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読んだり、書いたり、編んだり 

大誘拐(天藤真)

映画「大誘拐」を最初に見たのはいつだったか、もうだいぶ前のことだが、(オモロイ映画やったなあ)という印象は強く残っていて、こないだ同居人がなにかで録画した「大誘拐」を見るというので、私も「見る!見る!」と珍しくテレビの前へ。手は編み物しながら見た。

和歌山の金持ちのばあさん(北林谷栄)が三人の小せがれどもに誘拐される話、というくらいはかろうじておぼえていたが、話の細かい筋やどんな役者が出ていたか、もうまったく忘れていた。登場人物の髪型や服装がなつかしすぎる。これはきっとバブルがはじける前の映画であろう、と、見終わってから調べたら、1991年作品だった。もう20年近く前である。あたりまえだが井狩本部長役の緒形拳が若い。風間トオルの怪しい関西弁もおかしい。

前に映画を見たときは原作があるなど全く気づかなかったが、これにはすごい原作小説があった。映画を見終わって、わー原作あるで、と図書館で借りてきた。先に同居人がすごい集中力で読み切ってしまい、私もつい読みはじめたら、イッキ読みしてしまった。

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉
(2000/07)
天藤 真

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私が読んだのは古い古い(1979年の)徳間ノベルスだが、一番新しい文庫は、創元推理文庫のこれらしい。
映画と原作小説(逆のノベライズもあるが)、どっちを先に?というのはなかなかビミョーである。映画と小説は別表現だ、という主張もわかるのだが、どっちを先にしてもビミョーである。

たいていは小説のほうが事細かに書かれていて、時にはものすごく大長編だったりして、全部を映像にするわけにはいかないから、どこかのエピソードを端折ったり、話の筋が映画の時間におさまるように変えてあったりする。しかも小説は字で書いてあって、多少の挿絵やカバー写真がついてることもあるが、基本的には読んでるこっちが、字を読みつつ「こんな人」や「こんな風景」を好き勝手に思い描いたりするわけである。

原作小説を先に読んでいる場合、あとで映画を見ると、私の場合は「端折った感」をおぼえることがどうしても多い。また、登場人物やそれが動く風景を字から勝手に思い描いているために、映像を見て「ちがーう」と思ってしまうこともある。その「ちがう」ところを楽しめればいいのだろうが、とくに原作小説が気に入っている場合は、「ちがーう」を見たくない気持ちになって、ついつい映画を見ずじまい…ということもある(ココロが狭い?)。

一方、映画を先に見ている場合(原作小説があることも知らなかった場合も)、あとから小説を読むと、困ったことに、登場人物が、映画の役者になってしゃべりだしてしまう。もちろん、おもしろかった映画を反芻するようなところもあるのだから、それでもいいといえばいいのだが、自分の「字から妄想力」に枠をはめられたような気になる。映画で端折られていたところを小説で読んだりすると、なんかちがう気がするが、映画の人がしゃべってしまう、という感じである。

「大誘拐」でも、小説を読むと、刀自はどうしても北林谷栄になってしまい、健次は風間トオルの下手くそな関西弁をしゃべるし、井狩本部長は緒形拳がうごいてしまうのだった。(先に読んだ同居人も同じ感想を言っていた。)

そういうビミョーさはあるのだが、やはり映画「大誘拐」は、このすごい小説「大誘拐」があってこそなんやなあと思った。イッキ読みしてしまうおもしろさがあった。

刀自は、長男、三男、長女を戦争で亡くしている。長男は北支で戦死、三男は特攻で戦死、長女は学徒動員されていた工場を爆撃されて死んだ。「お国」は自分にとって何やったんやという思いが、この「大誘拐」で三人の小せがれどもを手玉にとった刀自の動きの背景にあった。

身代金は百億。オカネって何やねんということも、ちょっと考える小説だった。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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