読んだり、書いたり、編んだり 

12月に読みおわった本

12月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。今月は久しぶりに劇場で映画を観た。

休刊(実質的に終刊)号になるという雑誌『インパクション』の「特集・テロルの季節」を買う。それと、出た頃から気になっていた(「編集人から読者への超分厚い手紙です!」というところが特に)北尾トロの『季刊レポ』をいまさら買ってみたら、あと1年で終刊になると書いてあった。雑誌の「終わり方」に興味をひかれる。

暮れの帽子

以前、Kさんから頼まれて帽子を編んだ。歩いていて気づいたらその帽子を失っていたとKさんがおっしゃるので、新たに編んでさしあげる。

何にでも合わせやすいから白がいいとのことで、いただきもののモヘアぽい糸で編みかけていたものを、12月半ばの寒波到来時に仕上げる。そして、年越し寒波がやってくるというので、これもいただきものの柔らかい糸で、もしまた失ったときの予備にともう1つ。久しぶりに本を読みながら手を動かした。読んでいたのは金井美恵子の『お勝手太平記』というお手紙小説。
Genre : 日記 日記

なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白(東小雪)

なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白なかったことにしたくない
実父から性虐待を受けた私の告白

(2014/06/03)
東小雪

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『ふたりのママから、きみたちへ』や、『レズビアン的結婚生活』の著者のひとり・東小雪さんが書いた本。前の2冊を読んだときに、東さんというのは、なんでこんなうっとうしい感じになるんやろと思った部分があるけど、その裏には心を病み、オーバードーズを繰り返すほどの苦しみがあったことを知る。

サブタイトルに書かれている実の父からの性虐待のことも、かつて属したタカラヅカの中にある暴力のことも、そして自身がレズビアンであることも、そのいずれも「なかったことにしたくない」という東さんの強い思いが感じられる。

昭和史残日録 1926‐45(半藤一利)

昭和史残日録 1926‐45昭和史残日録 1926‐45
(2007/07)
半藤一利

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半藤一利と保阪正康の対談集『そして、メディアは日本を戦争に導いた』で、半藤が、朝日新聞が自社の七〇年史で満州事変以後「新聞社はすべて沈黙を余儀なくされた」などと書いているが、そうではなくて、新聞は部数拡大のため自ら戦争を煽ったのだと書いていた。その引用箇所の前後を読んでみたくて、図書館で古い古い本を取り寄せてもらった。

その『朝日新聞七十年小史』を、時間をつくって図書館へ通い、メモをとりながら読んでいる(1949年刊の非売品のせいか、相互貸借で届いた本が禁帯出扱いで、館内閲覧になっている)。

『朝日新聞七十年小史』を読む参考に、半藤が指摘していた満州事変の前後という時期のことを知りたくて、1事項が1ページでまとめられたこの本をざっと読んでみた。

深沢七郎ライブ(深沢七郎ほか)

深沢七郎ライブ(深沢七郎ほか)深沢七郎ライブ
(1988/06)
深沢七郎ほか

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『人間滅亡的人生案内』を読んだら、本読みの友が『深沢七郎ライブ』を夜な夜な読んでいるというので、私も続けて借りてくる。読みおわって、奥付をみたら、【限定出版】とあり、定価は5000円! 1987年の夏に死んだ深沢七郎の追悼本ということらしく、発行は1988年の6月。『話の特集』に掲載された文章やら対談やらあれこれが(「人間滅亡的人生案内」も)収録されている。

表紙の絵が、なんか見覚えあるような…と思ったら、『ヒューマンライツ』の装画で毎月見ている黒田征太郎の絵だった。

ところどころに関係者の写真が入っていて、たとえば深沢が亡くなったあとの座談会「俺たちも深沢さんのようにうまく死のう」には色川武大、尾辻克彦(つまりは赤瀬川原平)、野坂昭如の3人が参加していて、みんな若い! 前のほうに入っている「しょんべん対談」や「糞尿屁座談会」は、もっと古くて1968~69年のもの。竹中労や永六輔、野坂昭如が出ているが、野坂がなお若い!(むかしからこの人は黒メガネであるらしい。)

熱狂なきファシズム ニッポンの無関心を観察する(想田和弘)

