読んだり、書いたり、編んだり 

11月に読みおわった本

11月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。9月-10月と忙しかった仕事で11月上旬ごろまでバタバタとしたが、その後しばらく落ち着いて、久しぶりに編みものをしたり、しばしの休養。本もいろいろ読めたし、読書メモもまあまあ書いた。

それにしても、11月下旬になってからの暖かさには驚く。11月の初めや中頃はずいぶん冷えた日もあったのに、12月も近くなってから最高気温が20度前後の日が続くとは。11月末はこんなにぬくかったか?と思い、気象庁の過去のアメダスデータで11月の気温や降水量を調べたりした。

ことしもあと1ヵ月。

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この秋の帽子

涼しくなってきて、たまに編みもの。新聞を読みながら、本を読みながら、ビデオを見ながら… 慣れたかたちの、いつもの帽子をいくつか仕上げ。

昨シーズンいろいろと買ったり貰ったりした糸がまだたくさんあるせいか、今シーズンは毛糸売り場を通りかかっても、はあはあすることなく、比較的冷静でいられる。
Genre : 日記 日記

そして、メディアは日本を戦争に導いた(半藤一利、保阪正康)

そして、メディアは日本を戦争に導いたそして、メディアは日本を戦争に導いた
(2013/10/11)
半藤一利、保阪正康

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父から「読むか」とまわってきた本を、返す前にメモ。約1年前(2013年10月)に一刷が出た本で、父が買った本は2014年2月の五刷。

半藤一利(1930年うまれ)と保阪正康(1939年うまれ)が、昭和史において「ジャーナリズムがいかなる事由があって健全さを失っていったか」(p.5、半藤「」はじめに」)、「言論の自由がどのような形で守られ、どのようにして真のジャーナリストが存立しうるのか」(p.220、保坂「おわりに」)を語りあったもの。

「はじめに」では、半藤が、自民党が2012年4月に発表した「日本国憲法改正草案」の中でも、第21条の条文に愕然となり、怒り心頭に発して、「それを報道しただけの新聞に罪はないのに、ビリビリ引き裂いてしまったほどとなった」(p.3)と、とにかくめちゃくちゃに怒っている。

自民党の草案では、現在の憲法とほぼ同じ文言の第21条1項(「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する」 ※半藤は一言一句変わりはなくと書いているが、厳密には「これを保障する」の「これは」が自民党草案では削られている)に、第2項として許しがたい文言が付け加えられた。

真実の「わだつみ」 学徒兵 木村久夫の二通の遺書(加古陽治・編)

真実の「わだつみ」  学徒兵 木村久夫の二通の遺書真実の「わだつみ」
学徒兵 木村久夫の二通の遺書

(2014/08/12)
加古陽治・編

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「ブックマーク」読者のTさんから電話でこの本のことを伺ったのがたしか10月のはじめ。たくさん注文して購入したので、さしあげます、ぜひ読んでくださいというお言葉に甘え、送っていただいた本を読む。電話で伺ったのは、『きけ わだつみのこえ』に収録されている木村久夫の遺書は改変されていて、軍に対する批判を書いた箇所などが削除されているということだった。

私の手元には、岩波文庫版の『きけ わだつみのこえ』(1982年に一刷)、『第二集 きけ わだつみのこえ』(1988年に一刷)、そして『新版 きけ わだつみのこえ』(1995年に一刷)の3冊がある。

Tさんからの電話を聞いても、私は何がどうなっているかよく判っておらず、とりあえず『きけ わだつみのこえ』に収録されている木村久夫の遺書を、1982年のものと1995年の新版とで比べながら読んでみた。気づいた異同は、妹さんのお名前「孝子」のルビが、1982年版では「たかこ」になっていて、1995年版では「こうこ」になっていることぐらいだった。「今度の事件においても、最も態度の卑しかったのは陸軍の将校連に多かった。」といった内容もあり、Tさんのおっしゃった軍に対する批判が削られているというのは、どの部分だろうと思った。

Tさんからの本が届いて、『きけ わだつみのこえ』に収録された木村の遺書が、二つの遺書を合わせて大幅に編集されたものだった、ということを知る。二つの遺書とは、戦犯として死刑を宣告された木村が、かつて仕えた上官から譲り受けた田辺元の『哲学通論』の余白に書きこんだものと、処刑の半時間前に書かれたものである。

われにやさしき人多かりき わたしの文学人生(田辺聖子)

われにやさしき人多かりき わたしの文学人生われにやさしき人多かりき
わたしの文学人生

(2014/03/20)
田辺聖子

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この文庫は知らんなーと思い、借りてきて読む。カバーイラストは小倉遊亀の「径」で、なんで小倉遊亀なんやろと思っていたら、これはそもそも、集英社から出た『田辺聖子全集』に自著解説として書いたものをまとめた本で、そういえば全集の装画は小倉遊亀だった。

