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空をとぶ小人たち(メアリー・ノートン)

空をとぶ小人たち空をとぶ小人たち
(1969/01)
メアリー・ノートン

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川をくだり、リトル・フォーダムの「模型の村」にある一軒におちついたアリエッティたち。この「模型の村」はポットさんという、まるで借り暮らしやのような、つまり「ものをつくるのに、いろいろほかのもので間にあわせたり工夫したりするのが、たいへんじょうず」な人が、細かいところもゆるがせにせず一つひとつ作っていった村で、すべてがアリエッティたちの背丈にちょうど合わせたようなサイズなのだった。

見物客の残しものもあるから、今までにないくらい豊かな借りものもできる。父ポッドは村をぶらつきながら口笛を吹き、母ホミリーは家の仕事をしながら歌をうたい…こんな完全な「安住の地」はないかもしれないというようなところだった。

けれど、アリエッティには秘密があった。
人間に「見られる」ことは悲劇で、「見られ」たら最後、すぐさま引っ越しをしなければならない、苦労してまた新しいすみかを作らなければならない、だから人間に「見られ」てはならない、というのが父や母の考えだった。

それなのに、アリエッティは、もうこの模型の村で、「見られ」てしまっていた。ミス・メンチスという"借り暮らしに理解のある"女の人と、アリエッティは話さえしたのだ!

▼じぶんを、あんなに強く人間のほうへ引っぱっていく、このあこがれみたいなものは、なんなんだろう?…たしかに、むこうみずで、ばかなことにはちがいないけど、でもまた、すごく大きいくせに、とてもやさしそうな生きものと話のやりとりをしたり、巨人のような目が輝くのや、ひどく大きな口がしずかにほほえむのを見たりするのって、胸のわくわくするような、ふしぎな気持ちなんですもん。いっぺんやってみて、そして、べつに恐ろしい災難に見舞われたりもしないと、またやってみたくてしょうがなくなるんだわ。(pp.65-66)

ミス・メンチスはたしかにやさしい、理解のある人だった。アリエッティから借り暮らしがどんなものかをよくよく聞き、ポッドやホミリーをじっと見るようなことは決してしなかったし、わざわざ買ってきたものを、借りやすいように置いておくこともあった。

この夢のような安住生活は、しかし長くはなかった。アリエッティたちは、生け捕りにされ、リトル・フォーダムとは別の「模型の村」を営むプラターさんの屋根裏部屋に閉じ込められてしまう。いつのまにか、プラターさんは、リトル・フォーダムの模型の村に、「生きてるやつ」がいることを知っていて、こいつらを見世物にしようと考えたのだ。

ポッド、ホミリー、アリエッティの3人は、この閉じ込められた空間から抜け出すために、プラター夫妻が食事をもってくる時間のほかは、屋根裏部屋をくまなく調べ、知恵と工夫で、窓の掛けがねを外してまた掛けることに成功し、力をあわせて練習を続けた。だが、屋根裏部屋は、急な屋根のてっぺんにあり、窓は開いても、そこからどうやって出られるかは難問だった。

万策尽き果てたかとポッドが沈んでいたとき、屋根裏にあったロンドン画報を読みつづけていたアリエッティが「気球をつくればいいじゃないの」の父に提案する。ロンドン画報の気球操縦についての図解や写真、解説を何度も何度も読んで、ついにアリエッティたちは、気球をつくりあげる。屋根裏にあるあれこれを工夫して作っていくその手並みは、さすが借り暮らしと思わせる。

そしてある日、ずっと練習してきたとおり掛けがねを外して窓を開け、運にまかせてアリエッティたちは気球でとびだす。風をつかまえ、風にのり、いちかばちかの空の旅は、気球をリトル・フォーダムへと運んでくれた。戻った我が家は、3人の不在の間に、水道がつき、電灯もつき、さらに使い勝手がいいよう改装されていた。

これは、ミス・メンチスに私が借り暮らしのことを話したからだ、今までのどこよりここは安全だ、あの人も約束してくれているとアリエッティがとうとう父や母に告げたとき、誰もアリエッティをほめてくれなかったし、感謝もしてくれなかった。喜んでもらえると思ったのに、かあさんだってこんな家が欲しいと言ってたじゃないと、アリエッティはがまんできなくなる。

そんな娘に、父ポッドは本当に大丈夫といえるのかねと静かに話す。たとえミス・メンチスがそんな人ではないとしても、「見られた」ってことは、いずれ話が広がること、いずれは自分たちの居場所がみつけられてしまう。妻のホミリーが、こんな素晴らしい造作の家を欲しがる気持ちもわかる。けれど…

▼なあ、ホミリー、だいじなんは、蛇口やスイッチじゃないんだ。戸棚でも羽根ぶとんでもない。ちっとばかりの暮らしの楽しみが、とんでもなく高いもんにつくかもしれんのだ。ルーピーんとこで、それがわかったろうが。じぶんの足でちゃんと歩いてくってこと、やすらかな気持ちでいられるってことが、たいせつなんだ。ここにいては、わしの心はいっときも休まらん。(p.242)

アリエッティの気持ちもわかる。でも、「もうすこしおとなになったら、わしのいうことがわかるようになるだろうよ」とアリエッティに言い聞かせるポッドの言葉が身にしみるのは、私も少しは歳をとったからか。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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