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読んだり、書いたり、編んだり 

英子の森(松田青子)

英子の森英子の森
(2014/02/10)
松田青子

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春に読んだ松田青子の『スタッキング可能』がおもしろかったんで、この人の新作『英子の森』も読んでみたいなーと思っていたが、近所の本屋に見当たらず、図書館ではぞろぞろ予約がついていたので、しばらく忘れていた。

気がつくと図書館の本が空いてたので、借りてきて読む。本のてっぺんから中ほどまでが表題作で、これは、"英語ができたらグローバル社会でバッチリ"みたいな沼に足を取られた人たちの話。親も先生も、テレビも広告も、「英語ができると後でいいことがある」「英語は新しい世界につなげてくれる扉」だと言った。それで英子はますます英語を好きになり、ずっと英語を勉強してきたのだ。でも、今は思う。「じゃあなんで今のわたしはこんなところにいるんだろう。」(p.16)

「英語を活かせるお仕事☆」を求めてきたが、結局のところ、英語を使う仕事と英語を使わない仕事の時給の差はたった50円。

妻が椎茸だったころ(中島京子)

妻が椎茸だったころ妻が椎茸だったころ
(2013/11/22)
中島京子

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こないだ久しぶりに、中島京子って最近なに書いてんのかなーと図書館の蔵書検索をしたら、ヘンなタイトルの小説が出ていた(もう1年前の作だ)。それを、予約して借りてくる。表紙カバーの色はまさに「椎茸の色」で、さらに干し椎茸とおぼしき絵が描いてある。いったいどんな小説なのか全くわからない外見。

目次をぴらっと見ると、表題作を真ん中に、「ラフレシアナ」とか「ハクビシンを飼う」とか、こりゃまた何やろというタイトルが5つ並んでいる。とりあえずてっぺんから読む。

ラフレシアナという植物を恋人にする男が出てきたり、家の天井に巣くったハクビシンを便利屋に捕獲してもらったあと、処分されると聞いて、一緒に住めないかと飼っていたおばさんが出てきたり、亡くなった妻のノートに「どこかの時代にいけるなら、私は私が椎茸だったころに戻りたいと思う」とあったのを見つけた夫が出てきたり… 

僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活(泉 流星)

僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活僕の妻はエイリアン
「高機能自閉症」との不思議な結婚生活

(2008/06/30)
泉 流星

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本読みの友が「アスペルガーの傾向ありと自覚しているつれあいが借りてきたのを、私も読んでみた」そうで、「つれあいは自分に当てはまらないところも多いと思ったようだが、私は読んでみたら思い当たるところが結構あって」とのこと。

友の言うとおり、こういうのは「白か黒」ではなくて、グレーゾーンがなだらかに広がっているのであろうなアと思いつつ、私も図書館で借りてきて読んでみる。タイトルのとおり、結婚して一緒に暮らしてみた高機能自閉症の妻は、まるで地球人に化けた異星人[エイリアン]のようだ…という夫の側の視点で書かれた本。

ふたりは半年ほどの遠距離恋愛で結婚。「最初から妻がかなり個性的な人だってことは僕にもわかっていたけれど、実際どんなに変わった人か、一緒に暮らすのがどんなに難しいかは、結婚するまで気づかなかった」(p.10)と夫は述べる。結婚して10年、いまの医学でいえば「高機能自閉症」だと妻が診断されるまで、話がかみあわないことにいらだったり、ケンカになることも多かったそうだ。

私とは何か―「個人」から「分人」へ(平野啓一郎)

私とは何か―「個人」から「分人」へ私とは何か
―「個人」から「分人」へ

(2012/09/14)
平野啓一郎

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小説は読まないという人が、平野啓一郎のこれは気に入った、実用的でよかったと言っていて、その小説ではないらしき本を借りてきて読んでみる。平野は小説『日蝕』でデビューした人だそうで、その後もいろいろと小説をたくさん書いてるようだが、私はこれまで全く読んだことがない。

