読んだり、書いたり、編んだり 

4月に読みおわった本

4月に、てっぺんから最後まで読んだ本(と、見た映画)のリスト。他に何冊か読みかけの本がある。

震えるような寒い日もあり、夏日もあった卯月。だんだん気温があがってきて、天気のよい日には自転車をこいでだいぶ遠くまで出かけたりもした。貧血がひどくて息切れしていた頃を思うと、ほんとにカラダが楽になった。

まる15年経つ母の命日がすぎて、若い頃の母を知る人たちからの便りに、今の私と同じ年頃の母がどんなだったかが書かれていたりして、「母」ではない母の一面を見るような気がした。

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移行期的混乱 経済成長神話の終わり(平川克美)

移行期的混乱 経済成長神話の終わり移行期的混乱 
経済成長神話の終わり

(2013/01/09)
平川克美

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2006年をピークに日本の人口は減ってきている。日本の人口動態を1000年以上のスパンで見ると、人口が減るという経験は、これまで日本になかった初めての事態だ。

▼…将来に対する不安が人々の頭上に暗雲のように立ち込めていた時代、つまり戦国の世の中においても、戦争前夜においても、敗戦後の荒廃の中でも、日本人の総人口は減るどころか増え続けてきているのである。
 では、将来の不安ではないとすれば、何が、日本の総人口の減少を促しているというのか。
 それを探る論考を綴ったのが本書である。(pp.8-9)

(「日本人の総人口」と「日本の総人口」が混じってるところと、前者の言葉遣いがちょっと気になる。)

戦後60年という時間が経った。生々しい現実の渦中にあっては、何が起きているかを知ることはできなかった。だが今、時間を経て、多少は見晴らしのよい場所に立ち、「現在から時間を溯り、もう一度歴史の場面に自分を降り立たせること」(pp.10-11)によって、歴史を体の中に入れて理解することができるのではないか、と著者は考える。

そういう認識に立って、この本で著者は「将来のわたしたちという仮想的な視座から見れば、現在が大きな時代の転換期であり、同時に現在は移行期的な混乱期であるという仮説を検証してみたい」(p.39)という。

すいか(木皿泉)

すいか 1 すいか 2

「ブックマーク」81号で、テレビドラマのシナリオであるこの本を数年ぶりに再読して、やっぱりおもしろかった!というのを読んでいて、文庫になった1と2を図書室で見かけて借りてくる。

テレビドラマ「すいか」は2003年に放映されたというのだが、今と同じくその頃もほとんどテレビを見てないので、私は全く知らないのだった。舞台は東京の三軒茶屋にある朝夕食付きの下宿「ハピネス三茶」で、34歳の信金OL・基子をはじめ、ここに暮らす4人を中心に、10話が書かれている。

34歳の基子は、同じ信金でもう14年勤めている。一緒に入った同期のほとんどは結婚やら何やかやでいなくなり、残っているのは馬場チャンだけ。一緒にお弁当を食べていたその馬場チャンが、3億円を横領して行方をくらますという「事件」のあと、ひょんなことから基子は、実家を出て、ハピネス三茶に住むことに決めるのだ。

本の雑誌370号(特集 図書館を探検する!)

本の雑誌370号本の雑誌370号
特集 図書館を探検する!

(2014/03/10)
本の雑誌編集部

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『本の雑誌』はこれまでもたま~に読んでいたが、図書館特集はとくにおもしろかった。特集以外の記事もすみずみまで読んだ。「新刊めったくたガイド」など本への愛がみちていて、読みたくなる。

図書館について考える系の雑誌というと、『ず・ぼん』が近所の図書館にあって、それを時々読んできたけど、書いてる人やインタビューされてる人は図書館員や図書館界隈の人が多く、それに比べると『本の雑誌』は"本を読む"人の側、図書館でいえば借りて読む人の側から書かれてる感じがした。あと、出版社の人や本を書いてる人(著者)の話もあった。

巻頭の「いま図書館はどうなっておるのか!」の座談会。
図書館がブックリストを作ったり、特集展示をしたりすることについての話が、私にはおもしろかったし、その理屈もへぇーと思った。

モグラの鼻 ゾウの鼻(小原秀雄×谷川雁)

モグラの鼻 ゾウの鼻(小原秀雄×谷川雁)モグラの鼻 ゾウの鼻
(1990/04)
小原秀雄×谷川雁

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へのへのもへじ文庫で借りた本。ちくまプリマーブックスに入ってる本は、好きでよく読んでいた。

