読んだり、書いたり、編んだり 

1月に読みおわった本

1月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。ふだんは郵便を出しても、メールで返事が来ることが多いが、年賀状というのは、わりと郵便で返事がくるものである。この正月はとにかく寒かった。大阪も一時は吹雪であった。

深沢七郎の「これがおいらの祖国だナ日記」を探していたところ、「ブックマーク」読者の方が職場の図書館に所蔵のあった古い掲載誌(『群像』)のコピーを送ってくださって、読むことができた。

阪神大震災の発災から20年。大阪の箕面であの地震を経験した小松左京の記録を読み、当時私が住んでいた吹田と地理的にも近いせいか、いろいろと思い出すことがあった。小松は記録を残すことの大切さを訴え、被災した市民、企業、行政に記録を残そうと呼びかけた。

地震計の記録によると、あの激しい揺れは10秒間のことだったという。小松自身、少なくとも20秒くらいは揺れが続いたと感じたそうだが、私もきもちわるいほど長く揺れたと記憶していた。記憶をたしかめながら、記録を読んでみたいと思った。

殺人出産(村田沙耶香)

殺人出産殺人出産
(2014/07/16)
村田沙耶香

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『変愛小説集 日本作家編』に収録されていたこの人の「トリプル」がおもしろかったので、なにやら怖ろしげなタイトルながら借りてみたが… 表題作はちょっと怖かった。

未来の、「今」とは価値観が変わった世界を描き、ひるがえって「今」信じているものや、「今」アタリマエのことは、ほんまにそうなのか?と問いかける。そんな作品が4つ。

表題作「殺人出産」は、「10人産んだら一人殺してもいい」という殺人出産システムが海外から導入された100年後の世界を描く。その未来の世界でも殺人はいけないこととされているが、殺人の意味は大きく変わっている。たとえば、学校で教師はこう語る。「命を奪うものが、命を造る役目を担う。まるで古代からそうであったかのように、その仕組みは私たちの世界に溶け込んでいったのだ」(pp.12-13)と。

やかまし村の春・夏・秋・冬(アストリッド・リンドグレーン)

やかまし村の春・夏・秋・冬やかまし村の春・夏・秋・冬
(2005/12/16)
アストリッド・リンドグレーン

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年明けに"お年玉本"をどうしようかな~と思いながら、読んでみた。リンドグレーンというと、ピッピくらいしか読んでない。読み終わってから気づいたが、シリーズ3冊のうち、これは真ん中の巻で、先に『やかまし村の子どもたち』、あとに『やかまし村はいつもにぎやか』があるらしい。もちろん単独でも読めるけど、他の2冊もまた読んでみたい。

読みはじめた最初は、ラッセ、ボッセ、わたし(リーサ)、オッレ、ブリッタ、アンナ…と出てくる子どもの名前がごっちゃになって、これはどこの誰やったっけ…と最初に戻ったりしたが、だんだん馴染んできた。

スウェーデンの「やかまし村」の6人の子どもたちの日々。6人…というと、学年ごとに出入りはあったけど、学童保育に通うさいごの学年、小3のときに一緒だった「6人」を思い出す。はっきりとは書かれていないが、やかまし村の子どもたちはそれくらいの年頃だろう。

部長と池袋(姫野カオルコ)

部長と池袋部長と池袋
(2015/01/08)
姫野カオルコ

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同居人が宴会のビンゴでもらったという商品券を「おみやげ」と言ってぴらっと一枚くれたので、これ本屋で使える~!と、翌日さっそく本屋をうろうろ。かなりうろうろした挙げ句、「蔵出し」「文庫オリジナル」の帯にそそられて、この姫野カオルコの文庫本を購入。

