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読んだり、書いたり、編んだり 

喪の作業―夫の死の意味を求めて(半田たつ子)

喪の作業―夫の死の意味を求めて(半田たつ子)喪の作業
―夫の死の意味を求めて

(1992/07)
半田たつ子

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本棚をあちこち片づけていて、久しぶりにこの本を読む。母が死んだあとに読んだものなので、もう10年以上ぶりか。うっすらとおぼえている箇所もあるし、まるでおぼえていない部分もあって、そのことに過ぎた年月を感じた。

半田さんの夫は、体調の異変から2月に会社を休んで病院にかかり、それからあっという間に容態がわるくなって、その年の9月末に亡くなられた。1990年のこと。

この本は、半田さんが夫の死を「社会化」しようと、入院時の日誌から看取りの日々を明らかにし、その後のご自身のグリーフワーク(癒しの作業)を綴り、末尾に夫亡きあとに受け取ったさまざまな人からの手紙のうち掲載を許されたものを収めている。

今回読んでいて私が気持ちをひかれたのは、半田さんの夫が転院して最期まで過ごした東京衛生病院で、看護婦さんや看護実習の学生さんに接した半田さんが「素敵な看護婦さんを育てた学校をいつの日か訪ねたい」と、夫を見送って1年の後に、その学校を訪れた場面。

座談の思想(鶴見太郎)

座談の思想座談の思想
(2013/11/22)
鶴見太郎

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年明けに、いちど図書館で借りたものの、ほとんど読めないままいったん返し、予約待ちをしてまた借りてきた(私の後ろにもまだ待ってる人が)。

複数の人が寄って交わす「座談」というものは、その場を同じくする人たちの応答によって、新しいアイデアをうんだり、考え詰めて書かれた文章とは違って、その人の考えの幅や、相手に向き合う誠実さをみせてくれもする。

そんな「座談」が、日本の近代の思想空間でどんな位置をしめてきたか、中江兆民の『三酔人経綸問答』を参照しながら、著者は「結論はなくてもいい」という、未完ゆえにこそ未来に開かれている座談の特質を示す。

そして、『文藝春秋』の誌面で、編集者として多くの座談会を企画した菊池寛の試みから、「聞き手・司会が出席者を尊重し、かつ出席者同士が尊重する関係にあること」(p.127)が優れた座談、良い座談をうむという。

▼有名無名を問わず、その人物からしか聞けない言葉を引き出すこと、さらにそれらの言葉に誘発されて、座を同じくする人士から思いがけない話が聞けること──これが本来の菊池が想定する座談の在り方であった。(pp.124-125)

第九軍団のワシ(ローズマリ・サトクリフ)

第九軍団のワシ第九軍団のワシ
(2007/04/17)
ローズマリ・サトクリフ

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上橋菜穂子さんの話をまとめた『物語ること、生きること』を読んで、このサトクリフ作品を読んでみたいと思っていた。こないだの「ブックマーク」81号でも紹介されていた。

舞台は紀元2世紀のブリテン。ローマ帝国の辺境、属州であったこの地で、ローマの軍人マーカスが、かつて自分の父が率いていた第九軍団の消息を探す旅に出る物語。原著は1954年。

そもそも、第九軍団は、ローマ帝国がこの北方(カレドニア)の先住民族たちを平定しようと進軍していたのだったが、その後、消息不明となる。ローマ軍団の象徴である《ワシ》も消えた。軍団は戦って殲滅されたという噂があり、失われた《ワシ》はずっと北の方、どこかの氏族の神殿で神としてあがめられているという話もあった。

父なき後、長じて軍人となったマーカスは、司令官として赴いた辺境の砦で、ブリトン人の襲撃をうける。その戦いで、マーカスは敵の戦車から御者をひきずりおろしたものの、車輪の下敷きとなって足を負傷する。軍団で生きていく人生はあきらめねばならなかった。

感応連鎖(朝倉かすみ)

感応連鎖感応連鎖
(2013/02/15)
朝倉かすみ

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母と娘の関係がごにょごにょっと書かれた連作集。墨川節子、秋澤初美、佐藤絵理香、新村由季子の4人の名がそのまま章タイトルになっている。

冒頭の節子の章から、ぎょっとする。節子の母・和代は、娘のことを「セシルちゃん」と呼ぶのだ。私立女子高に合格した節子に「セシルちゃん、合格おめでとう」と言い、夫の時彦が「セシルってだれだ」と口を挟む。

自分を「セシルちゃん」と呼ぶ母のことを、15の娘は冷徹なまでに観察している。15にしては達観のほうだ、と自己分析もする。

「おかあさまは、セシルちゃんの努力を知っています」
「おかあさまも、セシルちゃんと一緒に努力してきました」
「セシルちゃんが合格したということは、おかあさまが合格したのも同じなのです」
「だって、セシルちゃんとおかあさまは一心同体なんですもの」

母はその巨大な顔面をあげて、うっとりと、あらぬほうを見あげてほほえんでいる。口もとはだらしなくゆるんでいる。娘は、母のこのほうけたような表情にはとっくに慣れている、と思う。

