読んだり、書いたり、編んだり 

9月によみおわった本

9月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。いったん涼しくなってから、また暑くなり、台風がやってきてちょっと涼しくなってから、また暑くなり、9月の初めには、猛暑日でなければ平気~と思っていたが、いちど涼しくなってからぶりかえす暑さはなかなか体に堪えて(9月半ばまでやたら忙しかったこともあり)、9月のおわりには夏日でもちょっとしんどくなってきた。

それにしても暑さ寒さも彼岸までと違うんかい!とツッコミたくなるくらい、9月末日も最高気温は30度寸前…蚊も猛暑よりこれくらいのほうが楽なのか、9月下旬にやたら蚊にくわれた。

9月は、ふりかえると小説、物語を多めに読んだなと思う。再読もいくつか。このほかに読みかけが数冊。

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絶叫委員会(穂村弘)

絶叫委員会絶叫委員会
(2010/05)
穂村弘

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『夜露死苦現代詩』とか『言いまつがい』とか、あるいは路上観察学会風の本。最近、文庫になったらしく、装丁は見た目似てるが、絶妙に違う。

単行本では、表紙をナナメに横切って、こう書いてある。

 町には、偶然生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。
 不合理でナンセンスで真剣で可笑しい、天使的な言葉たちについての考察。


読んでいて可笑しい。外で読んだら、ちょっとやばい。そして、穂村弘が耳をそばだて、目をこらして採集してきたように、私も、周りの会話や表現に、もう少し念入りに注意を払い、みつけたものを、こんなんがあるねんでーと誰かに披露したくなってくる。

救いとは何か(森岡正博、山折哲雄)

救いとは何か救いとは何か
(2012/03/13)
森岡正博、山折哲雄

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森岡正博の本は、おおむかし(まだ学生だったころ)に、『「ささえあい」の人間学 私たちすべてが「老人」+「障害者」+「末期患者」となる時代の社会原理の探究』とか、『電脳福祉論』という本を買って読んだことはぼんやりおぼえているが(『「ささえあい」…』は高い本だった)、その後はあまり読まずにいた。山折哲雄も、むかし何か読んだことがある気がするが(誰かとの対談集かなにかだったような)、くっきりとした記憶がない。

去年の春に、「尊厳死って何やねん!?」の講演を聞いた後、ご飯を食べにいったところで、同席したKさんとSさんのカバンから「今読んでる本」と同じ本が出てきた。それがこの『救いとは何か』だった。そのことを、メーリングリストで思い出して、図書館で借りてきた。

現代社会においていかにして「救い」は可能か、そして、我々はみずからの「生と死」をどのように考えていけばいいか、というテーマで森岡正博と山折哲雄の二人が語りあっている。東日本大震災後におこなわれたという5章の対談が、いろいろと印象に残った。

大本営発表のマイク 私の十五年戦争(近藤富枝)

大本営発表のマイク 私の十五年戦争大本営発表のマイク 私の十五年戦争
(2013/08/09)
近藤富枝

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図書館でめずらしく予約本が一冊もきてなかったときに、新着棚で見かけて借りた本。「大本営発表のマイク」に「近藤富枝」とくると、昨夏に読んだ梯久美子の『昭和二十年夏、女たちの戦争』を思い出す。青春時代にあの戦争を経験した女性たち5人の話を聞いたもので、その冒頭が近藤富枝だった。

NHKアナウンサーだった近藤の話は、そこに引かれていた石内都の『ひろしま』の話とともに、印象深かった(『昭和二十年夏、女たちの戦争』のことは、昨年のWe180号の「乱読大魔王日記」で書いた)。

この『大本営発表のマイク 私の十五年戦争』は、卒寿をすぎた近藤が、編集部のすすめにより書きおろしたものだという。タイトルがこんななので、NHKアナウンサー時代のことが中心かと思ったら、この本は、近藤の小学校時代、女学校時代、そして東京女子大に通っていた時代に演劇に傾倒していたことなど、前半はNHK以前の近藤の来し方がたっぷり書かれていた。読んでいて、歳は違うが、沢村貞子の話を思いだすところがあった。

屋根裏の遠い旅(那須正幹)

屋根裏の遠い旅屋根裏の遠い旅
(1999/02)
那須正幹

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『ぼくらは海へ』を読んだときに、この旧作が文庫化されたときの那須正幹インタビュー「“巣立ち”の象徴を書きたかった」をネットでみつけて読んだ。そこでは、次の一冊としてこう語られていた。

──これまで「ズッコケ」の那須さんしか知らず、今回『ぼくらは海へ』を読んでびっくりした、という大人の読者に、“次の一冊”を薦めていただけますか。
那須 まずは『屋根裏の遠い旅』。短篇集の『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』。それから、『さぎ師たちの空』。これは我ながら快作ですよ。


それで、図書館で『屋根裏の遠い旅』を借りてきていた。もとは、1975年に偕成社から出されたもので、図書館にあったのは、99年に偕成社文庫として出たものだ。借りてきて積んだまま他の本を読んだりしてるうち、返却期限になり、また今度借りて読むかーと思いながら、最初をぴらっと開いてみて…そのまま読んでしまった。

巻頭には、日本国憲法第九条が引かれている。

これも『ぼくらは海へ』と同じ"小6モノ"で、6年3組の省平と大二郎が、北校舎の屋根裏から、パラレルワールドに迷いこむ。その世界は、日時は変わらず昭和五十×年四月三十日で、省平も大二郎もやはり6年3組なのだが、何かが違う。しだいにわかってきたことは、二人が迷い込んだのが「日本が太平洋戦争に勝った世界」であること。その世界では軍部が大きな力をもち、アジアでいまだに戦争を続けていた。

