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読んだり、書いたり、編んだり 

近所の犬(姫野カオルコ)

近所の犬近所の犬
(2014/09/18)
姫野カオルコ

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「はじめに」で著者は、「自伝的要素の強い小説」と「私小説」の違いを、事実の占める度合いとカメラ(視点)の位置によるものと述べている。

▼「私小説」のほうが、事実度が大きく、カメラ位置も語り手の目に固定されている。よって読み手にすれば、「私小説」は随筆[エッセイ]を読むスタンスでページを進めてゆける。(p.9)

この『近所の犬』は、こう書いている「はじめに」も含めて「私小説」である、という。この小説は、著者の借飼[しゃくし]、つまりは自分では飼うことのできない犬や猫を見て、飼い主の了解を得て触わって…という話をあれこれ書いたようなものだった。エッセイのようだと言えばそうも言える。

私はところどころで、ぐっはっはと笑いながら読んだ。とくに、直木賞をとったあとの話はおもしろかった。

章の扉には、その章で主に語られる犬(もしくは猫)と同種の犬のイラストが入っていて、その犬(もしくは猫)の名が書かれている。黒ラブラドール・レトリバーが描かれた章は、「うニ」

「う」がひらがなで、「ニ」がカタカナとは、変わった名の犬よのう~と思ったら、それは「ラニ」だった。(同居人に扉を示して、どう読めるか尋ねてみたら、私と同じく「うニ」と言うのだった。)

ヤマトタケル(山岸凉子)

ヤマトタケルヤマトタケル
(2011/02/19)
山岸凉子

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本読みの友より、あれこれ届いた荷物のなかに、読みおわったからあげると入っていたマンガ。初出は1986~87年の「ASUKA」で、この本は"山岸凉子スペシャルセレクション"として去年出たもの。表題作は梅原猛の原作だという(これか? 『ヤマトタケル』)。

父である天皇[すめらみこと]の命により、熊襲討伐にゆき、あっという間に平らげてしまった小碓命[おうすのみこと]は、人々にヤマトタケルと呼ばれるようになった。タケルとは一番強い男に奉られる名で、大和朝廷の皇子ゆえに、ヤマトタケル。

熊襲を討った武勇をもって、次は蝦夷へ向かって北方蛮族を大和朝に与[くみ]するよう働いてもらいたいとのおおせを受けたタケルは、伊勢の神刀、叢雲[むらくも]の剣[つるぎ]で相模の国の蝦夷を平らげた(この剣が、のちに「草薙の剣」と呼ばれる:三種の神器のひとつ)。

蝦夷の民を討ったのち、蝦夷の頭・ヤイレポとヤイレムのきょうだいから投げられた言葉を、タケルが反芻する場面。蛮族はどちらなのかと思う。
▼我々の国へ勝手に押し入り
 それを蛮人といわずなんといおう
 この日の本の国はもともと我々の国なのだ
 後ろから… これがおまえ達 大和の蛮族のやり方だ(p.187)

日本国憲法 大阪おばちゃん語訳(谷口真由美)

日本国憲法 大阪おばちゃん語訳日本国憲法
大阪おばちゃん語訳

(2014/12/05)
谷口真由美

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"お年玉本"の一つとして選び、渡す前に自分が読む作戦で、カバーをかけて、あまりページを広げないようにして読む。

「大阪弁でしゃべるおばちゃんが憲法について井戸端会議でしゃべったらどないなるか?」(p.10)というコンセプトでできた本で、多少ムリを感じるところもあるが(大阪弁を書きことばにするのは結構むずかしいはず)、憲法条文の「おばちゃん語訳」は、小難しさが減った平たい表現になっている。

たとえば、19条の「思想及び良心の自由」は、おばちゃん語訳ではこうなる。
▼どんな考えもってても、どんなモン信じてても、それをとやかく言われる筋合いはありまへん。(p.63)

21条の「集会・結社・表現の自由、通信の秘密」だと、こうだ。
▼1 いろんな人と集まったり、グループ作ったり、しゃべったり、本だしたり、すべての表現の自由は保障しまっせ。 2 事前に国家とか権力が人の書いたモンをチェックしたらあきまへん。ひとさまとのやりとりも秘密やねんで。(pp.69-70)

