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違和感(III)

 この本の第五章「不妊に向き合う人々の叫び」のページには、このS氏のような’患者’の声はなかった。たしかに、生まれつき子宮がないというような(ロキタンスキー症候群などの)女性にとって、’自分の(遺伝的なつながりのある)’子供をもとうとするなら、’治療’が必要なのだろう。だが、根津の、こういう人たちの’子供を持つ権利’とか、’代理出産をしなければ子供を手に入れることのできない患者’といった表現には、いまのところ私には違和感がのこる。

 医の技術の進みようはスゴイものだというのは、同居人が手術をしたときによくわかった。「10年前なら、足を落としている手術ですよ」と言われた。いまでは、人工関節に置換することで、足を温存して手術ができる。それになぞらえていえば、20年前、30年前にはできなかったことだが、いまでは、サロゲートマザーによる代理出産によって、子宮のない女性も’自分の子供’をもつことができる、ということだろう。だが、なにかが違うように思う。それを叶えることは、’人権’というものなのだろうか?

 同居人は手術後は左右の足の長さが少々違ってしまい、杖をつきながら、ちょっとひょこたんひょこたんして歩く。もっとなめらかに歩けないのかと同居人の親御さんが言う気持ちは分からなくはないけれど、世の中にはできないこともある、というような感じが私にはある。

 ’不足’を満たすことが、根津によれば「切実な希望にこたえる」ということなのだろう。しかし、’不足’と向き合う姿勢は、’満たす’ことばかりではなくて、その’不足’と折り合い、受け入れていくという方向もあると思う。とにかく違和感ののこる本だった。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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