FC2ブログ
 
読んだり、書いたり、編んだり 

植民者へ―ポストコロニアリズムという挑発(野村浩也編)

植民者へ―ポストコロニアリズムという挑発植民者へ―ポストコロニアリズムという挑発
(2007/11)
野村 浩也

商品詳細を見る

前に読んだ本のどれかで、この本が引用されていたか、あるいは紹介されていて知ったのだったと思うが、前の本がどれだったか全く思い出せず。

近所の図書館にはなくて、これもヨソからの相貸で届いた。500ページあまりある上に、ページが黒っぽい(=漢字が多い)論文がほとんどで、返却期限を延ばしてもらい、半月あまりかかって読む。が、論文て、こんな込み入った文章で書くもんやったっけ…。読んでいるとアタマが疲れてきて、集中して読めないものもあった。

あとがきによると、「日本解放社会学会創立20周年記念出版事業の一環」として出た論文集。テーマは、サブタイトルにもあるように「ポストコロニアリズム」。フランツ・ファノンの呼びかけを読みかえて、こんな呼びかけがなされている。

植民地主義に決別しよう。
植民者に決別しよう。
植民者が、被植民者について語るのをやめないのはなぜか。
それは、
▼文化的・精神的支配なしに政治的・経済的支配は十全たりえないからである。そして、被植民者を文化的に支配する上で不可欠なのが、被植民者について語ること、とりわけ、植民者の利益となるように一方的に語ることなのだ。さらに、その言説に正統性を付与することができれば、よりトータルな支配が可能になる(p.6、「はじめに」野村浩也)
からである。

この本では、植民者こそを問わなければならないと強調されている。「植民者とはだれか」を定義するために、編者の野村浩也による第1章「日本人という植民者」がまずある。そのなかでは朝鮮人やアイヌのことも少しふれられるが、この本のほとんどは、「沖縄人」という被植民者の位置から、「日本人という植民者」を述べたものになっている。

この論文集は全体として、「精神の植民地化」ということを、よくよく述べていると思う。それは言語の破壊・剥奪という実践の意味であり効果だ。野村によれば、
▼単に植民者の文化を被植民者に習得させることだけが、同化の目的だったわけではないということである。同化の最終目標は、被植民者を精神的に支配することであり、植民者の利益に奉仕する精神の持ち主へと、被植民者を改変することなのである。これを精神の植民地化という。(p.53)

植民地とされていた国々が解放され、独立したことで、植民地主義が終わったわけではない、むしろこの「精神の植民地化」をはじめとする支配と領有は、終わっていない、続いている、というのが「ポストコロニアリズム」研究のキモなのだろう。

植民者が被植民者について語ることは、植民者が語り、定義した存在こそが被植民者の真実なのだ、という態度である。

▼…沖縄人はつねに他者(=日本人)の視点に晒され、他者によって解釈され、他者によって名づけられ、その一方で、自分で自身を表象する機会は奪われ、たとえ名のっても無視される。沖縄人とは日本人の視点を通じてのみ、はじめて構成される存在となっている。(p.83、「沖縄への欲望」池田緑)

▼…要するに、韓国から届けられた声はことばとして受け取り、北朝鮮から届けられた声についてはその背後にあるものを探る。日本にあって、北朝鮮は、そこにいる者達が気づいていないものこそが正体なわけだ。「北朝鮮人」には見ることができず「我々日本人」だけが見ることのできるものこそが、北朝鮮の「真実」なのだ。北朝鮮について報道するとなると、なぜあれほど「潜入ルポ」という語句を見出しにつけたがるのか。「北朝鮮の真実」と「潜入ルポ」のセットがほぼ恒常的になっているのは偶然か。(p.161、「責任としての抵抗」郭基煥)

善意(?)の植民者の「代弁」の問題を池田緑が書いている。
「差別の実態」「被差別者の訴え」を多くの差別者に伝えることには意義があるが、その訴えが当の自分にも向けられていることを忘れ、あるいは忘れた振りをすることで、「代弁」を自責の念から逃れる道としてしまう差別者(植民者)の側の問題。
▼それは、被抑圧者を代弁し、なり代わるという簒奪行為にほかならない。"他者"を自分の言説上の資源として"領有"することである。
 その過程で"代弁する者"は、透明で責任を問われない位置に逃げ込めると錯覚してしまう。(p.129)

池田はこうした存在として、作家の池澤夏樹を"沖縄オリエンタリスト"として批判している。そして、沖縄人のことを語るまえに、日本人は沖縄人の声をまず聞くことが必要だと書く。

ファノンの『地に呪われたる者』や、メンミの本など、もうだいぶ前に読んだきりだが、また読みたいと思った。李良枝の小説も、また読みたいと思った。

その他、読んでみたい本。
『精神の非植民地化―アフリカ文学における言語の政治学』
『古琉球』
『沖縄歴史物語―日本の縮図』
『アメリカ帝国の悲劇』
『精神医療 FOR BEGINNERS』
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/1623-681c8290
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第66回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