そんなわけで、この本は、この作品はこうでああで、こんな思いで書いたんよ、というのが縷々収められている。ちょうど奈良で大古事記展を見てきたあとだったので、「少女時代から『古事記』や『日本書紀』に眷恋[けんれん]していたのだ。ことに『古事記』は、岩波文庫の古本を何冊も買い継ぐほど愛着した」(p.250)というあたりを興味深く読んだ。

古本を買っていたのは、若く貧しかった田辺が新刊本には手が出なかったせいもあるが、「戦後の出版ラッシュの中で、古典だけはいつまでも出版されなかった」(p.251)からでもあった。おそらくその理由のひとつは、戦時中に『古事記』が神がかりのように担ぎ出されてしまったからなのだろう。

生物学の歴史(アイザック・アシモフ)

生物学の歴史生物学の歴史
(2014/07/11)
アイザック・アシモフ

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図書館で新着棚を見ていたら、アイザック・アシモフというSF作家(名前だけは知ってるが作品はなにも読んだことがない)が書いた『生物学の歴史』があり、カバー裏をぴらっと見たら「人類は「生命の謎」とどう向き合ってきたか。…(略)…SFやミステリー作品で知られる生化学者・アシモフが博識と文才を存分に発揮し、その長く複雑な歩みをやさしく描き出す。」などと書いてあったので、借りて読んでみる。

原著はなんと50年前(1964年)に出たもの。それが1969年にアシモフ選集のなかの『生物学小史』として訳され、45年後のこの夏に文庫になったらしい(図書館の蔵書検索をすると、この古いほうの本もあった)。

そんなに古い本はどうかなーと思ったけど、50年前の、分子生物学がブイブイいわせはじめたあたり(この本の最後の2章は分子生物学にあてられている)までの歴史を、古代や中世の生物学の話から書きおこした内容は、なかなかおもしろかった。

お金のある人の恋と腐乱(姫野カオルコ)

お金のある人の恋と腐乱お金のある人の恋と腐乱
(2014/11/07)
姫野カオルコ

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11月の初めに、本屋で、おっ、姫野カオルコの新しい文庫と思って、ぴらっと見たら、もとは『コルセット』で、それを加筆修正し、タイトルも変更したものだということだった。その日は、まだ待ち受けている仕事があったため、(あとでー)と思って棚に返して帰り、後日、買ってきて読む。

子供の頃から恋愛ものがどうも嫌いだったという姫野カオルコが、40代後半に、「試みを課そう」と思って書き始めた一人称小説の恋愛もの。

『お金のある人の恋と腐乱』というタイトルだけあって、"お金のある人"が出てくる。そこがちょっと『本格小説』風でもあった。表紙のカバー裏にも引かれているが「恋愛で結びつくなどという行動は、働かないと食べてゆけない人がすること」(p.192)という世界の"恋愛もの"である。

4編入ってる話は、どれも「藤沢さん」と「わたし」の話だが、話ごとに、「藤沢さん」は別人だし、「わたし」も別人… で、ちょっとアタマが混乱しそうになる。が、この藤沢さんが、あの藤沢さん…などと整合性を求めなくても、話は楽しめる。

▼男のラベルにひかれる女は清らかなのだろう。淫蕩な女にとってラベルは無価値だ。わたしは淫蕩なのだろう。自分の舌がうまいとかんじるか否か、自分のからだが気持ちいいとかんじるか否か。基準はそれしかない。他人の評価はなんの意味もない。(p.52)

ディアスポラ紀行―追放された者のまなざし(徐京植)

ディアスポラ紀行―追放された者のまなざしディアスポラ紀行
―追放された者のまなざし

(2005/07/20)
徐京植

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読んでみたいと思っていた"ディアスポラ"なんとかの本が図書館になかったので、検索して出てきた中からタイトルに"ディアスポラ"と入った徐京植さんの本を借りてみる。

ちょうど10年前に雑誌『世界』の連載として書かれたものだ。

大文字のディアスポラ(Diaspora)は〈離散ユダヤ人〉とそのコミュニティを指してきたが、今日では小文字の普通名詞diasporaとして、さまざまな離散の民を言い表すことが多くなっていると書いたあとで、徐さんはみずからの定義を述べる。

▼以下の文章で私は、近代の奴隷貿易、植民地支配、地域紛争や世界戦争、市場経済グローバリズムなど、何らかの外的な理由によって、多くの場合暴力的に、自らが本来属していた共同体から離散することを余儀なくされた人々、およびその末裔を指す言葉として、「ディアスポラ」という語を用いることにしよう。(p.2)

あるいは、こうも書いている。
▼私はかつて田中克彦の議論(『ことばと国家』岩波新書)を借りて、ディアスポラにあっては祖国(祖先の出身国)、故国(自分の生まれた国)、母国(現に「国民」として属している国)の三者は分裂しており、そのような分裂こそディアスポラ的生の特徴であると述べたことがある。(p.102)

