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ここしばらくの読書メモ(2)

 岩盤を穿(うが)つ kimura.jpg クク氏の結婚、キキ夫人の幸福 コミットメントの力―人と人がかかわるとき (NTT出版ライブラリーレゾナント)
湯浅誠『岩盤を穿つ』文藝春秋
湯浅さんが2年前にWeのインタビューで出てきたとき(この人同い年なんやー)と思った。大阪府知事の橋下徹も同い年で、いろんな人がおるよなあと思う。自分が今ここにいる、ということは、少しは「選んだ」つもりもある。でも、偶然もいっぱいある。何かがちょっと違っていたら、今ここにおらんかったかもしれんと思うこともある。

湯浅さんが院生のときに左派の思想家を研究していて、その「わかりにくさ」にひかれたという話がよかった。

▼私は「90年代は後退戦だ。世の中どんどん悪くなる」と考えていたので、宮本顕治や徳田球一のように、地下活動をして獄中18年みたいな、信じるところを貫いて玉砕するタイプには興味を持てませんでした。はっきり転向した人やはっきり玉砕した人ではなくて、間でぐじゃぐじゃやっていた人に興味がありました。(p.183)

戸坂潤、中野重治、三木清などに興味があったのだそうだ。それはかれらが「状況を見つつ一歩一歩引いていきながら、その都度戦線を立て直そうとしていたんだと」(p.184)思ったからである。

そして、大学院からフェードアウトして、奨学金が終わって、どうやって食っていくかを悩む。「結局、みんなで同一労働・同一賃金の仕事をして、みんなで給料を上げていくのが一番すっきりしていていい」(p.184)と思い切って便利屋で働くことにした湯浅さん。

誰がナンボで働いているかヒミツで、なんでこっちの給料とあっちの給料にこれだけ差があるのかを説明できないような職場はいっぱいある。私が今まで転々としてきたのも、ほとんどそんなところだったなと思う。

樹村みのり『母親の娘たち』ヘルスワーク協会
「あざみの花」「解放の最初の日」と樹村みのりのマンガを読んで、ちょっと毛色の違う感じのを借りてきた。タイトルは「母親の子どもである、娘たち」という意味。

読んでいて、よしながふみの『愛すべき娘たち』を思い出した。「女である」ことで、この世の中では思わぬ力で生き方がねじふせられそうになったり…それは昔々の話ではなくて、今もあるんやなーと思いながら読む。

佐野洋子『クク氏の結婚、キキ夫人の幸福』朝日新聞出版
いま72歳だという佐野洋子が、おおかた20年前に書いた、すけべで嫌らしい物語。カバーや、本文に挿しはさまれるエッチングがいい。

三砂ちづる『コミットメントの力―人と人がかかわるとき』NTT出版
タイトルだけでは、実は何の本なのか分からない。最初のところに、これは「国際保健」という分野を紹介する本だと書いてある。といっても、「国際保健」とタイトルに入っていても、やはり何のことかあまり分からない。

三砂ちづるが、どのような視点をもち、どのような活動をしてきたか、その経験を綴った中には汲むべきところがたくさんあると思う。

印象に残ったのは、三砂がイギリスにいたときに経験した「医療費無料」ということ。それがどういうことかといえば、医療がほかの分野の介入を受けないことではないかと三砂はいう。

▼クリニックは具合が悪い人にサービスを提供するのであり、滞在許可を確認するところではないわけです。支払いということがないと、こういう対処で十分であることがわかります。そもそも保険証や書類が必要なのは、お金を払うことが前提とされているからです。
 
病人は名前と住所さえ言えば治療が受けられる、具合の悪い人の人権はそれだけで守られるというのが、医療が無料であることの本質なのだ、と思いました。そこの国にいるというだけで医療を保障するシステムだったのです。(p.166)

この話は、ベーシック・インカムの「無条件である」という特徴を思い出させる。お金があるから治療を受けられる、お金がないから具合が悪くてもがまんする、そんなことがおそろしいほど起こっているだろう日本で、医療費が無料だというような、そこにいるだけで生命が守られる仕組みは実現するだろうかと考えてしまう。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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