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“いい人生やった”その一言のために(診療所医師・中村伸一)

ふだんあまりテレビを見ないが、昨晩はたまたま護衛艦の衝突事故があったというので、ニュースをつけ、他のチャンネルがコマーシャルだったので、あの男のキャスターが嫌いで(あの口調と時折はさむコメントが嫌い)最近はほとんどつけないNHKの9時のニュースを見ていた。

昨日預かってきた毛糸(昨シーズン、じゃあ次のシーズンに編むわと一つ約束していた)を、ちょっと編み始めてみたら、これがたいへん編みやすくてきもちよく、あああ、キモチいい~と手を動かしながら見ていたニュースが終わり、10分遅れで「プロフェッショナル 仕事の流儀」が始まった。

テレビを消して本を読もうかと思っていたが、編む手がきもちよくて、ついついテレビの前で手を動かしていたら、福井の山村でたった一人の医師として"現代の赤ひげ"ばりに診療所長をつとめるお医者さんの話で、「病ではなく、人を診る」に心をつかまれ、そのまま手は毛糸を編みながら、「“いい人生やった”その一言のために」をさいごまで見た。

診療所の所長をつとめる医師、中村伸一。45歳。
幼い頃はからだが弱かった中村は、よく医者にかかっていたそうだ。そのうち(自分も医者に)と思うようになり、自治医科大学へすすむ。憧れは、難手術をこなす外科医。

自治医科大は僻地や地域の医療をよくするためにとつくられた大学で、卒業後には出身地や僻地の医療に従事する義務がある。中村もそれで、福井の名田庄にきた。ただ、義務年限をこえてなお地域医療に貢献する者はそう多くないという。中村も、数年後には総合病院へもどり、外科医として活躍…と思っていた。

福井の名田庄は、人口3000人たらずの村(今は合併しておおい町)。地域でただ一つの診療所の、たった一人の医師として赴任した中村が、この村でやっていくと決めたきっかけは、ある患者のくも膜下出血を見逃したこと。長距離運転後に酒を飲んだら肩が痛いときき、肩こりだろうと思った。激しい頭痛という典型的な症状であれば中村も見逃さなかっただろう。その夜、患者は具合が悪くなり、総合病院に救急搬送した。

患者は一命をとりとめたが、中村は村へ帰るクルマの中でひたすら患者の家族にわびた。医者を辞めようかとも思った。そのとき、患者の家族からこう言われたのだという。

「誰にでもある お互い様だ」

この一言が中村に名田庄で生きる決心をさせたという。

村の診療所で医師をつとめるとはどういうことか。それは村の人たちの人生に寄り添った医療をしていくことだと中村は言う。スタジオで、一方の手の人さし指を立て、その脇にもう一方の手の人さし指を立てて、中村は並べた指を動かした。

「病ではなく、人を診る」

とは、そういうことだ。

だから、単に膝が痛いという「病」だけ見れば禁止して当たり前のグランドゴルフも、交通事故で夫を亡くしたあとに地域の仲間とのグランドゴルフで立ち直ってきたというその人のことまで知っているから、正座はやめておくように言っても、グランドゴルフは痛み止めを打って続けられるようにする。

手書きで書き込める電子カルテも印象深かった。メーカーと中村が一緒に開発したものだと紹介されていた。電子端末に、手書きで書き込んでいける。自分の手書きだと、あとから見たときに、どこに力を入れて書いたかがわかる。その人の趣味や、読んでいる本や、家族のことなども中村はどんどん書き込んでいく。

名田庄では、病院ではなく、家で亡くなる人が多い。最期まで家で過ごしたいという希望も強いという。全国平均の3倍という「自宅での最期」を支えるために、中村は訪問診療だけでなく、介護や保健のスタッフとともに患者や家族の暮らしを支えていけるかたちをつくってきた。

ガンで亡くなった患者が、家で介護を続けてきた妻にのこしたことば。

「最期まで家にいられて幸せな人生やった。お前も中村先生にみとられて、村で死ねよ」

今月初めに見た映画「いのちの作法」でも、数年で大学病院に帰るつもりが、そのまま沢内村にのこったというお医者さんが出てきたが、たぶん、この名田庄の中村のような人なのだろうなあと思う。沢内も人口3000人ほどの村だった。そういう村の大きさ、顔と顔がわかる関係がつくれる大きさがあるのかもしれないと思う。

「名田庄診療所所長 中村伸一のブログ」
「“いい人生やった”その一言のために」(プロフェッショナル 仕事の流儀)
生命を支える「点」と「線」(茂木健一郎)
Genre : 日記 日記
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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