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小さいおうち(中島京子)

小さいおうち小さいおうち
(2010/05)
中島 京子

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6月の初めに『女中譚』を読んだときには、まだ図書館に『小さいおうち』は入っていなかった。数日して、また図書館の蔵書検索をしてみたら、めでたく『小さいおうち』も入っていたのだが、すでに20人くらい予約がついていた。ああ当分あかんなと思い(私は予約待ちが1桁の人数になってから予約することにしているので)、本屋でなんどか『小さいおうち』をチラチラ見ては、読みたいな~買おっかな~と迷っていた。

そしたら、中島京子さんがこの本で直木賞をとってしまった。こうなると、もう当分のあいだ図書館では読めないので、『We』入稿がすんだ先週の金曜に、近所の本屋で買ってきて(ちょうどもらいものの図書カードがあり!)、いそいそ読んだ。おもしろくて、翌朝には読み終えてしまった。
中島小説はこれまで元ネタ加工モノかカゾク小説が多かったけど、この『小さいおうち』は、『エ/ン/ジ/ン』に似て、ある時代を書いたもの。これからは、こういう方面も掘って書いていくんかな~と楽しみ。

受賞を伝えるテレビニュースを、中島京子さんはこんな顔でこんなしゃべり方をするんか~と思いながら見た。芥川賞の赤染晶子さんは、そういえば前に、津村紀久子さんにおもしろいと教えてもらって、『うつつ・うつら』という本を読んだことがある。

テレビや新聞の表現はちょっとおかしかった。前作の『女中譚』同様、これは女中奉公の日々をばあさんが振り返る話なのだが、NHKは「お手伝いさん」と言い、CSテレビのニュースは「お手伝いの女性」と言い、日経では「女中」とカッコ付きで書かれていた。もし前作が直木賞だったら、NHKは『お手伝い譚』とでも言い換えるのであろうか。

主人公のタキは、「女中」という職業をこう振り返る。

▼わたしが奉公に上がった時代、昭和の初めになれば、東京山の手のサラリーマン家庭では女中払底の時代になっていたのだから、「タキや」と呼びつけにされるようなことは一切なく、「タキさん」と「さん」づけで呼ばれ、重宝がられていたものだ。東京のいいご家庭なら、だいたいそうであろう。わたしがその仕事についた時代は、「よい女中なくしてよい家庭はない」と、どの奥様だって知っておられたものだ。

 わたしは偶々、こうして生涯、お嫁に行かなかったけれども、元来、女中奉公というのは、嫁入り前の花嫁修業であった。よい花嫁となるためのご奉公なのであるから、今日の女子大学とまではいわぬものの、そう馬鹿にした職業ではなかったのであるのに、なにかこう、奴隷のごとき存在のように思われているのはいかがなものか。

 わたしにしたところで、つらい思いをしなかったわけではないが、はて、仕事というもので、どこもつらくない、楽しいばかり、ということがあるだろうか。(p.8)

この女中奉公回想記は、タキばあさんがノートにこつこつと自分で書き、合間に、そのこつこつ書いたノートを「甥のところの次男坊」に見られた(あるいは読むだろうと思って出しておいた)ことについての所感が挟まれる。この「甥のところの次男坊」が、自分の知っている"歴史的な知識"に照らして、昭和10年代はおばあちゃんが書いたみたいにそんなウキウキしてるはずがないとか、おばあちゃんは間違ってるとか言うので、タキばあさんは、アホかこいつと、あの時代に生きた者にとってはこうだった、わたしはこう感じ、こんなことをしていた、ウキウキもしたのだ、と書く。ここのところが、またおもしろかった。

「秘められた恋の話」がどうのと、この小説は紹介されているようだが、そうかなあとも思い、まあそうも言えるかなあとも思う。

『小さいおうち』、というタイトルは、バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』に、やはりちょっとかすっているのだった。
 
Comment
 
 
こんにちは、おじゃまします。

>予約待ちが1桁の人数になってから予約することにしているので

そうしていると、いつまでたっても予約できないなんてことありませんか? 私はとにかく予約しちゃいます。で、忘れ果てたころに「順番が来た」との連絡をもらうのですが、そのころにはなぜその本を読みたいと思ったのかさえ忘れてたりします。

「小さいおうち」さいたま市立図書館では515人が予約登録していました。12冊入っているので、単純計算したら1冊で43人待ち。一人2週間借りるとしたら602日待ち。
「小暮写眞館」(宮部みゆき)なんか1698人待ちでした。36冊入っているので、660日待ちかな。

Weフォーラム、あと数日ですね。最後の追い込みで大変でしょうが、熱中症と冷房病にも気をつけてくださいね。
1年以上の予約待ち  [URL][Edit]






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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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