こんな具合で条文を「おばちゃん語訳」しながら、「ここポイントやで!」と解説が続く。

新しいおとな(石井桃子)

新しいおとな新しいおとな
(2014/03/18)
石井桃子

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年明け恒例の"お年玉本"の候補で、ちょっと図書館で借りて読んでみた。タイトルからして、もしかして思春期間近の小5にいいかな…と思ったけど、どっちかというと文庫活動をやってるような大人向けだった。

石井桃子が亡くなってから、単行本に入っていなかった文章を編んだ本が数冊出てるらしく、こないだ本屋で『においのカゴ』という創作集を見かけた。同じ河出が出した他のタイトルを調べて、『新しいおとな』がちょっといいような気がしたのだった。

巻末の初出一覧をみると、古いものは1941年の文章で、1950~60年代の文章もかなり多く、紹介されている本の値段も"「熊のプーさん」岩波書店 1円20銭"とか、"中勘助「銀の匙」岩波文庫(80円)"とか、当時の値段のままなのがおもしろい。「熊のプーさん」(この「熊」と漢字で書いた古い本は、児童文学館所蔵のものを歴博の展示で見たことがある)が1円20銭だった頃、その値段でどんなものがほかに買えただろうと考える。

子どもや読書をめぐる文章が収められている中で、「働く年少者の作文をよんで」が印象深かった。1960年代の初めに、石井が「働く青少年の作文」の選者をしたらしい。それで読んだ150編ほどの作文から、まず石井は「この日本に連日連夜、働いている生身の若者や少年たちがいるのだという事実に圧倒される」(p.65)と書く。

お勝手太平記(金井美恵子)

お勝手太平記お勝手太平記
(2014/09/30)
金井美恵子

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新聞の書評でこの本のことを読んだのは11月だった。あとで切りぬいたその書評を、私は「これが読んでみたい」と友人に送ってしまって、詳しいことはすっかり忘れてしまったが、とにかくこれが「お手紙小説」だということがくっきりと記憶にあった。

図書館の予約待ち人数は思ったより少なくて、しばらく待っていたら暮れになって本がまわってきた。編み物の手をうごかしながら(こうしてゆっくりとページをめくるのがちょうどよかった)、2014年の最後に読み終えた。

手紙を書くのが好きな「アキコさん」が書きつづって(それはしばしば何日もかけて書かれている)、友人や身近な人へ出した長い長い手紙がずらずらと並ぶ。アキコさんは出した手紙をきちんとコピーして整理しているとかで、しょっちゅう脇道へそれて、ときには消えてしまうあれこれの話題が、また後日の手紙でよみがえって語られたりもする。

その手紙には、本の話や映画の話があり、噂話や悪口もあり、思い出話もあり、夫の話もあり…と、アキコさんが書いた手紙だけで、よくここまで友人たちの動向や性格が見えてくるものだと感心した。くわえて、あの小説やらこの本やらに対するアキコさんの悪口がおもしろい。

どん底 部落差別自作自演事件(髙山文彦)

どん底 部落差別自作自演事件どん底
部落差別自作自演事件

(2012/04/02)
髙山文彦

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月刊『部落解放』で髙山文彦が連載していた「新破戒」が終わったのはいつやったかなとバックナンバーの目次を調べたら、連載終了は昨春で、そろそろ本になってないかと図書館の蔵書検索をしてみたら、「新破戒」はなかったけど、この本を見つけて借りてきた。

サブタイトルにある「部落差別自作自演事件」は、福岡の被差別部落で実際にあった事件。2003年から2009年にかけて、山岡一郎(仮名)のもとへ、あるいは勤務先や上司へと差別ハガキが送られてきた。巻末には、その全44通の内容が掲載されている。「部落の人を辞めさせてください」とか「部落にクソあれ、あんたに不幸あれ」など、書かれた内容はひどい。