後ろの「あとがき」をチラと読んだら、短編なので、ちょっとした時間にひとつ、空き時間にまたひとつ…という具合にゆっくり読め、決して速読みするなと指南があったので、ふだんならドドドッとイッキ読みしがちなところ、1つ読んではお茶を飲み、電車のなかで1つ読み、風呂につかって1つ読み、寝る前に1つ読み…と、ちゃんと「間」を空けながら、ゆっくりゆっくり10日かけて読み終える。

そもそもこの文庫は、読後感がかなり違うということで「PART1」と「PART2」の二部に分けた構成になっており、姫野が「二冊分を一冊の価格で買えます」と書いていたとおり、たしかに違う二冊を読んだようだった。

水平記 松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年(髙山文彦)

水平記 松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年水平記
松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年

(2005/05/28)
高山文彦

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髙山文彦の『どん底 部落差別自作自演事件』を読んだ時に、髙山が解放運動の詳しい歴史を書いた本があると知って図書館で借りてきた。これが700ページもあるごっつい本で、あのピケティ本(600ページある)よりも厚いのだった。

分厚くて重いので、ウチで机に広げて1週間ほどかかって読み終える。えらいごっつい本なのだが、もういっぺん読みなおそうかと思うくらい、あれこれと興味をひかれた。サブタイトルにあるように、これは松本治一郎の伝記であり、解放運動の歴史でもある。

時代として仕方のないことだろうが、解放運動やってたのは男ばっかりかーと思うくらい、男性陣の話ばかりである。松本治一郎は、明治20年(1887年)にうまれ、昭和41年(1966年)に亡くなっている。解放運動のなかで女性が記録されはじめるのは、治一郎時代の後なのかもしれない。

治一郎が「部落解放の父」と呼ばれていることは私も知っていた。参議院副議長になったときに天皇拝謁の儀礼を拒否した"カニの横ばい拒否事件"のことも何かで読んだことがある。この伝記を読むと、実際にでっかい身体の人だったというが、心の上でもスケールの大きい人だったことが感じられる。自分は粗末な家に住み、ぜいたくをせず、"松本組"で稼いだ金を、解放運動につぎこんだだけでなく、炊き出しや奨学資金のかたちで社会に注ぎ続けた。

その治一郎(幼名は次一郎)が、父の次吉から教えられたことが冒頭に記されている。宮本常一がその父から教えられた言葉を思い出させるものがある。※

私は障害者向けのデリヘル嬢(大森みゆき)

私は障害者向けのデリヘル嬢(大森みゆき)私は障害者向けのデリヘル嬢
(2005/12)
大森みゆき

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男女共同参画センターの図書室へ予約本を取りにいったとき、新着コーナーにあったこの本が気になって、読んでみる。2005年刊の本だが、新着というのは最近購入したかららしい。2013年に8刷という本だった。

最初のところを読んだら、この著者の経験が、まるであの本の人みたい… 前に読んだ『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』の著者を思い出すようだった。

著者の大森みゆきさん(仮名)は、社会人1年目は契約社員、業績悪化で更新がなく、次に勤めたデザイン事務所ではクレーム対応でえらい目にあってウツになり、そこから必死の思いで転職した先が倒産してしまう。当時の状態を振り返って、こう書いている。

▼精神的にまだ完璧に元の状態とはいえない中、精一杯の力を振り絞ってした転職が、あっけなく終わった。前職からのショックと、今度は会社倒産のショック。
 逃げるように辞めたデザイン事務所は社会保険に加入していない小さな会社だった。そして、倒産した会社に勤めたのは4ヵ月。社会保険に加入している期間が半年に満たない私は失業保険がもらえなかった。
 すぐにでも働かないといけない。しかし、「じゃあ次を探そう、夢をつなげよう」というパワーが私には残っていなかった。どんなに眠っても抜け切れない精神的な疲れで、先を考えることもつらかった。(pp.23-24)

神戸在住 1~10(木村紺)