熱狂なきファシズム ニッポンの無関心を観察する熱狂なきファシズム
ニッポンの無関心を観察する

(2014/08/21)
想田和弘

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この本のまえがきは、新聞記者のインタビューを受けて「歴史的な低投票率の中、安部晋三総裁率いる自民党が圧勝した国政選挙の結果について見解を述べていたとき」(p.6)に、本のタイトルにもなった「熱狂なきファシズム」という造語を思いついた、と始まる。2年前、自民の議席数だけで過半数を上回り、「自民大勝、民主惨敗」と言われた2012年12月の衆院選のことだ。戦後最低の投票率を更新した選挙でもあった。このたびの12月の選挙はその最低をまたも更新して、有権者のほぼ半数が棄権という状態になった。

ファシズムという語にはある種の「熱狂」が伴うようなイメージがあると、想田はヒトラーやムッソリーニや昭和天皇のような祭り上げられた指導者とそれを熱狂的に支持する国民のイメージをあげる。しかし、安倍首相を熱狂的に支持する人は一部の「ネトウヨ」を除けばあまりいないし、おまけに投票率も低い、自民党の得票率があがったわけでもない…とグルグル考えていて、想田はひらめく。

▼むしろ現代的なファシズムは、現代的な植民地支配のごとく、目に見えにくいし、実感しにくい。人々の無関心と「否認」の中、みんなに気づかれないうちに、低温火傷のごとくじわじわと閑かに進行するものなのではないか。(p.7)

本について授業をはじめます(永江朗)

本について授業をはじめます本について授業をはじめます
(2014/09/22)
永江朗

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永江朗の『「本が売れない」というけれど』を読んだのと前後して、「ブックマーク」読者のKさんからの本ネタ通信で、この本が紹介されていて、図書館にあったので借りてくる。

少年写真新聞社の「ちしきのもり」というシリーズの1冊で、版元のサイトによると、これは"小学校中・高学年以上対象の新ノンフィクション"らしい。

1時間目「ぼくらのもとに本がとどくまで」、2時間目「本のルーツをたどる旅」、3時間目「本と仲よくなるには」という構成で、Kさんが「一見すると児童書だが、中身はかなりマニアック、というアンバランスさも、面白い」と書いておられたとおり、字も大きいし、ちょっと込み入った字にはルビが振ってあるし、見た目はたしかに"小学校中・高学年以上対象"だが、『「本が売れない」というけれど』で書かれていた内容と重なるところもあったりで、大人が読むのもおもしろいと思う。

伊藤くん A to E (柚木麻子)

伊藤くん  A to E伊藤くん A to E
(2013/09/27)
柚木麻子

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深沢七郎の『人間滅亡的人生案内』を読んだあとに、この小説を読んだら、なんだか人間滅亡教とは真逆な感じであった。タイトルに出てくる「伊藤くん」にふりまわされる女性たちを描いた連作集だが、この女性たちがみんな必死な感じ。そのもがき方というか、悩み方は、『英子の森』の英子のようでもあって、「今」という時代の圧力は、こんな風にかかってるんかなーと手に載せて見るような気持ちで読んだ。

なんでも自分の都合のよいように考えることのできる「伊藤くん」。イケメンで、実家は金持ちで、シナリオライターになりたいと言いつつ、塾講師のアルバイトをしている(とはいえ、その稼ぎではとても買い揃えられないであろう服装をしていたりする)伊藤くん。「誰からも傷つけられない」ことが大事だという伊藤くん。

売れっ子になった先輩脚本家との勉強会に参加し、ドラマの辛口批評をしている自分のブログを「本質をついていると思う」と言える伊藤くんだが、自分は作品を書き上げる気も、デビューする気もないのだと、その先輩に言ってのける。

〈役割語〉小辞典(金水敏・編)

〈役割語〉小辞典〈役割語〉小辞典
(2014/09/17)
金水敏・編

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この著者が新聞に書いた「そうよ役割語は深くてよ」という記事を読んで、これは読んでみたいと思っていた。辞典と名がついているが、どれくらいの大きさのものなのか、図書館は禁帯出にせずに貸してくれるだろうかと思っていたら(以前、内容が「引く」というより「読む」ものなのに、貸してもらえず、館内で読んだ辞典の経験があるため)、読みものとしてフツーに借りられる本扱いで、有り難く借りてきて読む。編者の名の読みは「きんすい・さとし」。

役割語について編者の金水が最初に出した本は『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』という本だそうで、そこに書いた定義を、この辞典の巻頭にも引いている。

▼ある特定の言葉づかい(語彙・語法・言い回し・イントネーション等)を聞くと特定の人物像(年齢、性別、職業、階層、時代、容姿・風貌、性格等)を思い浮かべることができるとき、あるいは特定の人物像を提示されると、その人物がいかにも使用しそうな言葉づかいを思い浮かべることができるとき、その言葉づかいを「役割語」と呼ぶ。(金水 2003、205頁) (p.vi)

