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アルピジェラ(抵抗を縫う---チリのキルトにおける触覚の物語)

抵抗を縫う---チリのキルトにおける触覚の物語抵抗を縫う---チリのキルトにおける触覚の物語

←会場でもらった小さなカタログ。展示されたアルピジェラの一つひとつが写真付きで紹介されている。印刷した紙を折って、穴をあけ、紐で綴じたもの。

金曜日、昼過ぎまで仕事をしてから、『We』読者でもあるFさんと、阪大の博物館へチリのキルト(アルピジェラ)を見にいく。たしか2、3年前には坂をあがった先の古い建物が博物館にあてられていたが、昔は医療技術短大の本館だった建物が新しく博物館になっていた。リターン式のコインロッカーやカフェもあった。

1973年から18年続いた軍事政権下で、行方不明になりあるいは拷問され、処刑された人たちの家族や親しい人たちがつくったアルピジェラの数々。女性たちがキルトに込めた思いは、その「女らしさ」のために、とるにたらないものと扱われていて、ある意味そのおかげで、国外につながり、チリの状況が伝わっていった部分もあった。一見素朴な"かわいらしい"アルピジェラを見ていて、いろんなことを感じた。

Fさんも私も一番心に残ったのは「強姦は犯罪だ」というアルピジェラ。これはペルーのものだった。十字に置かれた花、花を手に並ぶ女性たちの悲しみの顔。自分たちがおこなった抗議行動をアルピジェラにつくる。それは怒りや悲しみを分かち合い、経験や感情をともに伝えていくものになるのだろうと思った。
土曜日、もう一度アルピジェラを見にいく。午後からのラウンドテーブルにも参加した。この展示のキュレーターであるロベルタ・バシックさんの話、コメンテーターは太田昌国さんと北原恵さん

アルピジェラは語り部であり、チリのある時代の記憶だという。私はチリの現代史をほとんど知らない。アルゼンチンの軍事政権下で多くの学生が連れ去られ行方不明になったことを、むかし見た映画「ナイト・オブ・ペンシルズ」でわずかに知っていたから、最初にアルピジェラ展のこのチラシを見たときは、あのことを描いているのかと思った。

軍事政権下のチリに滞在したという太田さんの話を聞いていて、作品の"理解"に知識がまったくないよりはあるほうがいいかもしれないけれど、アルピジェラをまず見るところからというのもありかなあとも思っていた。太田さんが現代企画室から持ってきていた本、『ピノチェト将軍の信じがたく終わりなき裁判―もうひとつの9・11を凝視する』や、刺繍の図版が入った『人生よありがとう―十行詩による自伝』『マヌエル・センデロの最後の歌』などを、また読んでみたいと思った。

北原さんの話は、アートの力や、手芸とジェンダーに関わるものだった。いちむらみさこさんや、ちくちくの会も紹介され、よく見ると北原さんの胸には「Take back the Night」がつけられていた(あとで聞くと、うてつさんがつくったものだった)。近代以前にはジェンダー特定されていなかった「手技(てわざ)」が、近代以降、ジェンダー規範とむすびついて、工芸は男のものに、そして芸術の世界へ、手芸は女のものに、そして周縁化されていった。周縁化されたものの抵抗の力、という話もあった。日々の暮らしのなかにある、たいして価値のないものと思われてきた物や行動がもつ力かなと思った。

バシックさんは、テキスタイル(裁縫)は、互いに競い合おうとするのではなく、互いに貢献しようとする参加のスタイルだとも話していた。そんな話を聞くと、もう少し会期が長くて、その間に参加者が一緒になにかをつくるようなワークショップがあってもよかったなあと思う。

話を聞き終わって、またアルピジェラの展示を見て、受付にいた人と少し話をした。短い期間のあいだに、350人くらいが見にきたそうだ。1学年が2500人いるような学期中の大学で、その数はちょっとさびしい気もするが、強制して見ろというものでもないし、また出会える機会があればなあと思った。日本での展示は、バシックさんと主催者である酒井朋子さんの縁で実現したそうで、大阪だけ。

見にいけてよかった。
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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