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底ぬけビンボー暮らし(松下竜一)

竹信さんの『ルポ 雇用劣化不況』を、買ってきたその日に読んでしまい、よく調べてあるしよく書いてあるとは思うものの、やはり重かったので、ちょっとオクチ直しにと松下竜一のこのビンボー本を読みはじめたら、ついついこれもしまいまで読んでしまった。

底ぬけビンボー暮らし底ぬけビンボー暮らし
(1996/09)
松下 竜一

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松下センセが、自著がなんとか文庫で生き残るようにと、自分で全部買い取るからと版元と交渉して、一千冊の特別増刷(本屋に並ばず、全部著者のもとへ直送)を、「この際にぜひお求めを!」と、草の根通信の読者などによびかけたところ、思いのほか注文が多く、再度の増刷依頼をかけ、せっせと発送支度をしているときの話。
▼「どうやら竜一さんは、スタートの最初から、二十年たってもやっぱり自分の本を自分で売らなならん作家のごたるなあ」
 荷造りの手を休めずに、得さんがからかう。
 「そうちこ。こんな哀れな作家も珍しいやろうな」
 松下センセも軽口に応じつつ、別に不愉快ではない。心中には別な思いも動いているのだ。
 自分で自分の本を一生懸命に売らなければならない〈哀れな作家〉かも知れないけれど、見方を変えていえば、これほど読者と直接に結びついた作家も稀ではないかと思うのだ。読者との結びつきの緊密さでいえば、珍しいほどに〈倖せな作家〉なのかもしれない。(p.30)

ビンボー暮らしの松下センセは「そろそろ、思いがけない収入がこないもんかなあ」と妻の洋子さんと語らっている。思いがけない収入は、思いがけないだけに喜びも大きく、また、松下センセもまったく運に見放されているわけではないようで、そういう「思いがけない収入」が時には降ってくると書いている。

▼不安や焦りがないといえば嘘になるが、もとより作家などという稼業は、“書けないときにも耐えうる精神”がなければやっていられるものではないのだ。たとえ実態は失業者であろうとも、散歩を愉しむ精神を喪わぬ限り松下センセは作家なのである。(p.54)

そして、毎度のように、「収入のあて」がいついつ以降はとんとないという話が書いてある。それでも悲壮感は湧かない松下センセ。

▼…そんな事情なので、いまや単行本による収入以外の当てはなく、なにかよほどの幸運に恵まれぬかぎり来年五月以降の生計はまっくらな見通しである。
 それがわかっていながら、とんと悲壮感の湧かぬ松下センセである。しゃにむに仕事をしなければなどという追い詰められた意気込みもない。相変わらず細君と川辺で二時間も遊んだりしている。細君もまた、「こんなにのんびりしていて大丈夫なの?」と訊いたりはしない。
 そもそも人間がそんなにあくせくと働かなければ生きられないということが、おかしいのだと思えてならない。みんなが足ることを知ってそっと生きていくのであれば、そんなにあくせくと大きな収入を求める必要もないと思えるのだが…・(p.97)


直接の読者との結びつき、まるで『We』のようであります。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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