神戸在住(1) (アフタヌーンKC) 神戸在住(2) (アフタヌーンKC) 神戸在住(3) (アフタヌーンKC) 神戸在住(4) (アフタヌーンKC) 神戸在住(5) (アフタヌーンKC)
神戸在住(6) (アフタヌーンKC) 神戸在住(7) (アフタヌーンKC) 神戸在住(8) (アフタヌーンKC) 神戸在住(9) (アフタヌーンKC) 神戸在住(10) <完> (アフタヌーンKC)

阪神大震災から20年が経つ。「20年かぁ」と思う。20年て、これくらいの距離感かぁと思う。同居人は自分が生まれる20年前のニュースを検索していた。

1月17日の晩には、神戸の地元局・サンテレビが制作した「神戸在住」のドラマ放映があった。ふだんはテレビをほとんど全く見ないが、事前に放映情報を入手していたし(劇場版の映画もあって、こちらのチラシも入手していた)、木村紺の原作マンガを同居人が読みこんでいることもあって、録画して、続けて2度見た。
http://www.sun-tv.co.jp/kobe-zaiju

原作マンガは震災後に神戸へ越してきた大学生を主人公に、周囲の関西人の震災話もところどころに出てくる話だが、ドラマは、震災後に生まれた「今の大学生」が主人公になっていた。

一九六一年冬 「風流夢譚」事件(京谷秀夫)

一九六一年冬 「風流夢譚」事件一九六一年冬 「風流夢譚」事件
(1996/08)
京谷秀夫

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深沢七郎の「風流夢譚」は、私が読んでみたいと言っていたら、本読みの友が古い古い掲載誌(『中央公論』)のコピーを持っていて(!)、それを送ってもらって読むことができた。

その前に図書館で「風流夢譚」を読みたいと尋ねたら、これに載ってるかどうか見てみてくださいと言われ、予約して借りたのがこの『一九六一年冬 「風流夢譚」事件』だった。「風流夢譚」の小説そのものが再録されているわけではなかったけれど、この本の著者は当時『中央公論』の編集次長をしていた人で、読みはじめたらそのまま読んでしまった。

『中央公論』の内側にいた人が、いろいろと資料や自分のメモを元に書いていて、『深沢七郎ライブ』でも、矢崎泰久が「風流夢譚」事件のことを少し書いていたが、立場が違うと見えるものが違うなーと思った。

1960年の『中央公論』12月号(発売は11月10日)に掲載された「風流夢譚」に対し、右翼団体が深沢七郎や掲載した中央公論社に抗議を続け、ついには1961年の2月1日に、中央公論社長の嶋中鵬二宅を右翼少年が襲うという殺傷テロ事件となった。

憲法の創造力(木村草太)

憲法の創造力憲法の創造力
(2013/04/06)
木村草太

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「一票の格差」について書いてある比較的新しい本を読みたいと図書館でレファレンスを頼んだら、出てきた本のひとつ。「一票の格差」のことは、この本の二章で「一人一票だとどんな良いことがあるのか?―クイズミリオネアとアシモフのロボット」として取り上げられている。

他の章もついでに全部読んでみる。

この著者は、憲法を論じる際の「思い込み」はアブナイとして、ソウゾウ力を掲げる。
▼危険な「思い込み」の対極にある概念が、「想像力」である。教員に命令拒否権を保障したとき、学校では何が起きるだろうか。東京都の選出議員を30にして、島根県の選出議員数を1にとどめたら、より優れた国会議員を選べるようになるだろうか。日本政府が現時点で完全な非武装を選択したら、国際秩序はどうなるのか。生活保護の給付額が国民年金よりも低かったら、生活保護受給者は生活を営めるだろうか。
 無意識の前提を検証し、想像力を働かせることで、我々は思い込みから解放され、深い思考ができる。実りのある憲法論のためには、何より想像力が重要である。(pp.5-6)

地図とスイッチ(朝倉かすみ)

