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ムーミンのふたつの顔(冨原眞弓)

ムーミンのふたつの顔 (ちくま文庫)ムーミンのふたつの顔 (ちくま文庫)
(2011/01/06)
冨原眞弓

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『We』入稿がすんでからのはずだったのに、くりあがってしまった頼まれ校正を、なかば夜なべ仕事でぐりぐりとやって、ゲラに入れたチェックについて、ここがどうの、あそこがどうのと先週の土曜、日曜とみっちり会談もすませたら、腑抜けになるほどの疲労感で、ぼやーっと本屋をうろうろした。

『We』入稿前だったので、あとで図書館で借りるかーと思っていたのにこの本を買ったのは、ぱらぱらとやっていて、こんなところが目に入ったから。

▼ムーミンをいまだにカバだと思っている人でさえ、「ねえ、ムーミン、こっちむいて」のメロディーを知っている。(p.49)
え、ムーミンて、カバとちゃうの?
「ねえ、ムーミン、こっちむいて」の歌は、たしかに私も知っている。替え歌だってうたったことがある。しかし、私はムーミンのアニメはほとんど見たことがないし、ムーミンの文学もほとんど読んだことがない。ロンドンの夕刊紙連載だったというムーミン・コミックスがあることは、この本で初めて知ったくらいだ。たぶん何らかの理由でうちの親がムーミンを読まなかった(選ばなかった)のだろう。

それでも私が「ムーミン」やその他の登場人物のことを多少は知っているのは、世間にあふれるキャラクターグッズのせいだ。私も、アムネスティが出してるムーミンの絵はがきを買ったことがあるし。

ビッグイシュー152号ムーミンの作者が「トーベ・ヤンソン」だということは、なぜか知っていた。ビッグイシュー152号の記事「ムーミンとトーベ・ヤンソン」では、キャラクターの性別はたいしたことではなく、「もっと大切なのは、孤立している小さな生き物がいないかどうかということです。ステレオタイプな物事は重要ではないのです」とヤンソンの姪・ソフィアが語っていた。

私が、ほとんど読んでもいない「ムーミン」についてずっと気になっていたのは、ジェンダー小物だった。ママにはエプロンとバッグ、パパにはシルクハット、スノークの女の子には足輪(?)。「ねえ、ムーミン、こっちむいて」の歌に出てくる「男の子でしょ」も気になっていた。女はこう、男はこう、というのがハッキリしがちな話なのだと、誤解していたのかもしれない。

『ムーミンのふたつの顔』で、そうだったのか!と、この長年の疑問が解けた。ムーミントロールの種族は、肌の色も体型もサイズもほとんど同じ、無性的(ジェンダーレス)といっていい体型だと冨原は書く。初期のムーミン文学の挿絵では「親子三人が入り乱れる場面などでは、だれがだれだかわからない」(p.37)。そのムーミントロールに、ジェンダー小物が加えられたのは、コミックスの要請だった。

▼児童文学では求められなかったムーミン家族の視覚的ジェンダー化は、わかりやすさを重視するコミックスの必要性から生まれたのだった。(p.39)

エプロンやスカートは女マーク、というように、視覚的なわかりやすさを求めていくと、ステレオタイプに乗っかることになるだろう。ユニバーサルをめざすものだという「ピクトグラム」に、するするっとそういうのが入ってくるみたいに。

あまり知らなかった「ムーミン」やヤンソンのことを、いろいろ知ったなかでも、言語的少数派だったという話が私には強く印象に残った。フィンランドには、公用語としてフィンランド語とスウェーデン語があり、人びとの姓名もフィンランド系とスウェーデン系があるという。フィンランド語とスウェーデン語は、言語学的な共通性はほとんどなく、公用語ではあっても、両方を同じように修得するのは難しいらしい。

スウェーデン語系フィンランド人が全人口にしめる割合はずっと減り続けて、いまでは数パーセント前後だという。
▼ヤンソンは言語的少数派として、伝達手段としての言語がかならずしも万人にとって自明でないことを、否応なく、子どものころから知っていた。自分が他と異なることをうけいれる、あるいは他が自分と異なることをうけいれる、それも理屈ではなく直感的に。この自発的寛容の精神ともいうべきものが、…ときにユーモラスに、ときにややシニカルに、あらゆるヤンソン作品をつらぬいている。(pp.84-85)

ムーミントロールの「トロール」は、『三びきのやぎのがらがらどん』に出てくる「トロル」と同じか、カバじゃないのか、とやっとわかる。

この本を読みながら、早速借りてきた『ムーミン・コミックス』1巻をみていると、ムーミンママ、エエなあ~と思う。コミックスと児童文学と、ぼちぼち読んでみたい。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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