FC2ブログ
 
読んだり、書いたり、編んだり 

コーダの世界(澁谷智子)

コーダの世界―手話の文化と声の文化 (シリーズケアをひらく)コーダの世界
―手話の文化と声の文化

(2009/10)
澁谷智子

商品詳細を見る

医学書院の「シリーズ ケアをひらく」はどこまで入ってるかなと近所の図書館の蔵書検索をしたら、これも入っていたので借りてきた。

「コーダ」とは、CODA(=Children of Deaf Adults)、聞こえない親のもとに生まれた聞こえる子どものことをさす。聞こえない親に育てられることによって、聞こえない人の文化「ろう文化 Deaf Culture」を受け継いでいる一方で、聞こえる文化「聴の文化」にも交わっているというバイカルチュラルな存在であることが多い(育てられ方の違いや個人差も大きいが)。

そんな「手話の文化と声の文化」に両の足をおくコーダから聞き取った語りをもとにしたのがこの本。おもしろくて、ぐいぐいと読んでしまった。手話をほそぼそと続け、ろう者とつきあってきた中で、手話を始めた頃には「えっ」と思っていたことや違和感があったことが、今の私はあまり気にならなくなっていたりする(たとえば指差し、見た目への言及)。

コーダの世界は、私がろう者とのつきあいの中で知るようになったことを見せてもくれる。聞こえない親と暮らすことでコーダが身につけてきた言動(ろう文化)が聴の文化とズレている例をいろいろ読んでいると、聴の世界でアタリマエのことはろうの世界では必ずしもアタリマエではないという文化の違いがわかるなあと思う。
親が聞こえないことで、子どもの頃から「通訳」を求められがちなコーダ。大人の話を子どもの語彙で伝えるのは無理もある。

聞こえない親の、その親の世代、コーダにとって祖父母の世代は、聞こえることが多い。聞こえない親から生まれる子の9割は聞こえる子だし、聞こえない子どもの親の9割は聞こえる。そのことで、あるコーダが語っていることが印象深い。

▼私らコーダが声をあげなければいけないのは、ろう者を育てる聞こえる親に対して。ろう者が結婚して子ども生んだら、たいていはコーダになるから、聞こえる親にはそういうことも考えて子育てをしてもらいたいなって思う。今でこそ、ろう児を手話で育てようという聞こえる親も出てきているけど、やっぱり「聞こえない我が子を聞こえる人に近づけたい」というのも強い。

 でも、そうやって口話で育ったろう者が大きくなって子どもを持つと、やっぱり親子のコミュニケーションができていなかったりする。聞こえない親とコーダでも、口話だけの会話やったら成り立たへん。親子関係がつぶれてしまう。だからこそ、ろう児は手話で育ってほしい。手話のやりとりのなかで、自分の気持ちをまとめたり整理したりして、伝える力を身につけてほしい。そして、そうやって育ったろう者には、コーダを手話で育ててほしいって、最近強く思う。(p.110)

大阪市立聾唖学校で、手話こそが聾唖者の母国語だと言い、心の問題まで完全に発表できるのが手話だと言った高橋潔の主張は、たとえろう者が発声によって自分の言いたいことを伝えたとしても、それに対する反応を充分に受けとめ、やりとりすることは音声言語によっては困難だというコーダたちの観察につながっている。

「コーダ」にとっての「ろうの声」のところも、そうなのか~という発見だった。親の声真似が流行ったという話や、父に絵本を声で読んでくれとせがんだ話…

そういうコーダにとっての「ろうの声」の話を、著者はこう書いている。
▼ろう教育でも、聞こえる人の世界のなかでも、ろうの声は、その発音の違いや明瞭かどうかだけを気にされすぎる。コーダにとっての親の声は、そういうものではない。Kさんの話からは、そうした親子のなかでの声の存在感が立ち上ってくる。(p.153)

文化と文化のちがい、異文化のはざまのことを書いた本としては、亀井伸孝さんの『手話の世界を訪ねよう』にも通じる好著。買おうかな~
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/1356-8e09319f
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