地図とスイッチ地図とスイッチ
(2014/11/07)
朝倉かすみ

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同年同月同日に同じ病院でうまれた「2人」の人生がそれぞれ描かれていく話。各章の冒頭に、その章で出てくる「年」に何があったかの概略と、その「年」の紅白歌合戦で誰が司会で、トップバッターが誰で、トリが誰だったかという細かい情報が書いてあり、ちょろっと紅白ネタが出てくる箇所はあるにしても、どの章の冒頭でも律儀に紅白情報が掲載されているのがちょっとおかしかった。

主人公の「2人」は、1972年うまれという設定。わりと歳が近いので、それぞれの「年」を経験した歳も似てるところがあって、でもその中で、こんな人生もあんな人生もあるんやなーと思いながら読んだ。

「ぼく」=蒲生栄人(がもう・えいと)は、東京育ち。「おれ」=仁村拓郎(にむら・たくろう)は、札幌育ち。同じ札幌の病院で生まれたのは、栄人の母が里帰り出産をしたからだった。母同士は、小学校、中学校の同級生だった。といっても、さして親しかったわけではなく、「ぼく」の人生と「おれ」の人生がそれぞれ違っているように、その母の人生もまた違うのだった。

レッツゴー・ばーさん!(平 安寿子)

レッツゴー・ばーさん!レッツゴー・ばーさん!
(2014/12/08)
平 安寿子

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タイラアスコの新しい本が出てたので、図書館でちょっと待って借りてくる。いま売れ売れのピケティ本『21世紀の資本』と同じ12月8日刊だが、図書館でまわってきたのは1刷(12月に出た本はフツーそうでしょう)、同居人が買い求めてきたピケティ本は12月22日に4刷だった(600ページもある重い本が異様な売れゆき)。

▼老いを隠そうとするのは、そこまで生きてきた自分の人生をまるごと否定するのと同じじゃない?
 そんなの、わたしはヤだね。
 というのが、六十代デビューしたばかりの東西文子[とうざいあやこ]、目下のスタンスである。(p.8)

ばーさんになっていくと、身体気力その他もろもろにいかなる変化(=老化)が起こるものであるか?ということを、60代に入ったばかりのプレばーさんである文子を主人公に、小説仕立てで書いている。文子が、少しばかり年上の先達のご様子を伺いつつ、ばーさんになっていくわが心身を省みて、あーだこーだと思案し、周囲の同年代の友などと語らうところが、私にはベンキョウになる。まだ身に迫っていないからだろう。

文子の「身体の声」は正直で、アタマのほうがぐじゃぐじゃ考えてるのをすっとばして、わが身を訴える。

変愛小説集 日本作家編(岸本佐知子編/川上弘美、多和田葉子、本谷有希子、村田沙耶香、 吉田知子、深堀骨、木下古栗、 安藤桃子、吉田篤弘、小池昌代、星野 智幸、津島佑子)

変愛小説集 日本作家編変愛小説集 日本作家編
(2014/09/05)
岸本佐知子編/
川上弘美、多和田葉子、本谷有希子、村田沙耶香、 吉田知子、深堀骨、木下古栗、 安藤桃子、吉田篤弘、小池昌代、星野 智幸、津島佑子
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たしか、図書館で検索したときに、このずらずら並ぶ著者の誰かの名前が引っかかったのだと思うが、誰の名前を検索したのだったか、読み終わってみると全く思い出せない。

編者の岸本佐知子は翻訳家でもあるが、『ねにもつタイプ』とか『気になる部分』という変なエッセイも書いている。このエッセイ類で私はかなり笑ったおぼえがある。お花畑の河童が…

その変なエッセイを書く岸本佐知子が、あるとき、翻訳アンソロジー『変愛小説集』を編んだ。「恋」ではなくて「変」である。「偏」ではなくて「変」である。誤字ではない。

カバー装画は、MARUUさんという人。(遠目には、色使いと雰囲気で、勝手に山本容子かと思っていたら違った。) 「変」によく合っている。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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