▼本書の目的は、人間の基本単位を考え直すことである。
「個人」から「分人[ぶんじん]」へ。
 分人とは何か? この新しい、個人よりも一回り小さな単位を導入するだけで、世界の見え方は一変する。むしろ問題は、個人という単位の【大雑把さ】が、現代の私たちの生活には、最早対応しきれなくなっていることである。(p.3、【】は原文では傍点)

individual、つまりdivide(分ける)に由来するdividualに否定する接頭辞のinがついた単語は、「不可分」「これ以上分けられない」という意味をもつ。

「個人(individual)は分けられない」というのは、人間のカラダを考えてみれば、そのとおりだろう。では、人格はどうか?カラダのように分けられないものか? 「本当の自分」は1つきりなのか? そこのところに分け入ったのが、この「分人」論。

本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」(ジェイソン・マーコスキー)

本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」本は死なない
Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」

(2014/06/19)
ジェイソン・マーコスキー

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これも、「ブックマーク」読者のKさんからの本ネタ通信で知った本。本の学校のシンポ報告の本『書店と読書環境の未来図』とあわせて借りてきてみた。amazonが出している「キンドル」という電子書籍の読書端末を開発した人が書いた本。

1972年うまれの著者は子どもの頃から「本好き」だったといい、図書館で本を沢山借りて、リュックが重すぎて背負えなかったとか、そんなエピソードがあちらこちらに出てくる。その「本好き」エピソードには共感するところが多かったが、ひるがえって電子書籍の話は、Kさんが通信に書いていたように「読み進みながら感じる拭い難い違和感は、どこから来るのか」と、私も思った。

タイトルは「本は死なない」というのだが、読んでいると、いまの紙のかたちの「本」は絶滅して、これからは電子書籍しかないでしょうという感じ。紙の本にはこんなエエとこがあって、一方で、電子書籍にはこんなエエとこがあって…と、バランスを取って書いてるようには見えるけど、読むと「未来は電子書籍!」という結論に連れていかれる感じ。

書店と読書環境の未来図―本の学校・出版産業シンポジウム2014への提言(2013記録集)(本の学校 編)

書店と読書環境の未来図―本の学校・出版産業シンポジウム2014への提言(2013記録集)(本の学校 編)書店と読書環境の未来図
―本の学校・出版産業シンポジウム2014への提言(2013記録集)
(2014/07)
本の学校 編

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ほぼ月に1回、メールで本ネタの通信を送ってくださる「ブックマーク」読者のKさんがいる(以前は、ハガキ通信だった)。いつも"本"にまつわる本や雑誌が紹介されていて、まめに本屋を見ておられるなあと思う。私がすでに読んでいるときもたまにあるが、たいていは、こんなん出てたんや~と初めて知る。

で、Kさんが紹介されている中から、ときどき読んでみたり、本屋で立ち読みしてみたり。このシンポ記録の本も、「本の学校」なつかしいなあと、図書館にあったのを借りてきた。

「本の学校」は、米子の今井書店グループがやってる事業である(今はNPO法人になってるらしい)。私は今井書店へいちど行ってみたくて、妹と米子方面へ行った折りに、米子の本店へ立ち寄ったことがある。もうだいぶ前に、初期の「本の学校」のシンポをまとめた報告書(※)を5冊セットで買ったことがある(たしか1万円くらいした)。長いこと本棚に置いて、ところどころ読んだ。手放すにはちょっと惜しいが、ウチに置いておくには場所ふさぎなので、何年か前に近所の図書館へもっていった。

失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(大和彩)

失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで失職女子。
~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで

(2014/09/25)
大和彩

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この本も、後ろに数人の予約待ちがあって、先に読む。

生活保護について比較的若い女性が書いた本といえば、1年くらい前に『生活保護とあたし』を読んだことがある(この本のことは、『ヒューマンライツ』誌2013年10月号で書いた)。

「リストラや契約打ち切りで無職になり、転職活動では100社近くから不採用になり、貯金もすべて使い果たし、生活に困って途方に暮れていました」(p.1)という著者は、借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようかと思い悩んでいたときに、生活保護という制度を知る。