借りたときには気づかなかったが、動物学者・小原秀雄の対談相手は谷川雁(『工作者宣言』とか『北がなければ日本は三角』の人)だった。長野へ移住したあとの谷川がやっていた『十代』という月刊誌で1985年から3年かけてとびとびに掲載されたものが元だという。なので、その後の研究などがすすんでいれば、科学の世界としては「分かったこと」が増えたり、解明されて書き換えられたこともあるのかもしれないが、それはともかくおもしろかった。

動物好きなたちではないが、山麓に住んでいるため、動物に会うし、関心はあるという谷川は、雪道についた足跡から(子づれの母ギツネがびっこをひいているのでは)と考えたりする妄想癖もつよく、こんな勝手な話をバカにせず整理してくれる専門家はいないものかと考えていたそうだ。

谷川のこわいもの知らずの質問に対して、にこにこ笑って答えてくれたのが小原秀雄。
▼どんな「珍問奇問」にも打てばひびくように答が返ってきます。それに耳かたむけていると、動物というものはなんとしなやかな存在であることか。それを見つめる動物学の基本態度というものも、なんと透明でほがらかであることか。(p.206、谷川)

ばれん―本ばれんの製法と使い方(後藤英彦)

ばれん―本ばれんの製法と使い方ばれん―本ばれんの製法と使い方
(2010/06)
後藤英彦

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3月にへのへのもへじ文庫でやった木版画の三色摺のときに、村田美菜子さんに「ばれん」の話を聞いた。そのあと図書館でこんな本があるとおしえてもらったうち、すぐ借りられた版画の本のあと、どなたかが借りておられた『ばれん―本ばれんの製法と使い方』を待っていた。

これは「現役ばれん職人による本ばれんの製法と使用法」を、写真やイラストをたくさん使って解説した本だった。3月に「ばれんの中はこんな風になっています」と村田さんに見せていただいたものが、竹皮を切ってばれん芯の元となる「ばれん綱」を作るところから、当皮(ばれん芯を収める和紙製の皿状の器)の作り方、さいごは竹皮に包むところまで、懇切丁寧に手順を追って書いてある。

竹皮を裂くための「竹皮裂き用針」や、ばれん綱を巻いて芯として仕立てるための「仕立て用アクリル板」、当皮を作る際に使う糊「わらび粉渋糊」(和傘や提灯、金箔を貼る糊としても使われる)などの作り方もあって、もうほんとうにこの本に添って、材料を集め、道具を揃えてやっていけば、「本ばれん」が作れる(はず)と思えるつくり。

物語ること、生きること(上橋菜穂子、構成・文 瀧晴巳)

物語ること、生きること物語ること、生きること
(2013/10/16)
上橋菜穂子
構成・文 瀧晴巳

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上橋菜穂子さんから話を聞き、この本を構成して書いた瀧晴巳さんという人は、サイバラの本(『この世でいちばん大事な「カネ」の話』)をまとめた人でもあるらしい。

上橋さんが、次々と作品も書きつつ、大学で「文化人類学」をやってる学者だというのは、どういう具合になっているのかと(森博嗣のような人なのか?と)前から思っていたが、作家になりたい、漫画家になりたい、という思いがまずあって、その後、作品のためにあれも知りたいこれも知りたいという中で、「わが身で経験せよ」という文化人類学に進んだということだった。

上橋さんがこれまで読んできた本、その本のどこにどうワクワクしたか、こういう視点がおもしろかったというような話がいっぱいあって、読んでみたいと思う本がたくさん出てきた。巻末にそれらのリストがあるのもいい。

永山則夫 封印された鑑定記録(堀川惠子)

永山則夫 封印された鑑定記録永山則夫 封印された鑑定記録
(2013/02/28)
堀川惠子

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3月終わり、内科の長ーーい待ち時間のあいだに読み、4月になってもういちど読む。

雑誌『SIGHT』の冬号では、斎藤美奈子選「青春の3冊」のうち1冊が、この『永山則夫』だった(他の2冊は『世界泥棒』『青春と変態』)。

高橋源一郎が、「『無知の涙』だと、勉強する機会もなかった青年がああいう事件を起こして、それで獄中で学んで書いたっていうストーリーだったでしょ。違うんだよね。…(略)…僕たちは『無知の涙』のせいで、永山に関するイメージを持っていたけど、違ったんだなっていうふうに訂正させる力はあるよね」(『SIGHT』p.163)と語っている。

