FC2ブログ
 
読んだり、書いたり、編んだり 

ボーダー&レス(藤代泉)

ボーダー&レスボーダー&レス
(2009/11/07)
藤代 泉

商品詳細を見る

良く言えば拘泥しない、悪く言えばいい加減な僕=江口理倫(えぐちまさとも)と、会社で同期になった在日三世=趙成佑(チョソンウ)の話を軸にした物語。淡々とおもしろかった。

20代前半のこういう感じ、なんかわかるなーと思いながら読んだ。同じ行為がどうして場所が違えばNGになるのか。ある言動の「正しさ感」と、そのうっとうしさ。ある行為の「正しい感」のすごさ。確かで正しすぎてびっくりする。

チョ君が呼びづらいからか、会社の人が「チョウ君」と呼んでも「チョウセイユウ」と呼んでも、何と呼ばれても返事をしていたソンウを「なりすけ」と呼ぶようになった僕を、ソンウは理倫を音読みして「りーりん」と呼ぶようになった。

なりすけとりーりんは2人とも喫煙マンで、喫煙室でだらだらと過ごすうち、だんだん仲良くなる。社内メールを、五七五七七で交わしてみたり、登場人物どうしの会話とか、そこはかとないおかしみがある。
遊びにいったソンウのアパートの玄関ドアに「在日は北へ帰れ」のスプレー落書きがあった日、僕は滅入って気分が落ち込む。だが、僕が見る限り、ソンウは淡々としていて、「好き嫌いは誰にでもあるからね」とつぶやき、「気にしなくていいよ、玄関に鳥フンついたくらいにしか考えてないから」と僕を慰めるように平然と言う。そんなソンウが、僕にはわからない。

ソンウはこうも言ったのだ。
▼「国ってまぁまぁ大事だし、エスニシティに愛着を持つのもまぁまぁ理解できるけどね。でも国境も民族も流動的でしょ。だからそんなもんは一時期のくくりに過ぎないんだから、俺はあんまりそこに固執したくないんだよね」(pp.94-95)

僕が、同じ部署の森口に頼まれて、その友人だという在日四世の新井美姫との飲み会をセッティングしたとき、ソンウはすげー疲れた様子で、帰りにうんざりしたように言った。
▼「余計なこと考えなければああやって生きられるよ。今時、国やルーツがどうでも、そんなのは問題じゃないし。多少のいやがらせに目をつぶれば生活自体に支障はないし。今もう、若い世代の在日はほとんど、ああいう生き方してんじゃない」(p.129)

「でも俺はああいう生き方とか無理だ」と言うソンウは、珍しく怒りや憤懣を表情に出して、「好みで国やエスニシティを選択するような心の余裕なんて俺にはないんだよ。俺にとって民族文化は趣味で取り入れるようなカルチャーじゃないし、アクセサリーみたいに取り外しできるもんでもない」(p.129)と言った。

前に、ソンウが、国も民族もただのくくりなんだからと言ってたことを思いだして、考えた末に「もういいじゃんか」「そういうくくりに固執したくないって自分で言ってたじゃんか」と僕は声をかける。

「お前にはどうでもよくても俺にはどうでもよくないんだよ。国も民族も」(p.131)

ソンウのこの言葉をどう考えたらいいのかと、僕はけっこう悩む。
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/1540-43c04c57
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第67回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