読んだり、書いたり、編んだり 

5月に読みおわった本

5月に、てっぺんから最後まで読んだ本(と、見た映画)のリスト。3月、4月はほぼ週1で映像を見たが、今月は2本。

月初にはひんやりした日もあったが、蒸したり暑い日が増えてきて、月末の今日はついに「真夏日」。10階は風がよく通って、まだそう暑さに困るほどではないが、外へ出るとクーラーのかかっているところが増えてきて、一日の気温の上下も大きくて、カラダに堪えるなーと思う。

誕生日にHappy birthday to meで本を3冊買った。その3冊も含めて、今月はよく読んだ。それと、久しぶりに本棚と、あちこちに積んである本を片づけて、段ボールで5箱を手放した。本棚を増やすことも考えたけれど、図書館で借りることもできるし、また買える本もあるし、おさまる範囲で目の届くところに本を置こうと思いなおした。「紙」が多いのはどうしようもないが、暑くなりすぎる前に、もうひとしきり片づけたい。

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中卒の組立工、NYの億万長者になる。(大根田勝美)

中卒の組立工、NYの億万長者になる。中卒の組立工、NYの億万長者になる。
(2013/01/25)
大根田勝美

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『本格小説』に出てくる東太郎の"モデル"という人の自伝。そのことは、ご本人が「あとがき」で、こう書いている。

▼「…『本格小説』は長い長い序章で始まるが、あそこに出てくる東太郎という主人公は、オリンパスの駐在員としてアメリカに渡ってから独立を果たすまでの私である。
 もちろん小説だから一種のフィクションではあるが、実話もたくさん出てくるし、水村さんはご自身のご家族に関しては実際のエピソードを盛り込まれているので、どこまでが本当でどこからが創作なのかを判断するのがよけいに難しい」(p.219)

あわせて、『本格小説』では東太郎が日本人女性と中国人男性との間に生まれてきたとされているが、「私は正真正銘の日本人であり、日本人であることに誇りを持っている」(p.219)とも。

水村美苗が「文庫版に寄せて」として巻末で、大根田さんの話を使う承諾を得ようと手紙を出すと「小説なんだから、好きに書いていいんじゃないですか」(p.235)とすぐに国際電話で返事があった、と書いている。

華氏451度(レイ・ブラッドベリ)

華氏451度華氏451度
(2008/11)
レイ・ブラッドベリ

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『華氏451度』が焚書にまつわる話であることはぼんやり知っていたが、読まないままだった。そこへこないだ、映画になった「華氏451」のDVDが紹介された記事がよかった、映画もよさそう!と友達がその新聞記事を切り抜いて送ってくれた。

映画もみてみたいし、原作もこの機会に読もうと思い、先にブラッドベリの原作を読んでみる。私が読んだのは2008年に新版になったハヤカワ文庫で、巻末に佐野眞一の「出版不況と『華氏451度』」という文章が入っている。

タイトルにもなっている華氏451度とは、日本でふつう使う摂氏になおすと233度、これは紙が自然発火する温度だという。

主人公のモンターグは焚書官、その仕事は禁じられた本を焼き払うこと。仕事帰りに出会った、隣へ越してきたという少女・クラリスに「あんたが燃やした本のうち、どれか読んだことがあって?」と尋ねられたモンターグは、「それはきみ、法律違反だよ」と答える。みんな焼いて灰にしてしまう、灰まで焼けというのが焚書官の職務規定だと説明する。

本格小説 [上下](水村美苗)

本格小説 [上] 本格小説 下

本読みの友2人からのご推薦で、図書館の返却期限が迫った本や急ぐ本などを片づけ、準備万端ととのえて、いざ読む。けっこうなボリュームの上下巻(上が460ページ余、下が400ページ余)をついつい夜更かしして読みふけり、起きたらまた読んで、読み終わったら、とてつもなく眠くなって3時間ほど昼寝した。

17歳から女中としておハイソな家へ仕えた土屋冨美子の「語り」、がこの長大な小説のメインと言っていいが、その冨美子の話を「いま」聞いているのが、軽井沢の別荘に迷いこんだ加藤祐介という若い編集者で、その祐介が、冨美子に聞いた話を作者である水村美苗に語る、という入れ子のようなつくりになっている。

冨美子の話の主なところは、自分の仕えた三枝家とその三枝家と浅からぬ関係となった男・東太郎のことである。作者の水村美苗は、その東太郎が父の仕事関係の人間であったことから子どもの頃に会っている。作者が知る東太郎はアメリカに渡って、アメリカ人のお抱え運転手から出世して億万長者になった伝説の人物だが、アメリカへ渡る以前の東太郎には全く異なる境遇の過去があった、という部分が冨美子の話でずっとずっと語られる。

