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私も戦争に行った(山内久)

同居人の里へ行ったときに半分まで読んだあと、刺突訓練の話になるところから読めずにいた。風邪も完治し、返却期限もあるので、心をしずめて読む。岩波ジュニア新書の一冊。

私も戦争に行った (岩波ジュニア新書 (351))私も戦争に行った
(2000/06)
山内 久

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1944年に、徴兵年齢が一年切り下げられ、外語学校でフランス文学をかじっていた著者も学徒動員された。兵隊にとられて待っていたのは、思った以上の地獄。

▼ともかく殴るのである。殴って殴って殴りまくって、恐怖以外の感情を若い鋭敏な肉体から叩き出し、その後の空白に、彼等好みの規律とか、大和魂とか、絶対服従の皇軍精神を叩き込もうというのか、まあ殴る。(p.6)

著者はこのあと、中国大陸へ送られる。山西省で兵隊として鍛えられていく。ある日の行軍で周の武王の巨大な石碑を見て、中学のときの国漢の教師を思い出したという。「シナは父、朝鮮は兄、日本は一番下の弟なんだ。戦争になったからって、バカにしたらいかんのだぞ」(p.68)

兵隊としての訓練の総仕上げとして、刺突訓練があった。追い立てられてきた中国人四人のうち、三人が木の十字架に縛りつけられ、その柱の前に引き据えられている老人を、教育隊長が軍刀で斬首した。

その後、「突撃イ!」「突けえ!」という上等兵たちの声に、数人が飛び出し、柱に縛られた中国人を突いた。「これでいいのか」「これでいいのか」と思っていた著者も、結局16番目に突いた。

▼はだけられた農民の胸板にクサビ型の黒い穴が五、六カ所あったのを思い出す。その下の腹の部分はすでにずたずたで、手打ちうどんの大笊からうどんをぶち撒けたように、真っ白な大腸が全部とび出していた。(p.116)

生きている人間を突くのはいやなものだから、どうしても目をそむけてしまう、そのときに剣先が下がって、心臓を狙った剣が腹に入ってしまうのだ、と古年兵の話として書いてある。

著者にとって、この刺突体験は重い。1971年にベトナムへ行くチャンスがあったとき、宴会の挨拶の中で、この中国での刺突体験について話したことが書かれている。ベトナム戦争時のことである。

▼…あの刺突以来、私の心の中には一つの黒い点ができて、消えなくなっていること、強い権力に強制されれば人間は何でもしてしまう。結局人間は弱くて、臆病で、卑怯な存在なのだという思いがどうしても脱けないこと、こういう考え方はいけない、スポンと人間を信じなくてはいけないと思うのだが、いくらそう努めても強がりは強がりにしか過ぎず、その黒い点の中に吸収されて行ってしまう、しかし、この国へ来て、この国を見たことで、随分その黒い点が小さくなった、そのことに深くお礼を言って挨拶に代えたいと、頭を下げて座った。(p.213)

とにかく殴られた、気を失うほどに乱打、乱打、乱打という話と、この刺突訓練の話と、そして著者が中国へやられたあと東京大空襲をかろうじて生きのびた家族の話と、「こんな話をなぜクドクドするかっていうと、戦争の体験談を話せる人がどんどん減ってきてしまっているからです」という著者の言葉に、体験談を話せる人がなくなったら、私たちはどうやってそれを引き継いでいけるんやろと思う。

「結局、貧困と辛苦労働をなくさなければ、戦争は無くならないってことですね」(p.204)と著者は言う。

▼…今だって農作業は辛いけれども当時は三倍もきつかった。隙があったら他国隣国へ攻め込んでガバチョと儲けたい、楽になりたいという魂胆はどこの国にもあって、有史以来それでやってきた。(p.204)

読むのが苦しい本だったが、読んで、よかったと思った。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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