女の子よ銃を取れ(雨宮まみ)

女の子よ銃を取れ女の子よ銃を取れ
(2014/05/23)
雨宮まみ

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この人の『女子をこじらせて』というのをちょっと読んでみたいと思ったことがあったが、図書館に入る気配なく(今もない)、どういう選書かわからないが、この人のいくつかある著書のうち、この『女の子よ銃を取れ』だけが図書館に入り、借りてきてみる。

持って帰ってきた日に、ぴらっとめくってみるが、目次を見てもそそられず、何ページかざっと読んでもあまりノらず、そのまま積んでいた。予約していた本がまとまって届き、読むなら読んで、返して、次の本を借りようと思い、読んでみる。

なにかに似てる、これと似たようなのを読んだことがある気がする…と、読みながらしばらく考えていて、酒井順子や!と思う。ですます文体と、自己分析を絡めつつ、読者の皆さんにこうしてみてはいかがでしょうかと提案する風な文章が、私には、いっときまとまって読んだ酒井順子の文章に似たものに感じられた。

正直あまりおもしろいと思えないまま、ほぼ惰性で読んでしまう。とはいえ、なぜ「女子」の悩みが深くなるのか、外見や内面について、ああだこうだと、まるで矛盾するようなことを同時に言われまくって(ダブルスタンダードというやつ)、そこに引っかかってしまったら、にっちもさっちもいかなくなるのは理の当然でしょう、といった分析のところは、それなりにおもしろかった。

その手をにぎりたい(柚木麻子)

その手をにぎりたいその手をにぎりたい
(2014/01/24)
柚木麻子

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前に「ブックマーク」で紹介されていて、お鮨の職人さんと主人公の女性がどうのこうのという話らしい… ということは判っていたが、読みはじめてみると… これは"バブル"がぶくぶくとふくらんでいく時代の話でもあった。作中にも出てきたが、「ユーミンの歌詞か林真理子の『ルンルンを買っておうちに帰ろう』に出てくるような世界」(p.10)であることも、そこはかとなく感じた。

主人公の本木青子(もときせいこ)は、栃木のかんぴょう農家の娘。地元の女子大を出たあとに東京の会社で勤めたのは、「独身時代に都会で暮らしてみたかった」(p.10)からだ。

来月には25歳になる青子は、故郷に帰って父のすすめるお見合いをする。社長の近藤が、辞める前に「一度くらい本当に美味しいものをご馳走してやろうと思ってね」(p.9)と、青子を高級鮨店のカウンターへ連れてきた。

お鮨といえば、お稲荷さんかかんぴょう巻かちらし寿司くらいしか知らない青子は、鮨店そのものが初めてなのだ。この「すし静」で、初めて食べたヅケの握り。若い職人の一ノ瀬から手渡されたその鮨を食べた青子はしばし口をきけず、「あの、こんなに美味しいもの食べたの、生まれて初めてで。なんだか、びっくりしてしまって」(p.14)とようやく言うことができた。

スタッキング可能(松田青子)

スタッキング可能スタッキング可能
(2013/01/18)
松田青子

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松田青子の『英子の森』を読んだら、また『スタッキング可能』を読みたくなって、こんどは、てっぺんから収録順に読んだ。いちばん最初は表題作だ。

『わたし』が覚える違和感が記されているところで、あー、わかる、わかる、わかる!!!と思う。『わたし』が「死んでもなりたくない」と思ったその気持ちに、私も覚えがある。『わたし』が「そうしない女がいることを体現してやると心に決めた」のと似たような気持ちを、私もしっかりと抱いていたことがある。私より10歳下の松田青子も、こんな気持ちを感じていたのだろうか、と思う。

そして、「うっじゃうじゃ」いるのは、あまり変わってないのだろうと、正直がっかりする。

昔日の客(関口良雄)

昔日の客昔日の客
(2010/10)
関口良雄

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夏葉社の『昔日の客』は、読んでみたいな…と思っていた本である。こないだ、夏葉社をやっている島田さんの『あしたから出版社』を読んで、2010年の10月終わりに復刊された本を、4年ほど経ってやっと読む。巻頭の「正宗白鳥先生訪問記」から読みはじめて、いい文章やなあと思う。

お酒を飲んだら気持ちよくなって、唄って踊るくせがあるという、古本屋の関口さん。途中からしだいに酒癖がわるくなって、きっぱりお酒は断ったというが、それからも、唄うことはやめなかったらしい。

その関口さんのいとなむ古本屋、山王書房をゆきかった本や、本をめぐる人たちとのことどもが、綴られている。某月某日のページに書かれていた「「方丈記」の精神をもって世に処して来たような人だ」(p.100)という井上さんの話が、こころにのこる。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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