少女ソフィアの夏(トーベ・ヤンソン)

少女ソフィアの夏(トーベ・ヤンソン)少女ソフィアの夏
(1993/11/15)
トーベ・ヤンソン

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へのへのもへじ文庫で借りた本。似た装幀の『彫刻家の娘』は知ってたけど、こんな短編集もあったのか~。本の帯には、トーベ・ヤンソンの写真と「静寂と孤独を心から楽しむ、フィンランド多島海での短い夏の日々」とある。

少女ソフィアと祖母は、それぞれトーベ・ヤンソンの姪っ子(ムーミン漫画を描いていた弟の娘)と母がモデルだそうだ。フィンランドの多島海(約3万の島があるという)に浮かぶ小さな島で、高緯度の短い夏を過ごすソフィアとパパとおばあさん。巻末には、トーベ・ヤンソン自身が毎夏を過ごしていたという島の写真があって、その写真を見ながら、おばあさんとソフィアはこういう島で、歩き、遊び、けんかをしたのかと思った。

70の歳の差があるというふたりの関係は、年長だからといばることもないし、年少だからと適当にあしらわれることもないし、どちらかがどちらかの言うままになることもない。読んでいてかなりおもしろい。

これからお祈りにいきます(津村記久子)

これからお祈りにいきますこれからお祈りにいきます
(2013/06/28)
津村記久子

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こないだ『ダメをみがく』を読んで、しばらく読んでなかった津村さんの小説を久しぶりに借りてくる。1年前に出た単行本のタイトルは、収録されている小説のタイトルとは違って、収録の2篇は「サイガサマのウィッカーマン」と「バイアブランカの地層と少女」というもの。

メインの「サイガサマ」の話は、神様に「これだけは取られたくない」ものを申告して祈る祭りがある町(大阪府の南部とおぼしい架空の町=雑賀町)が舞台。そういう祭りのことが頭に入ってくるまでは、巻頭の8ページ目にある文章がなんど読みなおしてもわからなかった。

小学生のときの工作で、シゲルはうっかり四本しか指がない右手をつくってしまって、隣席の女子にこう言われるのだ。「高嶋君てなになん、何とられてもええのん、だって高嶋君自身はちゃんと指五本あるやん、せやからこれをカゴに入れて燃やしたって、右手を取られたくないってことにはならんのとちがうのん?」「せやから神様は、高嶋君からなんでも取り放題やんね」(pp.8-9)

何とられてもええ?
右手を取られたくないってことにはならん??
神様はなんでも取り放題???

[坂口安吾作品シリーズ]夜長姫と耳男(近藤ようこ)

夜長姫と耳男[坂口安吾作品シリーズ]
夜長姫と耳男

(2008/03/28)
近藤ようこ

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『桜の森の満開の下』を読んだら、その前にマンガにした『夜長姫と耳男』があるというので、図書館で借りてきた。

これもなんだかおそろしい話であった。

飛騨随一の名人とうたわれた匠の親方に「いいか!珍しい人や物に出会った時は目をはなすな」とおしえられた耳男(みみお)。大昔の師匠から順繰りにそう言われてきたという教えのとおり、夜長姫に初めて会ったとき、一心不乱に見つめた。死期の近い親方から、オレの代理にと選ばれた耳男は、使者に連れられて夜長の村へ向かい、長者にひきあわされる。

長者に耳の大きさを言われ、顔は馬のようだと言われ、姫にもほんとうに馬にそっくりだと笑われて、頭はさかまきながら耳男は一心不乱に姫の顔を見つめた。

長者は耳男をふくむ三人の匠を集め、姫の今生後生を守る仏・ミロクボサツの姿を造り、さらにはそれをおさめる厨子を、姫が十六になる正月までに仕上げるようにと依頼した。姫の気に入った仏を造った者には、夜長姫の着物を織る美しいエナコを褒美に進ぜようというのだ。

夕凪の街 桜の国(こうの史代)

夕凪の街 桜の国夕凪の街 桜の国
(2008/04/10)
こうの史代

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広島の被爆者でもある加納実紀代さんの『ヒロシマとフクシマのあいだ』のことをきいて、空白の十年(被爆者がなんの援護も受けずにいた十年)の話も書かれているらしく、『夕凪の街 桜の国』もこの十年の話よなーと思って、枕元に積んでいた漫画を久しぶりに読む。

