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地域生活のススメ(福岡寿、山田優)

地域生活のススメ『地域生活のススメ』A5判 152ページ 1,050 円(税込)

これもヨソの図書館から相貸で届いたSプランニングのブックレットの一冊。長野県立西駒郷という知的障害者総合援護施設に関わってきた福岡さん、山田さんの講演録。すごーくおもしろかった。

福岡さんの話は「地域支援は他人事ではない関係づくり・支援者の厚みをつくっていく=地域支援はバウムクーヘンづくり」、山田さんの話は「利用者本人の意向に添った地域生活、それを支えるネットワークを幾重にも張り巡らせていく地域生活のススメ」。
福岡さんは、中学校のセンセイを4年もたずに辞めて、施設の仕事に入った人。そこも4年たって辞めたくなってきた頃にやってきた仕事が「心身障害児地域療育拠点施設事業コーディネーター」。在宅で暮らしている障害のある方のご用伺いをしてこい、役に立てばなんでもいいと外へ出た福岡さんが初めて聞いた声。養護学校のお母さんたちが話してくれる建前と本音。

「本来ならうちの子はこうしたかったんだ」でも、「世間のしがらみの中でこうなんだ」「なんで私は障害のある子の母親というだけで99%暗めの顔なんだ」「私だっていろんな表情あるのよ」「だけど、どうしていつも『ごめんなさい。すみません』って、言わなきゃいけないの」等々。

いろいろな相談を聞きながら心底骨身にしみたのは、「サービスに裏打ちされない相談は無意味だ」「人のプライバシーを聞いたら聞いただけのことをして見せろ」ということでした(p.18)と福岡さんはいう。レスパイトケア系のサービスを立ち上げたかどうかが、聞くだけ・たらい回しの地域と、「何でもやってみる」地域のひとつの分かれ目だという。

こういう「何でもやってみる」サービスが始まると、利用者の側も変わってくる。サービスというのは、誰かにあてがわれたり、何かの都合にはめ込むんじゃなくて、「自分の生活スタイルに合わせて使うものだ、もちろんコスト感覚をもちながら」ということを本人や親たちがトレーニングされて、それぞれのケアプランができてくる。そうなると、サービス提供の事業者も変わってくる。こういう予算を工夫していくことが市町村のおもしろみだと行政も気づいていく。

▼進んでる地域と踏みとどまっている地域と、一番の違いは何かっていうと、「○○さんがちょっと困った」と言ったとき、電話1本で関係者がすぐ集まれるかどうかなんです。これがすべて。これさえできていたら地域支援の8割はクリアできていると言っても過言ではないと思います。(p.35)

福岡さんの実感だという。電話1本で集まれる仕組みがあれば、何とかやっていける、その仕組みが地域を変えていく。暮らしを支える「新しい資源」がうまれもする。

そんなときに、「どうしてあたしたちが行かなきゃいけないの。どこどこの学校の生徒さんの話でしょ」とか「派遣してもいいけど費用弁償や交通費はどうなるの」とか「派遣文書はいつ来るんだ?」などと言っている地域は話にならない。

▼ニーズっていうものは最初からあるもんじゃなくて、気づくもんです、ニーズというものは。気づくためにはどうするかっていうと、スウェーデンや横浜で気づかせてもダメなんです。同じような空気を吸い、同じようにご飯を食べ、同じように生きてる身近なところで気づかせなければ、本当のニーズにはならないんです。(p.54)

山田さんの「地域移行してから、そこから地域生活の支援が始まる」という話は、そうやなーとあらためて思った。もういろいろ支度はしたからさあ地域に出ましょうサヨウナラではなくて、いろいろ支度はしてみたけど、実際どうか、それぞれの人のニーズは当たり前だが人それぞれなので、そこに個々の暮らしの支えをどうつくっていくかがスタートするということ。

▼安心感が不可欠なのですが、「時代が変わったから」とか、「ようやく住めるようになったから」ということで、「さあ施設を出てください」と言うのは、これは失礼じゃないかと思います。「前は時代がそうでなかった(地域で生きることは難しかった)から入所施設に行ってもらったが、もう良くなった(地域で暮らしやすくなった)から出てもらうんだ」ということでは、「おいおい、今日までに過ぎ去った30年間の人生を返せよ」と、きっと本人が言うのではないかと思います。(p.67)

地域生活移行に伴う支えを家族に転嫁しない、自宅に戻るわけではないので、いろんな生活支援の仕掛けを用意する。そしてうまく行かなければいつでも戻ってきてください、人生チャレンジだ、いくら失敗してもいいじゃないか、と山田さんはいう。

▼私たちはいろんな体験をし、挑戦をし、そこで選択をしその結果を受け止めながら生きてきました。結果には、うまくいったこともいかないこともすべて自分で受け止めてきたはずです。なんで障害のある人はそういう経験をしたらいけないのでしょうか? そういう環境でなかった? なるほど。私たちはそれに気付いた。入所施設でどんなに安心と安全を用意したとしても、それは家族や支援者の安心感であって、本人は満足していないんですよ。それが「施設を出たい」という一言に表現されているじゃないですか。成功体験は、失敗体験があったがために成功して良かったと思うわけです。失敗しないようにということばかりしていると、人としての原則的な生きる力(自己実現)を押さえ込んでしまっているのではないかと思います。それが果たして本当の人生かと思ってしまいますよね。(pp.100-101)

山田さんは「気付いたら知らん振りしないでね。自分がやれるところから頑張って」と言うしかないと。チャレンジャーの根源は「利用者さんの思い」。その思いを受けとめ、寄り添いながら支援し、そして黒子というスタンスを忘れず引いていく支援に心がけ、第三者に託していく支援を続けていく、そこから実践がうまれてくる。


Sプランニングの本はちょっと買うのに手間がかかるので、相貸じゃなくて、近所の図書館に入っててほしいな~
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第66回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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