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『夏の力道山』+『愛情日誌』-「催花雨」(夏石鈴子)

確定申告のために、去年の領収書の山をひっくりかえして整理していたら、なるべく買わないように、本はほとんど図書館で…のつもりでいたが、それにしては本や雑誌をかなり買っていることが、領収書の枚数からわかってしまい、われながらおどろく。むかし、ほんまにアホみたいにばかすか本を買っていた頃に比べれば、かわいい額ではあるが。

そして、木曜の晩に、図書館が月末休館日なので本屋へ立ち寄ったら、夏石鈴子の新しい文庫が出ているのを見つけてしまい、しばし迷うが買ってしまった。

この文庫、棚から引き出して表紙を見て、え、これは「夏の力道山」やろ?なんで「愛情日誌」なん?は?と思った。

 これが文庫本     これが単行本   これが単行本
 『愛情日誌』      『夏の力道山』   『愛情日誌』
 愛情日誌 (角川文庫)  夏の力道山  愛情日誌
わけは「文庫あとがき」を読んでわかった。これは“『夏の力道山』『愛情日誌』-「催花雨」(『愛情日誌』収録だった短編)”で、つまりは五十嵐豊子の話でまとめてある。さらに「力道山」というのが、当節の若いもんには通じないかもしれないという憂慮から、絵は単行本の「力道山」を使うが、タイトルは「愛情日誌」でいこうとなったのだ。

私はこの五十嵐豊子の話がかなり好きで、しかも単行本でバラだったのが、文庫で合本になってるのだ。これは買いやろ、買い。

そして、14ページもある「文庫本あとがき」を読み、平田俊子(この人には『(お)もろい夫婦』という大変な詩集があるそうで、夏石鈴子がおすすめしている)の解説を読んでから、ひさしぶりの豊ちゃん小説をまた楽しく読んだ。

五十嵐豊子の夫・明彦には定収がない。『夏の力道山』を出したあとに、なんで豊子はこんな甲斐性なしの男と一緒にいるのか、なんで別れないのか、てなことをよく言われたとある。

▼まあ確かにお金がないと、人間は生きていけない。だから、人は働いているわけだけれど、この世には働いても、あまりお金にならない仕事もあるし、そんなにしょっちゅう仕事の順番が来ない職業だってある。

 作家だって、その手の仕事だ。俳優もイラストレーターも、そして映画監督だってそうではないですか? 自分は百パーセントやる気満々でも、外から声が掛からないと仕事にならない仕事もある。そういう仕事を職業にした人は、仕事が来ない時も平気で生きていく必要がある。この世の全てが会社員で構成されているわけではないのです。豊ちゃんは、夫に安定した収入がないことを、別に甲斐性なしだなんて思っていないみたいです。お金は自分で稼いでいるからいいらしい。この人は稼ぎが良くていいんじゃないの、と紹介されても、自分が嫌だな、と思ったら一緒に暮らしていくことは出来ない。きっと明彦と豊子にはどちらが稼ぎ手かということよりも、もっと大事なことがあるのではないかかな。そんなことも、いつかちゃんと書けるようになりたいです。(p.254、文庫あとがき)


この五十嵐豊子の小説には、ふたりの子どもを育てながら夫と暮らしているなかでの、楽しい気持ち、嫌な感じ、笑いや言い合いが書かれていて、それをじーっと豊子が考えたようなことも書いてある。読んでいると、うちに子どもがいるわけではないが、(なんかわかるなあ)と思うところがある。少しくたびれかけたエロい話もあり、稼ぐ豊子の姿もあり、いっしょに働くうえで困る人のことや、仕事に対する気構えのようなのも書いてある。人はお金のために働いている、でも、お金がそうまわってこない働きもある、日々の暮らしをまわしていくちょっとめんどうと思う仕事もある、ということがちゃんと書いてある。

そんなところが、夏石小説の好きなところ。

夏石鈴子の小説のことは、何度か紹介を書いている。さいきんだと、昨春の「乱読大魔王日記」(『We』159号)。その前は、いつだったかの「頭のフタを開けたりしめたり」(『ヒューマンライツ』)で『いらっしゃいませ』のことを書いた。昔自分が書いたのを読むと、こんなことを考えていたのかーと、別人を観察してるようで、なかなかおもしろい。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第68回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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