私も永山則夫の『木橋』『無知の涙』を読んだことがあるけど、まったく知らなかった石川鑑定の存在、1年近くかけて永山と対話した石川医師によるその鑑定記録を読んでみて、私は永山作品の何を読んでいたのだろう…と思った。

永山則夫による連続射殺事件は私が生まれる前の年に起こり、永山は私が生まれるちょっと前に逮捕され、1997年に死刑が執行された。当時、職場で新聞7紙のクリッピングを担当していた私は、朝刊の大きな見出しをおぼえている。永山はいわゆる団塊の世代にあたり、『二十歳の原点』の高野悦子も同年生まれだ。私とちょうど20違う。

スタッキング可能(松田青子)

スタッキング可能スタッキング可能
(2013/01/18)
松田青子

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3月初めに買った雑誌『SIGHT』の冬号掲載の「ブック・オブ・ザ・イヤー2013」で、斎藤美奈子と高橋源一郎が「文芸編」で語ってる中に、「労働疎外の2冊」としてこの『スタッキング可能』『工場』(「穴」で芥川賞をとった人の作)がとりあげられていた(斎藤選)。

表題作がちょっと分かりにくいので、先に他のを読んだほうがいいと書いてあったのにしたがって、「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」という漫才のような散文詩のような小説3本を先に読んで、そのあと他の2本「もうすぐ結婚する女」と「マーガレットは植える」を読んで、最後に表題作「スタッキング可能」を読む。

「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」の3本は、平田俊子の散文詩を思わせるところがあった。表題作を含むあとの3本は、姫野カオルコか山崎ナオコーラか津村記久子かという感じで、ちょっとフェミのツッコミ入ってる風な、氷河期世代風な…小説だった。

1985年のクラッシュ・ギャルズ(柳澤健)

1985年のクラッシュ・ギャルズ1985年のクラッシュ・ギャルズ
(2014/03/07)
柳澤健

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近所の本屋で、文庫の新刊が面陳されてるところで、これが気になり、ぱらぱらーっと「あとがき」などをめくると、井田真木子さんの名前が出てきた。著者は、井田さんの担当編集者だったことがある。読んでみたくて買ってきた。

私が井田さんの本でおぼえているのは『同性愛者たち』(文庫になった『もうひとつの青春―同性愛者たち』が2012年に再刊されている)。その後、若くして亡くなられたことが記憶に残っている。

みどりの小鳥―イタリア民話選(イタロ・カルヴィーノ)

みどりの小鳥―イタリア民話選みどりの小鳥
―イタリア民話選

(2013/12/18)
イタロ・カルヴィーノ

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カルヴィーノの新しい本が出てるのかーと、本屋へ見にいって買ってくる(読んだあとは、へのへのもへじ文庫に持っていこうと思い)。『マルコヴァルドさんの四季』をへのへのもへじ文庫で借りて読んだのは、2年ほど前。

訳者あとがきによると、カルヴィーノが200篇を編んだ『イタリア民話集』(邦訳は岩波文庫の上下巻)のなかから選ばれた34篇にエマヌエーレ・ルッツァーノの挿絵をつけて刊行されたのが、この『みどりの小鳥』だという(挿絵は岩波少年文庫にも掲載されていて、これがまたいい)。

トリーノの出版社から民話集を編むよう要請をうけたカルヴィーノが、他の仕事を中断して1954年から民話探索にかかり、詳しい注と文献目録をつけてこの民話集を完成したのが1956年、挿絵入りの『みどりの小鳥』が刊行されたのが1972年というから、長い長い時間を経て、イタリアの民話を語りきかせてもらったような気持ち。

女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態(瀧波ユカリ、犬山紙子)

女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態女は笑顔で殴りあう
マウンティング女子の実態

(2014/02/08)
瀧波ユカリ、犬山紙子

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「「自分の方が立場が上」と思いたくて、言葉や行動で自分の優位性を誇示してしまうこと」(p.6)=「マウンティング」と名づけた行動について、瀧波ユカリと犬山紙子が対談しつつ、マンガを交えつつ、実際のシミュレーションもしてみせる本。

▼端的にいうと、「こんなことをされているというのを人に説明しにくい」というのがマウンティングの特徴だよね。(p.31)

最初のほうにこういう説明が出てきたせいもあってか、これは何かに似てるなー、見たことあるなーと思いながら読んでいた。「こんなことをされているというのを人に説明しにくい」ところは、狡猾なパワハラのようでもあるし、「マウンティング」と名づけたことで、パーッと見えてくるものや、気づくことがあるところは、「セクハラ」が名づけられた頃のことを思いだすし。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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