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チェルノブイリの少年たち(広瀬隆)

チェルノブイリの少年たちチェルノブイリの少年たち
(1990/03)
広瀬 隆

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先週、『We』171号で話を聞いた古橋りえさん主宰のへのへのもへじ文庫へ行ったときに借りてきた一冊。裏表紙にある「ドキュメント・ノベル」というのが、ドキュメント?ノベル?と思ったけど、読み終えて、ドキュメント・ノベルというのが分かる。1986年の4月、チェルノブイリ原子力発電所の事故が起こったあとのことを、「誇り高い発電所の職員」で、「一点の曇りもない自信を抱いて、設計から運転作業のすみずみに至るまで監督してきた男」アンドレー・セーロフとその家族をモデルに描いた小説。視点の中心はアンドレーの息子・イワン。

読み始めると途中でやめられず、借りてきた日に読んでしまった。

深夜に爆発したチェルノブイリ発電所を前に、アンドレーの息子・イワンは恐怖心を爆発させる。「本当だ。嘘じゃない。爆発しちまったんだ。もう駄目だ。何もかも終りだ。みんな叫んでるぞ。俺は全部見てたんだ」(p.10) アンドレーの妻・ターニャは激しい怒気がこもった言葉を吐く。「これが、私たちの信じてきた世界一安全な発電所だったのね」(p.11)
朝になって(爆発からすでに何時間も経っている)、世界一の原子力基地をめざしてきたプリピアーチの町から、ようやく避難の車が数珠つなぎにうごきはじめる。イワンの妹・イネッサはその車のなかですでに身体に異変が出始めていた。

10キロほど先の農場で、アンドレーたち重要な13人とその部下たち百数十人は、爆発した原子炉の処理にあたる突撃残留組として選びだされた。ほどなく、その決死隊と家族とのあいだを上司が引き離してまわった。

アンドレーの妻・ターニャはこう叫ぶ。
「あの偉い連中は、こういう時には原子炉のなかに入らないんだわ。命令だけして、あとは自分の家族と夕食をとるのよ!」(p.34)
その叫び声で、アンドレーは決死の覚悟を抱く。「自分がまだ"偉い人間"でなくてよかった、若い男たちを死地に赴かせて自分だけが生きているぐらいなら、いっそ死を選んだほうがよい、これでよいのだ」(p.34)と。

決死隊が、折り返し原発にむかって戻っていった直後、避難してきた生後8ヶ月の子が息をひきとった。避難していくうちに、羊たちが死んでいるのと行き会い、イワンの両眼は見えなくなった。その先で、ターニャと、子どもたちは離され、さらにイワンとイネッサも別々の病院へ収容される。

イネッサは、一緒に入院していた子どもたちと同じように、赤い斑点の浮きあがった腕になり、口から血を吐いて死んだ。いちどは同室の少年たちと脱走をこころみたイワンも、苦しくなり、体が自分のものではないように力が入らなくなり、死んだ。

子どもたちがすでに死んだことも知らず、二人をなんとか探し出そうとする母のターニャ。自分の忘れられない記憶を思う。
▼夫はチェルノブイリで働いていた。ターニャ自身もそれを誇りにしていた。
 何とおそろしい職業だったのだろう。自分は、なぜそれに気づかなかったのだろう。このような結末は分っていたはずなのだ。あるいはイワンとイネッサに今日の不幸をもたらしたのが自分たちだったかも知れないと思うと、ターニャは気も狂わんばかりに、自分を責めたてた。
 しかし、ターニャが知っている以上に、この原子炉事故は重大な意味を持っていたのである。
 犠牲者はイワンとイネッサだけではなかった。大地に根を下ろした"死の灰"が静かに襲いかかったのは、全世界の子供たちであった。(pp.175-176)

チェルノブイリの事故が起きたとき、私は高校2年だった。死の灰がとか牛乳がとざわざわしていたことをぼんやりとおもいだす。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第67回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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