何より驚くのは、この差別ハガキを書いて送り続けたのは、当の山岡(仮名)本人だったということ。「すなわち彼が差別した部落民とは自分自身なのであり、読むに堪えないおぞましい言葉の数々を自分自身に向かって吐きつづけたのだ」(p.6)という事件だった。

著者は「事件の一部始終を可能な限り詳細に描き出し、後世への記録としたい」(p.11)という。差別事件の「被害者」がみずから加害をおこなっていた、という事件をどう考えたらいいのか。読んだ後味はわるい。この山岡(仮名)という人が、何を思い、何を考えてこんなことをしたのか、私には分からない。

「みかんの島」の介護日記 ~23歳のリエとナオミが挑んだ不器用で誠実な福祉の道~(山口放送)

「みかんの島」の介護日記 ~23歳のリエとナオミが挑んだ不器用で誠実な福祉の道~「みかんの島」の介護日記
~23歳のリエとナオミが挑んだ不器用で誠実な福祉の道~

(2010/08/06)
山口放送

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図書室をうろうろしていたときに、表紙を見せておいてある本のなかに、「みかんの島」という文字が見え、その脇には「山口放送」とある… これは周防大島のことか?と手に取ってぱらぱらっと見ると、はたして「みかんの島」は、やはり周防大島のことだった。

ここ数年、冬には周防大島でKさんがつくっているみかんやその他の柑橘類を食べていることもあって、借りてきて読んでみる。周防大島は宮本常一のふるさとでもあって、『宮本常一著作集』にはみかんに言及した箇所もあるとKさんに教えていただいたこともある。

さて、「みかんの島」の本は、テレビでやったドキュメンタリー(NNNドキュメント'06「笑って泣いて寄り添って~リエとナオミの介護日記~」)をもとに、再度取材を重ね、2人の若いヘルパーとお年寄りたちの日々を構成した、というものらしい。

マンガ おひとりさまの遠距離介護けもの道 ハハとムスメのバトルあるある(たけしま さよ)

マンガ おひとりさまの遠距離介護けもの道: ハハとムスメのバトルあるあるマンガ おひとりさまの遠距離介護けもの道
ハハとムスメのバトルあるある

(2014/03/17)
たけしま さよ

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『愛ちゃんのボランティア神戸日記』のマンガの人や~と借りてきて読む。『ゆうことカリンのバリアフリー・コミュニケーション』でもマンガを描いてはった。

「はじめに」で、こんな風に書いてある。
▼…(略)… 親の面倒を見なければならない日が、いつかは来ると漠然と思っていましたが、…(略)…その日がいきなりやってくるとは想定外でした。地震や洪水は、遭遇せずに済むこともありますが、親がいる限りは、その老いや死に否応なく付き合わねばなりません。…(略)… 産み育ててもらった感謝はあっても、「この人みたいな人生は絶対、ごめんだ」と思っていた人と、死ぬまで濃密な付き合いをしなければならなくなりました。
 転んでもタダでは起きたくなく、描き始めたのがこのマンガです。(p.1)

これまで決して良好とはいえなかった親子関係。それでも、否応なく「親の介護」はやってくる。「うっとーしい」母、「次第にモンスター化していく」母の遠距離介護を、「自分の生活は別の場にある 帰る家があるから我慢できる」(p.14)と、あくまで「訪問」でやってきた著者。

「解説ページ」を挟みながら、その母との日々がこまごまと描かれている。ことしは80になるひとり住まいの父のことを「そのときになったら」と思い、この数年は妹と連れだって(1人で行くのは正直きつい)月に1、2度くらい様子見にいくことで過ごしてきた私は、あーそう遠からずこういうアレコレがやってくるのであろうと思いながら読んだ。

2015年 元旦

ことしもよろしくお願いします
羊をかたどった和菓子朝はよく晴れた大阪、洗濯物や布団を干しているお宅もかなりあったが、午後からはかげってきて、天気予報どおり夕方には雪。

父宅からの帰り道、雪が吹きつけて視界がわるく、雪をかぶった風景は、ここはどこ?という感じ。気温もどんどん下がって、寒い。

羊をかたどった和菓子を、熱いほうじ茶でいただく。
Genre : 日記 日記
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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