FC2ブログ
 
読んだり、書いたり、編んだり 

きのうと同じに見えるけど(夏石鈴子)

こないだ、あの本は筑摩やったっけとネットの本屋で引いたときに、夏石鈴子のこの本が出てるのを発見。すぐ図書館の在庫をみたら、書架ありやったので、ぽちっと予約して、ウキウキと待っていた。

きのうと同じに見えるけどきのうと同じに見えるけど
(2009/06/11)
夏石 鈴子

商品詳細を見る

これは、あの『今日もやっぱり処女でした』の、山口あおばの話の続きなのだ。
続きなのはいいが、前の話はどんなんやったっけ…と思いながら読みはじめたら、うまいぐあいに山口あおばがどんな子やったか、どんな生活をしているか、前のを思いだせるようになっていて、ああ、そうそう、イラストレーターになりたくて、正社員をやめて、時間の融通のきく派遣社員になって、そんでイラスト塾に通ってるんやったなあ、お父ちゃんは「一年」と言って家出して、お母ちゃんは「もう朝ご飯をつくるのがいやになった」と言ってあおばが朝ご飯をつくることになって、派遣先の同僚さんがむかしはずんどこルミちゃんという名前のAV女優だったなーとか、だんだん思いだしながら読めるのだった。

同じイラスト塾に通う緑川さんの言動に、「気味が悪い」と思うようになって、でもそのことを緑川さん本人には言えないと思って、派遣の同僚・福貴子さんにあおばが相談するところ。
この福貴子さんの話がいい。

▼「どこら辺が?」
 福貴子さんは、面白そうに、そして意地悪く笑って言う。
 「気味が悪いです」
 「じゃあ、本人にそう言ったら? 言わないと伝わらないじゃない」
 そう言えないから困っているのだ。
 「みんなこういう時って、『それが言えたら苦労はしない』って必ず言うんだけど」
 私が今、心で思ったことをそのまま福貴子さんは言った。
 「わたしにしてみれば、嫌なことは嫌だってなぜはっきり言わないのかわからない。それが、一番大事なことでしょう? 言えないんじゃなくて、そういうことを言う練習もこれまでしたことがないから、自分が言えるかどうかわからないだけなんじゃないの? わたしは別に、この緑川さんに『立ち向かえ』って言っているわけではなくて、ただ『逃げなければいいのに』って言っているだけ。立ち向かうことと、逃げないって別のことでしょ。やらないで欲しいことを相手に伝えて、もし余裕があれば相手の言うことを聞いてみたらいいのに。もし、それで、相手が全然言葉の通じない特別な何かだってわかったら、初めてその人から逃げたら? 今は別に、あおばさんの住所がわかってしまったわけでもないし、その人のことを切ろうとしたら、いくらでも切れる。だから、嫌な思いも少しはするかもしれないけれど、そんなにこわがらなくてもいいんじゃないかと、わたしは思うけれど」
 「そうでしょうか」
 「そうよ。一度自分で、こんなこと、ちっともこわくないって、決めちゃうの。そして、全身でそれを信じちゃうの。たぶん、あおばさんは今までそんなことをしたことがないかもしれないけれど、度胸を出してやってみて。こわくなくなるから。そう思ってみるとね、実はあんまりこわいことってないものよ」(pp.122-123)

そういうことを言う練習もこれまでしたことがないから、自分が言えるかどうかわからないだけなんじゃないの?

そんな気もするのだった。
なんで「言えたら苦労はしない」と思っているのか。「言えない」と思ってしまう気持ちは、どこが最初なのか。その最初のところで、「こんなこと、ちっともこわくない」と自分で決めてしまえばいいんだろうか。

『ひげおば』の妻、中畝治子さんが、「たすけて」って言う練習が必要という話をしていた。

あおばが、周りの人の言動にびっくりしたり、そういう考えもあるのかと思ったり、それはいいなと思ったり、え、そうなんですかと相手に訊いてみたくなったり、そういうのがことこまかに表現されていて、その、あおばがびっくりしたり、いろいろ思ったり、考えたりするところが、おもしろい。

こころ、とか、きもち、というものが取り出せるとしたら、それを手のひらにのせて、じっと眺めているような、そんなおもしろさがある。

しかも、最後のページに「つづきは3巻で」と書いてあるのだ。

続きがある
うひょー楽しみ。
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/1088-74da1df4
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