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それでも彼を死刑にしますか 網走からペルーへ 永山則夫の遙かなる旅(大谷恭子)

それでも彼を死刑にしますか―網走からペルーへ 永山則夫の遙かなる旅それでも彼を死刑にしますか
網走からペルーへ 永山則夫の遙かなる旅

(2010/08)
大谷 恭子

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永山則夫の死刑が執行された1997年の8月、私は当時の職場で、全国紙、地方紙、英字紙をあわせて7紙から業務にかかわる記事をクリッピングする仕事を担当していた。死刑執行を伝える記事の大きさを今もおぼえている(その一部は原紙やコピーでとっておいた気がするが、どこにあるのか今まったくわからない)。

昨年テレビで放送された「死刑囚永山則夫 獄中28年間の対話」の再放送を録画したものを借りて見たのは夏だったか。永山が獄中結婚した和美さんの語りを聞いて、私のもっていた永山則夫像が少し厚みを増した気がした。

永山の弁護人を務めていた大谷恭子さんの旧著『死刑事件弁護人』が、改訂新版となって出たことも聞いていて、読んでみようと思っていた。図書館にリクエストしていたのが、もう寒くなってから届く。
本の大半は裁判の経緯、とくに高裁の無期判決が最高裁で差し戻され、死刑確定に至った事情を書いている。そして、永山の遺志──自分のような者をうまないように、社会の最下層で働く子どもたちを貧困と無知から解放し、仲間意識を育てること──が永山則夫子ども基金となって、ペルーで実をむすんでいることが書かれている。

大谷さんが綴る裁判の経緯を読み、なかでも、殺人を犯した者として永山自身が訴えていた死刑廃止論、"仲間"殺しを繰り返してはならないという話は、私には発見だった。

▼犯罪は仲間殺しであり、これに死をもって報いれば憎悪しか生まない。憎悪の連鎖を断ちきるためには、国家こそがどんなことがあっても人は殺さないとの規範を示すべきである。憎悪の連鎖を断ちきり、仲間意識を再生させることが国家の責務であると。(p.218)

二審で死刑から無期判決に減じた高裁の判決は「犯罪を犯した者も共に生きる仲間であり、特に少年の犯罪にあっては社会が共に責任を負うべきであるとの立場」をはっきり示したものだったと大谷さんは書く。

▼死刑判決を下す裁判員は目の前にいる被告人たちを自分たちの仲間であり社会の一員であることを、決して認めないであろう。また、犯罪と社会の関係を軽んじ、犯罪は自分も属するこの社会が産み出したことを認めることに抵抗感を感じるだろう。なぜならそれは自分自身の問題でもあるのだから。

市民が死刑に関与するということは市民自身の手による市民社会からの追放であり抹殺である。職業的裁判官はあくまで国家権力を体現して死刑判決を言い渡すが、市民は市民として仲間を死に追いやる。…ひとたび高みにあって死刑と判決することを経験した市民は、今よりももっと意識の深いところで、弱者を排除・抹殺することを是とはしまいか。(p.219)

大谷さんが、「市民が死刑判決を下す」制度でもある裁判員制度を憂う気持ちが分かる気がした。裁かれる被告人たちも「自分たちの仲間であり社会の一員である」という認識を、裁判員という制度はずたずたに切り裂くのではないか、と思った。

私が河出文庫の『無知の涙』『木橋』を読んだのは、20年くらい前。ほとんど字も書けなかった人が、これだけの本を読み、これだけ膨大な文章を書けるようになるには、どれほどの時間と努力があっただろうと考える。まだ読んでいない永山の小説も読んでみたいと思う。

「人間を造る書物に愛を! 思考の道具を大切に!」(p.93)
永山則夫によるルンプロ仲間文庫の本の裏には、永山が考えたこの言葉が書かれていたという。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第67回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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