ウワサによると申請はコワくて物々しいようだが、申請するからには不備がないよう、ストレスも最小にとどめたいと考えた著者は、生活保護を申請した人の「実践的アドバイス」を求めて、図書館で勉強に励む。しかし、あまり参考になる本がなかったという。

▼「もっとこう、つい最近まで働きながらひとり暮らししていた女性がある日突然、『ああ、生活保護申請しなきゃ! けど、どうすればいいかわかんない!!』ってときに参考にできて、経験者から『こういうふうにやってみたら、なんとかなったよ!』みたいにアドバイスをもらえる本、ないのかなぁ。できれば、明るいタッチで書かれたもので。あればすっごく読みたいのになぁ」
 という一年前の私自身の渇きが、この本にはふんだんに活かされています。(p.2)

37歳の女性が書いた、そんな本。もとは、いろいろ「吐きだす」ためにブログ(※)に書かれたもの。

レッツがおつかい(さく:ひこ・田中、え:ヨシタケシンスケ)

レッツがおつかいレッツがおつかい
(2011/01)
さく:ひこ・田中
え:ヨシタケシンスケ

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『レッツとネコさん』『レッツのふみだい』に続く、レッツの話。前の2作は、5歳のレッツが、3歳のころを思いだしての話と、4歳のころを思いだしての話だったが、この『レッツがおつかい』は、5歳のレッツの話。これだけまだ読んでなかったので、借りてくる。

テレビで、3歳の子ども2人がおつかいに行く話をやっている。クリーニング屋で服を渡し、お金を払って、でもお釣りを貰い忘れて、お店の人が追いかけてきて渡している。帰りにケーキ屋でケーキを買って、2人は途中の公園で食べている。そして砂場で遊んでから帰った2人。

このテレビの向こうの子どもに対し、レッツの親は「ちゃんと おかね はらえたぞ。かしこいなあ」「あ、でも、おつりを もらうのを わすれたわ」とか、「おなかが へってたのね」「がまん できなかったんだね」とか、「よく がんばった。ほんとうに えらいわ」「3さいで おつかいを できるんだね」とか言っている。

ダッシュ!(村上しいこ)

ダッシュ!ダッシュ!
(2014/05/30)
村上しいこ

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海月文庫でお目にかかったことのある村上しいこさんは、本を書いてる人でもあると聞き、最新作を借りてきて読んでみる。中学校の陸上部の話。巻頭に「主な登場人物」がまとめてある。けっこう登場人物が多く、とくに同じ学年の真歩[まほ]、紗凪「さなぎ」、みらい、葉月、符音[ふおん]の5人がどうもごちゃごちゃして、何度かこの巻頭ページに戻りながら読む。

通信陸上競技大会が終わった夏の日、この日が陸上部3年生メンバーの卒業式になる。キャプテンの挨拶のあと、次年度の新チームにむけて、新キャプテンの発表がある。キャプテンは、センパイたちの話し合いで決まり、顧問の先生も関与しない。

実力なら紗凪、みんなを引っぱっていくならみらい、大学生とつきあって遊んでる葉月は論外、長距離の符音は好き嫌いが分かれるタイプ、そして自分自身は大穴にすらならない、ありえない…と思っていた真歩が、次期キャプテンに指名される。

なんでーと問う真歩に、センパイは「あんたが成長してくれないと、全国は見えてこないから。それが理由」(p.9)と言う。キャプテンは何をしたらいいのかと重ねて問うと、「自分で考えろ。バカっ!」の一言が返ってきた。

キャプテンになったと言っても、真歩が号令をかけるようになった以外は、何も変わらなかった。これくらいならキャプテンの仕事もたいしたことないと思っていた真歩だったが、春になって、足の速い(小学生の県大会で入賞しているという)美羽留が入ってきてから、様子が変わっていく。

明日は、いずこの空の下(上橋菜穂子)

