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このところ読んだ本など―想い雲/食堂かたつむり

想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫) 食堂かたつむり (ポプラ文庫)

食い物ネタにみせかけて、じわじわっと何かを書いている小説2冊。
高田郁『想い雲―みをつくし料理帖』ハルキ文庫 
『八朔の雪』『花散らしの雨』に続き、「みをつくし料理帖」シリーズの3冊目を社納さんに借りて、あっという間に読んでしまった。

「つる家」で下足番を務める奉公人・ふきの弟は、つる家の商売敵のような「登龍楼」で奉公しているが、姉と離ればなれの奉公のつらさに、時に登龍楼を抜け出してきて「ねえちゃんのそばがいい」と駄々をこねたりする。

その七つの健坊が、登龍楼でちょっとしたしくじりをしてしまい、叱責されて、飛び出してしまった。それから戻らないという健坊を、みなで手分けして探すが、健坊は何日もみつからない。

飯も喉を通らないふきがやつれきってしまった頃、近在の百姓に背負われて健坊が戻る。登龍楼を飛び出してしまって、気がつくと迷子になってしまった健坊をたすけてくれたこの百姓が語るには、自分の呆けてしまった母親が、健坊のことを息子の自分だと想って、世話を焼き、かわいがって、なかなか放さず、帰すのに今日までかかってしまった、というのだった。

お礼に伺いたいのでお名前をという声にも名乗らず、この百姓は、追いかけてきて握り飯を渡す澪にこう語る。
▼「おらの方が例を言わねばなんねぇよ。七十になる呆けた母親が、おらだと信じてあの坊主を可愛がる姿を見て、おらぁ母親に大事に育ててもらったんだのう、と今さらながら思ったんだ」(p.264)

ここでほろっと涙がこぼれた。

小川糸『食堂かたつむり』ポプラ文庫
元同僚さんから「読んで-」とすすめられて借りてきた。途中までは、『かもめ食堂』(小説のほう)って感じ?

ある日、恋人との愛の巣に帰ってみたら、祖母のぬか床以外は何も残っていなかったという、そんなんありか?というところから話は始まる。あまりのショックに声も失った、という設定の主人公・倫子は、帰るとそこしかないから郷里に戻るが、こっそりひっそり実家の敷地に足をふみいれる。

母親は、銀行を全く信用しておらず、シャンパンの瓶にお金を入れて畑に埋めているはず、それを掘り出して頂戴し、また都会に戻ろうという魂胆で。瓶はみつからず、母の飼いブタ・エルメスに見つかり、母にまで泥棒と思われてカマを振り上げられる。

倫子と母の間には「暗くて長くて深い溝」がどうもあるらしい。(倫子が、やはり銀行にはカネを預けず、押し入れにコツコツと百万ほどためていたというのは、母譲りの行動であるが。)

ひとまず実家に置いてほしいという倫子を母は受け入れるものの、蝶よ花よというぬくぬくの環境は与えない。この母は、所持金ゼロに近い娘に、いいよいいよ、かまへんよ、という親ではないのだ。条件は、ブタの世話をすること、光熱水費、家賃をはじめ生活費はきちんと入れること。

そこで倫子は突然これしかないと思いついて、物置小屋を貸してください、そこで食堂をやってみたいですと母に訴え、了解をもらう。

この小説は、(一人でこの調理がほんまにできるんかいなー)と思うような、なかなか手の込んだメニューがいろいろと出てくるところも見どころなのだろうが、なかなか解けそうもない母との確執(そのせいで、もう長いこと倫子は故郷をはなれていたわけである)を、すぐ近くで一緒に生活することになった倫子が、食堂をいとなみながらのみこんでいく話、のように私には思えた。

そのクライマックスは、おかんの病気。ガンで余命数ヶ月。家財の一切合切を持ち逃げされるという始まりにしても、なかなか極端な設定をする作者だと思うが、それで、ずっと心を許せなかった母と娘は、どうなるのか!

高田郁さんは、小説に出てくる料理はすべてつくっていると言っていた(3巻では季節の関係上、ひとつだけできなかったとトークで言うてはったが)。小川糸は、ブタの解体をはじめ、いろいろやってるんかなあ、取材かなあ、どんなんしてこの話を書いたんかなあという興味がのこる。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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