全く問題はなく、会社側に何の責任もない」という会社側の記者会見での発言が出てくる。

この理屈は、「暫定規制値」という食品の放射能汚染の基準値にもみられる。3月17日発表の「放射能汚染された食品の取り扱いについて(厚生労働省)」では、食品キロあたり、放射性セシウムで500ベクレル(水や牛乳は200ベクレル)、放射性ヨウ素で2000ベクレル(水や牛乳は300ベクレル)などとなっている。1986年のチェルノブイリ原発事故をうけて、輸入食品では暫定限度が放射性セシウムで食品キロあたり370ベクレルとされた。放射能汚染に関しては、現在のところ輸入食品のほうがまだマシだということになるのか。

中国新聞の2000年の企画連載「被曝と人間」の第3部「ある原発作業員の死」に嶋橋さんについてのシリーズ記事がある。
特集 原子力施設作業員の被曝(3/22)
[1] 白血病/闘病2年 力尽きる(3/22)
[2] 原子炉の下で/身かがめ点検 調整(3/23)
[3] 手帳は語る/線量 定検時に上昇(3/24)
[4] 2つの基準/法定線量以下で労災(3/25)
[5] 高いハードル/がん、救済基準なし(3/27)

嶋橋さんの母・美智子さんは、藤田さんと出会い、原発について知り、息子の労働を知るにしたがって、「原発に息子を奪われた母親として、ただ弔慰金を受け取ってひっそりと暮らすだけでは、息子の死を無駄にすることになる、原発労働の実態を明らかにし、隠された多くの事例を明らかにし、同じ悲劇を繰り返さないようにすることこそ、息子が望んでいることではないか」と考えるようになったという。そして、労災申請と認定。その後、美智子さんは、『息子はなぜ白血病で死んだのか』を書かれたという。これも読んでみようと思う。
 
Comment
 
 
ツイートさせていただきました。

sachiも先月
イギリスのドキュメントの
「被爆労働」
とゆうビデオをネットで見ました。

「被爆労働」って
言葉だけでもショッキングやのに。

現在の現実はもっと
ショッキングですね。

背筋が凍る。
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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