母という病(岡田尊司)

母という病母という病
(2012/11/02)
岡田尊司

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「ブックマーク」81号で紹介されていた本を図書室で見かけて借りてみる。「母という病」のネーミングは、びみょうなところだと思う。子どもの育ちにアタッチメント(愛着)形成が大切だということは分かるし、それが「母」を対象とするケースが多いことも理解するけれど、「母という病」「母」「母」「母」をしつこくしつこくくりかえす意味は、私にはよくわからなかった。

著者が依拠しているのは、ボウルビィのアタッチメントセオリー(愛着理論)にいろいろくっついたようなものだと思われる。子どもがまともに育っていくには、2~3歳くらいまでの乳幼児期のあいだ、特定の大人と親密な関係を築くことが大切で、そうやって育つことで、人間関係や社会関係をうまくやっていけるようになる、といった話(だったはず)。

この「特定の」というところがキモで、それは必ずしも産みの親、母親に限らない、子どもに一貫して愛情をそそぐ特定の存在であればよいのだという研究だったと記憶する。その特定の大人との間で愛着関係をもった子どもは、ありのままの自分の存在に不安がなく、基本的信頼感をもって世界にふみだすことができるが、こうした特定の大人の存在が不安定だったり、あるいはそういう大人がいなかった場合には、子どもは存在の根っこをゆるがされ、大人になってもちょっとしたことで不安に陥りやすい、といわれる。

著者の書いているところを引けば、こういうことだ。

みどりのゆび(モーリス・ドリュオン)

みどりのゆびみどりのゆび
(2002/10/18)
モーリス・ドリュオン

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へのへのもへじ文庫で借りた岩波少年文庫。このタイトルにはおぼえがある。たぶん子どもの頃、寝る前に読んでもらったりしたうちの一冊だ。

が、少年文庫の装幀が最近のはカラーのカバーをかける方式になっていて、私の記憶にあるモノクロのイラストに確か緑色をあわせた装幀とはなんだか一致せず、表紙の絵はこんなんやったけなーと思う。中を読むと、私はほとんどまったく忘れているようで、記憶にない話だった。でも、おもしろかった。

ミルポワルの町の金持ちの家にうまれたチトは、8つの歳まで家で読み書き算の手ほどきを母からうけた。それからチトは学校へやられた。チトはやる気じゅうぶんだったが、なぜか黒板をみていると眠気がやってくるのだった。そして、居眠りチトは、学校へ3日通ったあとに、先生からこんな手紙をもたされて帰される。

「あなたのお子さんは、ほかのお子さんとおなじではありませんので、わたくしどもではおあずかりいたしかねます。」(pp.36-37)

るきさん(高野文子)

るきさんるきさん
(1996/12)
高野文子

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私も買ってもってるマンガが、「トイレで読んで」と送られてきた。私ももってるはずが、本棚に見当たらず、送られてきたのを久しぶりに読む。文庫版は1996年に一刷で、送られてきたのは2008年の十一刷。

送り主の感想は「新聞だか何だかのコラムで「おもしろい」と書いてあったので買ったのですが… 別につまらなくはないけど、言う程おもしろくもない… 主人公はかわいい。にくめない。時代設定が昭和っぽい」。

私はこのマンガは笑いながら読んだ記憶がある。さて、久しぶりに読んでどうか。

いのち輝く日―ダウン症児ナーヤとその家族の旅路(ミッチェル・ズーコフ)

いのち輝く日―ダウン症児ナーヤとその家族の旅路いのち輝く日
ダウン症児ナーヤとその家族の旅路

(2004/05)
ミッチェル・ズーコフ

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『アシュリー事件』『私は私らしい障害児の親でいい』『死の自己決定権の行方』などの著者・児玉真美さんから、「選ばないことを選んだ夫婦の記録」と教えられて、読んでみる。

会社で管理職のティアニー(31歳)、大学院生のグレッグ(34歳)の2人は、ピルをやめてから1年近く経って、ようやく妊娠の徴候を知った。喜びあふれる2人。超音波検査も問題なく、胎児診断スクリーニング検査も陰性だった。

出産前の最後の休暇に出かける前に、いつものように産科での定期検査をうけたとき、超音波で、胎児の心臓には部屋が3つしか見当たらないと告げられる。詳しく調べなおしても「胎児の心臓に穴が開いている」という結果は変わらなかった。医師は、こうした心臓の奇形はダウン症のような染色体異常をもった赤ちゃんにみつかることがあるという。

確かなことを知るには、羊水穿刺(アムニオ)を受けなければならない。もし受けるなら、今すぐ。

このドキュメントは、ティアニーとグレッグが、自分たちの納得いく選択をするために胎児診断を受け、妊娠中絶できる期限までの2週間のあいだに、双方の親族や、医師、遺伝カウンセラーなどとも意見を交わしながら、泣き、混乱し、悩みくるしんだ果てに、妊娠継続を選び、そうしてうまれた娘のナーヤが心臓の手術をうけ、2歳になるまでを描く。

