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読んだり、書いたり、編んだり 

うつつ・うつら(赤染晶子)

まったく知らなかった作家。こないだ、おはなしする機会のあった別の作家さんから「おもろしろいですよー」と聞いて、さっそく読んでみる。

うつつ・うつらうつつ・うつら
(2007/05)
赤染 晶子

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この本に入っている「初子さん」で文學界新人賞をとった人だそうだ。本になっているのは今のところこれ一冊だが、『群像』などに小説が数編あるらしい。

その「初子さん」。
あんパンとクリームパンしか売っていないパン屋に下宿している洋裁職人である。

読んでいると、だいぶ前に、これも人におしえられて読んだ栗田有起の『お縫い子テルミー』を思い出す。(栗田有起の本のことは、おととしの『ヒューマンライツ』で書いたなー)

「初子さん」は、関西弁の「お縫い子テルミー」のようで、関西弁のおかげか、パン屋一家や商店街の設定のためか、トイレに積もる埃の描写の具体性ゆえか、初子さんの声まで心に浮かぶようだった。

初子さんは、こんな風だ。
▼洋裁を始めるとすぐに、その世界に没頭した。仕立屋の教えたこと、仕立屋で見たことがその場にもう一度いるように頭の中に蘇ってきた。型紙を作る度、布に印を打つ度、あらゆる段階すぐにコツを飲み込んだ。「ああそうか」、漠然とした理解が実際にやってみる度に指から体に入っていった。何より嬉しくて嬉しくて仕方ない。一枚の布が形になるためのあらゆる手間、全ての作業が楽しい。仕立屋は言った。ポケットと身ごろの柄は合わせなければならない。前身ごろの柄もボタンを留めた時にひとつの柄になるように。生地の上に型紙を置く時、裁断する時に、絵が洋服に残るように。限られた布を使う時に、それが一番難しい。(p.28)

生地の正しい場所に印を打って裁ち、その印が正しかったとわかるときのよろこび。
『お縫い子テルミー』もまた読みたくなってきた。


表題作の「うつつ・うつら」は、フシギ炸裂。
客もほとんどいないような劇場で、スカウトされることを夢にみて漫談を続ける「マドモアゼル鶴子」。いつかスカウトされて、映画館の美人女優になるのだ。「早乙女紅子」という芸名も考えてあるのだ。
しかし、この小説は鶴子が主人公なのか?それもわからなくなってくる、フシギな話。

雑誌のバックナンバーを探して、他の小説もちょっと読んでみたい。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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