たとえば、
 「わしが知っておるんじゃ」
 「わたくしが存じております」
 「ぼくが知ってるよ」
 「おら知ってるだ」
 「うちが知ってんでー」
 「拙者が存じておりまする」

というそれぞれのセリフを、どんな人物が話しているとイメージするか、ということである。おそらく日本で育った日本語話者であれば、ほぼ同じ人物像をイメージできるだろう。そのイメージを喚起できる言葉づかいが「役割語」なのだ。

人間滅亡的人生案内(深沢七郎)

人間滅亡的人生案内人間滅亡的人生案内
(1971)
深沢七郎

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この本は、だーいぶ前に読んだことがあった。しばらく前に、本読みの友といろいろ語りあっている中で、「仕事」についての話にからんで深沢七郎の話が出て、そしてこの本のことも出てきて、また読んでみたくなって図書館で借りてきた。

私が生まれた頃に若かった人たち(=団塊の世代あたり)の相談内容に、誰しも若いときがあったんや…と、顔見知りの団塊付近の方々を思い浮かべたりもしながら、読んだ。

友と「仕事」について話したなかでこの本が出てきたこともあって、深沢七郎が若い人たちからの相談に答えて、そういうことを書いてる文章に目がいく。

▼なんにも考えないで、なんにもしないでいることこそ人間の生きかただと私は思います。ただ、生きていくには食べなければならないのです。だからお勤め仕事もするのではありませんか。仕事をすることは食べること以外の意味を求めてはいけないのです。…(略)…どんな仕事でも仕事はツマらないのです。食べる報酬をもらうのですからね。(p.14)

「本が売れない」というけれど(永江朗)

「本が売れない」というけれど「本が売れない」というけれど
(2014/11/04)
永江朗

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新聞でちょろっと紹介されていて、図書館にすでに入っていたので借りてきて読んでみる。

この本のタイトルの文句にすでに著者の思うところが込められているなーと思ったが、中も「読書ばなれ」「活字ばなれ」と言われるけれども、その「中身」を腑分けしていくと、いろんなものが見えてくる、という話が、さまざまなデータも示して書かれている。感覚でなんとなくこうだろうと言われていることを必ずしもそうじゃないのだときっちり見ている。著者のことばを借りれば「「読書ばなれ」と「出版不況」のあいだにはねじれがある」(p.69)のだ。

「読書ばなれ」は起きていないが、本を読むという体験が多様化したために、新刊が売れない「出版不況」となっている面があるし、「出版不況」のおおもとは「雑誌不況」であって、出版界が景気回復をめざすなら、読書推進よりも「もっと雑誌を読もう、もっと漫画を読もう」という推進運動をしたほうがよいのではないか、と著者は指摘する。

そして、本に対する感覚がじわじわと変化してきたことを著者は、「いってみれば本は「所有」するものから「体験」するもの、あるいは「消費」するものに変わった。物体として所有するのではなく、読むことを体験し、情報として消費するのだ」(p.80)と表現する。

女のからだ―フェミニズム以後(荻野美穂)

女のからだ―フェミニズム以後女のからだ―フェミニズム以後
(2014/03/21)
荻野美穂

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コンパクトな新書に、かなりいろいろ入ってる感じの本。「女の健康運動の歴史における重要な節目は1969年だろう」(p.18)とあり、この年、アメリカ各地で同時多発的に運動が始まったという。日本では『からだ・私たち自身』というタイトルで訳本が出たOBOS(Our Bodies,Ourselves)の物語も1969年に始まるそうだ。私がうまれた年である。日本ではこの翌年の1970年が「ウーマン・リブ元年」とされているそうだ。

私が大学に入った年、1988年に出た『からだ・私たち自身』は、ものすごく分厚くて、高かったが、私も買ってあちこちずいぶん読んだし(どうやりくりしてこんな高い本を買ったんやろ…)、この新書で書かれている話は、知っていたこともけっこう多かった。

でも、知らんかったなーということもあって、たとえば1962年のシェリ・フィンクバイン事件(pp.21-22あたり)、伝説の中絶地下組織「ジェーン」のこと(pp.55-64あたり)、薬害や医療被害者たちのねばり強い交渉の末に、レセプトやカルテの明治、明細のわかる領収証の発行などが実現したこと(pp168-169あたり)など。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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