百合のリアル(牧村朝子)

百合のリアル百合のリアル
(2013/11/26)
牧村朝子

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"本当の「モテ」を考えるMAYAの恋愛セミナー"にやってきたヒロミ、アキラ、はるか、サユキと、マヤ先生のやりとりのもよう(マンガ含む)に、著者の「まきむぅからの手紙」を挟んだつくりの本。

「はじめに」で著者が、これが何のための本なのかを書いている。
この本は、レズビアンのためだけの本ではありません。同性愛者の自伝でもありません。「レズビアンという概念と、牧村朝子という事例」を通して、男とか女とか、同性愛者とか異性愛者とか、オタクとか優等生とか、B型とかA型とか、色々ザクザク切り分けられてるこの状況との、向き合い方を見つけるための本です。(p.4)

別のページにはこうも書いてある。
▼この本は、「『レズビアン』というあり方を通して、個としての生き方を考える」本です。…(略)…社会の中で人を区別したり、まとめたりするための言葉はたくさんあります。そういうカテゴリの箱に入ったり入れられたりする前の、ひとりひとりに、あなた自身に、その人自身に目を向けてみてほしい─そういう気持ちでこの本を書きました。(pp.32-33)

そもそも「モテる」とはどういう状態のことか、「モテる人」とはどんな人のことか、マヤ先生はみんなの考えを聞いていく。

ルポ 虐待 大阪二児置き去り死事件(杉山春)

ルポ 虐待 大阪二児置き去り死事件ルポ 虐待 
大阪二児置き去り死事件

(2013/09/04)
杉山春

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3月の終わりに『永山則夫 封印された鑑定記録』を読んだとき、まだ読んでなかったけれど、『ルポ 虐待 大阪二児置き去り死事件』は、たぶん同じような本なのだと思った。そして、4月半ばに『ルポ 虐待』を読んだあと、もういちど『永山則夫』を読んだ。

二つの本は、やはり似ていた。

"母"の呪いにさいなまれるという点では、『ルポ 虐待』は、『障害のある子の親である私たち』にも似ている気がした。母はこうあらねばならない、親なのだからこうすべきだといった呪い、「やさしく愛情にみちたお母さん」という呪いが、母でもある女性をくるしめることがある。

2010年の夏、幼い2人の子どもの死体が大阪市内のマンションで発見された。2人の母親は「子どもを放置して男と遊び回っていた」とものすごい非難を受けていた(私はあとから頼まれてこの事件の発覚当時の新聞記事を図書館で集めたこともあって、よけいに印象に残っている)。

海炭市叙景(佐藤泰志)

海炭市叙景海炭市叙景
(2010/10/06)
佐藤泰志

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「ブックマーク」の読者さんがこの著者のファンだというのもあって(「海炭市叙景」は映画にもなっているそうだ)、こないだ新聞でこの『海炭市叙景』のことと海炭市のモデルといわれる函館市の風景が写真入りで紹介されていたのを読んで、そうや読んでみようと図書館で借りてきた。

首都がバブルに沸いていたころ、函館では青函連絡船が廃止されたのだという。小説の時代は、おそらくそのころ。炭鉱も漁業も造船も傾きつつある地方都市で暮らす人たちが、短編を重ねるようにして描かれていく。

函館へは行ったことがないけれど、『海炭市叙景』を読んでいると、まさに"叙景"で、知らないなりにその風景が浮かんでくる。そして、地方都市の国道沿いの風景がどこも似通ってきたのはこういうことなんやろうなあという海炭市の景色の変化も見えるようだった。

ダメをみがく “女子”の呪いを解く方法(津村記久子、深澤真紀)

ダメをみがく “女子”の呪いを解く方法ダメをみがく
“女子”の呪いを解く方法

(2013/03/28)
津村記久子、深澤真紀

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「ブックマーク」80号でも紹介されていて、そのうち読んでみたいと思っていた本を、発刊から1年余り経ってやっと読む。

津村さんの本は『カソウスキの行方』を読んだのが最初だった。そのあと、当時の同僚さんとおもしろいおもしろいと二人して出てた本を追いかけて読み、大阪に住んではるというので出版社経由で問い合わせて、職場のイベントで話をしに来てもらったこともあった。その後も、雑誌掲載を見つけたら読んだり、本になったのも読んでいる。この5月からは日経電子版で「しごと連作」と題した連載が始まっていて、こないだ第1回を読んだ。

深澤真紀さんは「草食男子」を命名したとかで名前はなんとか知ってるけど、著書はたぶん読んだことがない(編集者としても仕事をしてはるので、何かは読んでるのかも)。

この『ダメをみがく』は、二人それぞれの「ダメさ」を知ってほしいという津村×深澤の対談で、「仕事編」と「生活編」で仕切って整理されていて、目次の小見出しをずらずら読んでいくだけでも、なんかおかしい(この小見出しずらずら目次だけで6ページ)。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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