明日は、いずこの空の下明日は、いずこの空の下
(2014/09/02)
上橋菜穂子

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私が図書館で借りる本には、あまり他の人の予約がついてないことが多いが、この本は後ろに十数人待ちで、とっとと返すために、すぐに読んでしまう(ある程度の厚さをもたせるためか、ページの下が空いたレイアウトで、字もけっこうでかい)。

もとは「小説現代」で書いたエッセーに、書き下ろしが一篇加わって、本になったもの。内容は、『物語ること、生きること』と半分くらい重なる感じだったが、もちろんあっちの本にはなかった話もいろいろある。

「好奇心旺盛で負けず嫌い」の母上と旅に出たときの話がおもしろかった。とくにイランを旅したときの、旅する前にこの国にもっていた先入観と、実際に接したかの国の人たちとそこで見た光景がそうした先入観をひっくり返していった経験。

エール! 3 (原田マハ、日明恩、森谷明子、山本幸久、吉永南央、伊坂 幸太郎)

エール! 3エール! 3
(2013/10/04)
原田マハ、日明恩、森谷明子、山本幸久、吉永南央、伊坂 幸太郎

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『エール! 1』『エール! 2』に続き、図書館でしばらく待ってて読んだ本。"お仕事小説アンソロジー"の3集めである。

・美術品輸送・展示スタッフ
・災害救急情報センター通信員
・ベビーシッター
・農業
・イベント会社契約社員
・新幹線清掃スタッフ

という仕事につく人たちが描かれている。

どの書き下ろしもおもしろかったが、とくに印象にのこったのは、日明恩(たちもりめぐみ、と読むそうだ)が災害救急情報センター通信員、つまりは119番通報を受けて、その内容を聞き取り、必要な救急車や消防車に出場指令を出す仕事をする人を描いた「心晴日和」と、伊坂幸太郎が到着した新幹線を次の発車までのわずかな時間で清掃するスタッフたちを描いた「彗星さんたち」。

あしたから出版社(島田潤一郎)

あしたから出版社あしたから出版社
(2014/06/27)
島田潤一郎

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夏葉社という「ひとりの作家のこころを、ひとりの読者に伝える」(p.12)心意気の出版社をつくった人が書いた本。夏葉社の本は、『本屋図鑑』と、『冬の本』を読んだことがある。

夏葉社をつくるのに著者の従兄の存在があったことは、なにかでちらっと読んでいたが、この本の冒頭にはその最愛の従兄・ケンが死んだ日のことが書かれている。著者は従兄の葬儀を終えて東京に戻り、仕事を探した。

▼ぼくは転職活動をしながら、どうすれば、叔父と叔母と、ひとりっ子になってしまったケンの弟のこころを再びあたためることができるだろう、と考えていた。…(略)
 日課としていた読書は、小説や評論ではなく、「家族をなくしたときに」とか、「大切な人の死をどう受け止めるか」とか、そうしたグリーフケア関連の本ばかりを選ぶようになった。
 ぼくは、自分の苦しみのことは忘れて、叔父叔母たちの苦しみの支えになりたかった。
 いま考えれば、それが、ぼくにとって、自分のかなしみから遠ざかる、もっとも有効な方法なのであった。(pp.25-26)

27歳まで作家志望だった著者は、アルバイトばかりしながら、本だけは人よりもたくさん読んでいた。履歴書の自己紹介欄には「仕事はしませんでしたが、その代わり、本は読みました。『失われた時を求めて』を読破しました」(p.26)などと書いていたそうだ。そこにくいついてくれる会社もなく、転職活動をはじめて8ヶ月で、計50社からお断りのメールがきた。

仕方がない、もういいやと、著者は社会の多くの人と同じような働き方はあきらめた。「なんでもやれそうな気がしたし、なにひとつやれない気もした」(p.39)自分が人生の転機にいることを感じたという。「叔父と叔母のためになにかをしよう」と決断し、なにができるかと考えた。

▼ぼくには、つまり、本しかなかったのだった。(p.43)
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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