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さよならは半分だけ―青葉学園物語(吉本直志郎・作、村上豊・絵)

さよならは半分だけ―青葉学園物語さよならは半分だけ―青葉学園物語
(1978/12)
吉本直志郎・作
村上豊・絵

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青葉学園物語の『右むけ、左』に続く2冊目。夏は、とりわけゆかいで楽しい日々である。絶好の天気は続くし、学校は休み!青葉学園の子どもらは、ころげまわって遊び、なつめ寮では「したむき会社」がつくられる。

そんな夏のある日、青葉学園へ新顔の真治と幸子のきょうだいがやってくる。胸の病気で入院したお母さんに二人が持たされているおまもりの中身は、半分のへその緒。その晩、寮でひらいた二人の歓迎会は、うたって、わらって、おどって。

夏の終わりに、真治と幸子のお母さんが亡くなる。「きっとまた、いっしょに暮せる日がくるから、はんぶんだけ、さよならしようね」と、半分のへその緒をおまもり袋に入れて二人の首にかけたお母さんは、死んでしまった。火葬場でも涙を見せなかった幸子が、学園へ戻る汽車のデッキで「お母さんの、うそつき、うそつき、うそつき…」としゃくりあげる。
川の水もずいぶん冷たくなったころ、6年の和彦のつりざおで魚をつっていた1年生の真治が、「魚がかかったあ!」とわめく。かかったのはでっかいナマズ。みんなはいっせいに真治のそばへかけよる。さおに翻弄される真治に、口々に声をかけ、和彦は手をだそうとする。それを中3の透がさえぎってどなった。「和彦!いらんことするない!」

透が真治に言う。
「ええか真治」
「ひとりでつりあげるんぞ。だれも助けてくれんぞ。おまえひとりでつりあげるんじゃ」


大ナマズはあばれ、真治はつんのめって水のなかにひっくりかえる。
「よしよし。だいじょうぶじゃ真治。さおだけは手からはなすなよ」

びしょ濡れで起き上がった真治は、さおをつきだしたまま、しゃくりあげて泣き出した。
「泣いたって、だれもかわってくれんぞ真治。だれもたよるもんはおらんぞ。ひとりでがんばるんじゃ」透が真治の耳もとでささやき、肩をたたく。

「ほら、ゆっくり糸を巻け。ええぞ、ええぞ。その調子じゃ」
透は真治の横ではげましつづける。

そして、やっと真治が足もとまで引き寄せたナマズを、耕一がアミですくいあげた。
「やった、やったあ!」「ええぞ、真治!」

「ははは!つれたじゃないか真治!」
透に言われて、涙でよごれた真治の顔が、ニッとはにかむように笑った。

「ようしみんな!真治の健闘をたたえて、胴あげじゃ、こい!」
ワッショイ、ワッショイと胴あげされる真治が、表紙なんやなと思う。

小1の真治におもわず手を出そうとする小6の和彦、それを止めて、真治が自分ひとりの力でやれるよう励ます中3の透(なつめ寮の寮長でもある)。年齢が混ざった集団で、むかしはこんな風に下の子が「できるようになる」のを見守る上の子がおったんかなと思ったり、養護施設の寮という環境だからよけいなのかと思ったり。

いまは「学年」の線がしっかりあって、年上や年下が群れて遊ぶことはなかなかないような気がする。私が通った保育園では、わざわざ「縦割り保育」と言って、いつもの同い年のクラスとは違う、年齢の混ざった子どものグループをつくって、それで行事をおこなったりすることがあった。

学童保育のときには小学校の1年から3年までよく混ざって遊んだけど、それもせいぜい一つ二つの年の違い。もし中学生のにいちゃん、ねえちゃんが一緒に遊んだりしてたら、また違うこともあったかなと思う(中学生が、小学生と遊ぶってなことも、めったになさそうな気がする)。

作者の吉本は、『右むけ、左』のあとがきで青葉学園のモデルとなった養護施設のことを書いていた。原爆孤児をはじめとする戦災で身よりをなくした子どもが主だった戦災児育成所は、昭和30年頃からはその他の事情で身を寄せる童心園となる。吉本自身、戦災児育成所から童心園にかわる時期をこの施設で、生活したと2巻のあとがきで記している。

その施設は昭和43年に児童福祉施設としての歴史を閉じた。吉本は、自分たちのふるさとである学園のことを、「青葉学園物語」というかたちで残しておこうと決意したのである。
 
Comment
 
 
レビュー、拝見しました。
青葉学園物語。子供の頃何回も何回も読み返しました。中でもこの“さよならは半分だけ”は強く印象に残っています。課題図書に選ばれるだけのことはありますね。
森山姉弟の母の火葬が済んで帰途で幸子が真治にわざわざ耳打ちして言ったこと、そして電車の中でちい先生が幸子に小声で言ったこと。
読者にすらも聞こえないように言ったんだ、と思うとついつい嘆息してしまいます。
社会人になった今でも、日頃本を読まない人にお勧めするのはこのシリーズです。児童文学だけど、大人の鑑賞にも十分耐えられるからと言って。
青葉学園物語とバカラッチ隊は、これからもずっとそばに置いておくつもりです。将来、子供ができたら必ずや読ませることでしょう…
児童文学の傑作  [URL][Edit]






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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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