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エイズとの闘い 世界を変えた人々の声(林達雄)

エイズとの闘い 世界を変えた人々の声エイズとの闘い
世界を変えた人々の声

(2005/06/03)
林 達雄

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『人間の条件 そんなものない』で立岩さんが紹介していた本。この小さなブックレットは、エイズが「単なる病気ではなく、人間としての尊厳を脅かす問題」(p.16)であることを伝え、世界のルールが、治療によって助かる子どもと治療を受けられずに死んでいく子どもとを分けていること、そのルールを変えていくために、世界の人々が声をあげ、声を集め、ついにルールを変えたことをおしえてくれる。

「知的所有権」の保護、つまりは、誰かが思いついた「作り方」をマネしたらあかんというきまりがあるために、せっかく開発されたエイズ治療のための新薬が高くて買えない状態になっていた。開発したアメリカ合衆やヨーロッパの会社が「知的所有権」をふりかざすので、作る設備があったとしても、ヨソの国では作れない状態になっていた。

「知的所有権」保護の路線は、もう世界のなかで決まってしまって、力にものを言わせてるアメリカに、日本まで尻馬に乗って、もうこれは、なんぼ「命にかかわること」であっても、どうにもならへんと思われていた。いったん作られてしまったルールをひっくり返すのは無理やろう、と。

人々の声が、ルールを変えた。
▼ルールを変えること、世界の政治のあり方を変えることが、現実の人の生存に結びついた。アフリカにも希望を与え、沈黙を吹き飛ばした。(p.57)
ブラジルという国は、特許や知的所有権を掲げるアメリカとの闘いに勝ち、エイズ治療薬の自国生産をはじめた。薬を作っただけではなく、数種類の薬を併用する療法を確立した。それを国民に無料で提供することで、ブラジルでは感染者の死亡率を半減した。

著者の林さんは、ブラジルは政治に強いと書く。
▼政治に強いということは、大国からの圧力に屈しないこと。国内にも優れた制度をつくり、これを実行に移すこと。国民の生活や命を守ること。一貫してこれらのことをやりとげることであったのだ。(p.36)

そのブラジルの政治の強さは、自治力に支えられている。
▼80年代半ばまで軍事政権が続いてきたブラジルでは、福祉や教育など地域で生きるために必要なことはすべて、住民組織によって担われてきた。政府をあてにしていては日々生きることができない。そのために、筋金入りの住民組織が育ってきたのだ。この住民組織が、新政権が発足した時点で世界各地から戻ってきた亡命知識人と結びついたのである。国全体が住民組織とNGOでできているようだ。こうしたブラジルの特徴がエイズ対策にも生きてくる。(p.48)

南アフリカでは、ザキ・アハマットが行動を起こした。「本当に必要なところに治療薬はない。エイズがないところに薬はある」(p.39)。

1998年に製薬会社と南アフリカ政府の間で裁判が始まった。知的所有権の保護とエイズ治療の闘いだった。ザキ・アハマットは感染者を代表して法廷に立ち、問題を語った。

裁判の流れはそこから大きく変わった。世界に呼びかけられた署名は、最終的に100万人から集まったという。裁判所も、製薬会社に対して、エイズ治療薬の開発にいくらかかり、これまでいくら利益を上げ、新薬の開発から何年でもとがとれたのか根拠となる資料の提出を求めた。

2001年4月、製薬会社は訴えを取り下げる。
▼世界最大手の製薬会社のすべてを敵に回したような闘いに、南アフリカ一国ではたちうちできない。しかし、世界中からの応援があれば、勝敗は逆転する。(p.53)

2001年11月、WTO会議では、WTOの知的所有権に関する協定に、「特許・知的所有権の保護を理由に公衆の健康を妨げてはならない」という宣言が付け加えられた。

どうにもならないように受け止められていることも、変えられる。その希望を感じさせてくれる一冊だった。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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