空白の十年は、まさにこのタイトルの被団協(広島県原爆被害者団体協議会)の記録『空白の十年』を前に読んだことがある。

広島で被爆した皆実(みなみ)。原爆スラムともいわれた、原爆ドーム北側の集落に母と暮らす。父は被爆して翌日に死亡、妹はみつからないまま。二ヵ月後に姉が倒れ、紫のしみだらけになって死亡。

それから十年。やけどの痕が残る自分の左腕とおなじように、からだのどこかに痕を残した姿を銭湯で目にしながら、皆実は思う。

ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件―〈ヘイトクライム〉に抗して(中村一成)

ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件―〈ヘイトクライム〉に抗してルポ 京都朝鮮学校襲撃事件
―〈ヘイトクライム〉に抗して

(2014/02/26)
中村 一成

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もう閉校になってしまったが、私が1年生に入学して5年生の終わりまで通った小学校は、もともと隣り合う2つの校区の小学校の児童数が増えたことによってできた"調整校"で、敷地の都合もあったのだろう、運動場と校舎は道路をまたいで住所が違い、道路をみおろす陸橋で行き来するという変わったつくりだった。

初めて小学校に入った子どもは自分の目の前の経験しか知らないから、学校とはそういうものだと思っていた。今振り返ると、あれはほんとに珍しかった。

『ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件』で在特会の襲撃を受けた京都第一初級学校の様子を読みながら、自分の通った小学校でもしこのようなことがあったとしたら…と想像した。

[坂口安吾作品シリーズ]桜の森の満開の下(近藤ようこ)

[坂口安吾作品シリーズ]桜の森の満開の下
[坂口安吾作品シリーズ]
桜の森の満開の下

(2009/03/30)
近藤ようこ

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『戦争と一人の女』を読んだあと、他の安吾作品を近藤ようこがマンガにしたのがあると知って、図書館にあったのを借りてきた。

夜中に読んだらちょっとこわくなってしまった。

あとがきで、近藤ようこは「この小説の内容が私にはサッパリわからないのだ」(p.190)と書いている。そして、「しかたないので、わからないことに正直なまま、安吾が書いているとおりに描いた。わからないのに、なぜ「桜の森の満開の下」はこんなに面白いのだろう。こんなにシンとして懐かしい気持ちになるのだろう」(p.191)と続ける。

主人公は、考えなくとも生きていくことができる山賊の男。鈴鹿峠を越えていこうとする人を襲い、逆らわねば命は助けてやるが、逆らった者は容赦なく殺す。女がいれば連れ帰って女房にする。八人目の女房をさらったとき、女の亭主を殺した。

高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?(大理奈穂子、栗田隆子、大野左紀子、水月昭道)

高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?高学歴女子の貧困
女子は学歴で「幸せ」になれるか?

(2014/02/18)
大理奈穂子、栗田隆子、大野左紀子
水月昭道(監修)

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図書館で予約していた『高学歴女子の貧困』がまわってきて読む。読みはじめてみたが、正直つまらなくて、途中から(もう読まずに返そうかなー)と思いながら、もうしばらく読んでいた。

最後の章、4人の著者のうち、大野左紀子さんが書いた部分にたどりつき、その5章「「アート系高学歴女子」のなれの果てとして、半生を顧みる」はわるくなかった。大野さんの別の本『アーティスト症候群』もぜひ読んでみたいと思った。でも、それ以外の人が書いた箇所は、私にはかなりイマイチだった。

グレイがまってるから(伊勢英子)

グレイがまってるからグレイがまってるから
(1996/12)
伊勢英子

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伊勢英子のこの本を久しぶりに読みおえたら、奥付の脇に私は日付とサインを入れていた。これも1999年に買った本のうちのひとつだったかと思いだす。母が死んだ春のあと、死がどうのこうのというような本を一時期ずいぶん買ったのだった。

伊勢英子がグレイという犬のことを描いた本は、『気分はおすわりの日』を読んで、そのあとに文庫になっていたこっちの本を買ったのだった気がする(あるいは逆か)。

伊勢英子を初めて読んだのは『カザルスへの旅』で、その名と絵をくっきりおぼえたのは、のちに『「死の医学」への日記』としてまとめられた柳田邦男による毎日新聞の連載だった。伊勢さんは週一度の連載に挿絵を描いていて、私は当時、毎週それを切り抜いていた。(連載時の伊勢さんの絵は、『画集「死の医学」への日記』として別に本になった。)

今しらべてみると新聞連載は1994年のことで、その年の春には祖母が急死した。それで私はあの連載を切り抜いて読んでいたのかもと思う。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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