FC2ブログ
 
読んだり、書いたり、編んだり 

死刑(森達也)

光市事件の被害者遺族・本村さんが加わった鼎談集でも、それから藤井誠二と森達也の対談集でも、この本のことがたしか出てきた(これを読んで、死刑廃止派から存置派になった人もいる、という話がどちらかで出てきたのだったと思う)。それで借りてきて読んでみた。

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う死刑
人は人を殺せる。
でも人は、人を救いたいとも思う。

(2008/01/10)
森達也
商品詳細を見る
がきデカTHE BEST 1プロローグは、フセインの処刑映像の話、そして「がきデカ」のこまわり君の話と続く。「死刑」と聞いて連想するものは人それぞれだと思うが、私が思い浮かべた一つは、こまわり君の「死刑!」だった。他の登場人物もどんな話やったかも全くおぼえてないのに、「死刑!」というセリフとこまわり君のポーズだけはおぼえている。私もたぶん「死刑!」とポーズをきめたことがあるはずだ。

あのこまわり君の「死刑!」は、ごく軽いツッコミのようなものだった気がするが、「死刑」について私が知っていたのは「悪いことをしたら死刑」というくらいのことだったように思う。

森のこの本は、あたう限り「死刑」を直視して、そのうえで「死刑」について考えたいというもの。死刑執行に立ちあったことのある刑務官や死刑まぎわの死刑囚に会ったことのある教誨師、死刑囚として30年を獄中ですごした後に再審で無罪となり生還した免田栄さん、そして被害者遺族などに会い、話を聞いた内容が書かれている。

死刑執行に立ちあった人の話も凄いものだが、免田栄さんの話も凄い。どんな本を読んでも、死刑囚の生活や死刑制度については、あまりわからない。死刑確定後の面会はほぼできず、通信も制限され、刑場を見たりすることもまずできない。

その免田さんの『獄中ノート』によると(これもこんど読んでみようと思う)、今わずかながらも知ることができる「死刑」と、相当違う。

免田さんが獄中にいた当時は、執行言い渡しは数日前で、親族との最後の面会や他の死刑囚への挨拶もできた(今は執行当日の朝に言い渡され、数時間後に執行)。死刑囚は集団処遇で、免田さんの再審決定の際には、房の死刑囚みんなで胴上げをしてくれた(今は死刑囚どうしで会話するだけで懲罰)。外部との面会や手紙のやりとりも認められており、西鉄ライオンズの稲尾選手と豊田選手が慰問にきて、死刑囚チームと野球をやったこともある(今は「心情の安定」を理由に面会も手紙もほとんど認められていない)。

免田さんが、刑務所を出た人が再び帰ってくることの多さをこう語っている。
▼…なぜ帰ってきたか。仕事がない。冷たくされる。だから出所したらすぐに、無銭飲食とか、タワシ一個を盗んだりして、その足で警察に自首する。前科があれば二年になる。その二年間、刑務所でただ飯を食う。その繰り返しです。この社会は、悪いことをした奴だ、刑務所に入れろ、罰を与えろ、…それしかないでしょうが。人権だ民主主義だって言いながら、刑務所を出た人の扱いや権利にはまったく関心がない。いったん刑務所に入ったなら、一生差別されるでしょうが。私だっていまだに郷里に帰れない。(pp.179-180)

無罪が確定した免田さんが郷里に帰れないことにも衝撃を受けた。

前に山本譲司の『獄窓記』『累犯障害者』を読んだときに、刑務所の中がいちばん暮らしやすいと語る受刑者が出てきたことを思い出す。

こんど12月に、原田正治さんや免田栄さんも来られるシンポジウム「“いのち”と刑事司法~裁判員制度と死刑~」があるので、ぜひ行きたいと思っている。
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/1176-a933f20c
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第67回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