シティ・マラソンズ(三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵)

シティ・マラソンズシティ・マラソンズ
(2010/10)
三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵

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図書館で本を返したら、めずらしく予約本が一冊もきてなかったので(ほとんどいつも返す本と借りる本の交換状態)、ひさしぶりに書架をうろうろする。ふと見た小説の棚に『シティ・マラソンズ』があって、あれこれは単行本か、たしか文庫にもなってたよなと思いながら、借りる。

ニューヨークシティーマラソン、東京マラソン、パリマラソンを、三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵がそれぞれ書いた話。もとは、アシックスが期間限定でやったキャンペーン「マラソン三都物語」のために3人が書き下ろしたものだそうだ。

東京マラソンをネタにした小説は、こないだ奥田英朗の『我が家の問題』でも読んだ。三浦しをんは箱根駅伝小説『風が強く吹いている』を書いてるし、あさのあつこにも『ランナー』があるし、走ることをネタにした話はけっこうあるなと思う。

この『シティ・マラソンズ』でも、三人が書いた物語は、切り口がそれぞれ違って、おもしろかった。走る、マラソンに参加する、ということだけでなく、物語のなかのセリフが印象に残ったり。

こんなわたしで、ごめんなさい(平 安寿子)

こんなわたしで、ごめんなさいこんなわたしで、ごめんなさい
(2013/07/11)
平 安寿子

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7つの短編を読み終わって、表紙カバーを見ると、そこには、今読んだ女たちがごっちゃりと並んでいた。

こんな人、いるいる!と、なんだか誰かのことを(たとえば父、たとえば母、たとえば…)思い浮かべたりして読んでいると、それがだんだん自分のことのように思えてきたりする。タイラアスコは、よくまあこんなに人の心の機微を観察してるものよなあと思う。その表現力にもいつも感心する(ちょっと筆がすべりすぎてる気がするときもあるが)。

「カワイイ・イズ・グレート!」がとくにおもしろかった。

さよなら、日だまり(平田俊子)

さよなら、日だまりさよなら、日だまり
(2007/07/05)
平田俊子

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冒頭にはバスが出てきて、やはり平田俊子のバス好きは筋金入りだと思う。
▼阿佐ヶ谷駅の北口でバスをおりると風が強く吹いていた。(p.3)

「わたし」は、ユカリに紹介された占い師にこれから会うことになっていたが、バスを降りてもまだ迷いがあった。会ってからも気味悪さを感じ、その言動にも不審を抱いた。私も読みながら、こんなん詐欺師ヤロと思いながら、「わたし」がユカリやその占い師との関係にはまっていくのを、なんでなんでとツッコミを入れながら読んでいた。

こわーい小説だった。こわいというか、きもちわるかった。「なんでこんなことになってしまったのだろう?」という話を1冊かけて書いてある。「何が起きたのかわけがわからない」という話だが、ふとしたことで、そういう道を選んだつもりもないのに、その道を歩いていたというようなことが起こるのかもしれない、と思わせる。たぶん、そこがこわくて、きもちわるい。いったい、どこが分かれ道だったのか。

読み終わって、そのままではとても眠れそうになく、中村うさぎの『私という病』を続けて読んで、やっと落ち着く。

はしるってなに(和合亮一・文、きむらゆういち・絵)

はしるってなに

和合亮一さんの詩を、なんどか読んだ。
こないだは、ツイッター上のを読んだ。

https://twitter.com/wago2828/status/376363992223973378

爪を切っている「福島は完全にコントロールされている」唖然「福島は完全にコントロールされている」呆然「福島は完全にコントロールされている」全然「福島は完全にコントロールされている」嗚呼 深爪 (9月8日)

人はお金をつかわずにはいられない(久間十義、朝倉かすみ、山崎ナオコーラ、星野智幸、平田俊子)

人はお金をつかわずにはいられない人はお金をつかわずにはいられない
(2011/10/25)
久間十義、朝倉かすみ、山崎ナオコーラ、星野智幸、平田俊子

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平田俊子の『スバらしきバス』を読んだあと、図書館の所蔵検索をあれこれやっていて、これに平田の「バスと遺産」が入ってるのをみつけて借りてくる。もとは日経の電子版で連載されていた小説群で、同じようなつくりの本は『そういうものだろ、仕事っていうのは』を前に読んでいる。

本の装丁には全く見覚えがないのだが、平田の小説「バスと遺産」は読んだ覚えがあった。私はいつどこで読んだんやろ?

平田の「バスと遺産」を読んで、てっぺんの久間十義のから順に読む。どこか「お金」がらみの5つの話。

山崎ナオコーラの「誇りに関して」がおもしろかった。親から何も言われない、結婚とか出産とかのプレッシャーをかけてくる人が近くに全くいない31歳の依里(より)。医師として働いていて、年収は2000万。きっとすごく恵まれた場所にいるんだろうと思いながら、同世代の友人たちと会うとき、自分の生活ぶりを話すのを依里はためらってしまう。

エール!2 (坂木司、水生大海、拓未司、垣谷美雨、光原百合、初野晴)

エール! 2エール! 2
(2013/04/05)
坂木司、水生大海、拓未司、垣谷美雨、光原百合、初野晴

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これも、こないだの「ブックマーク」の本のアンケートに出ていたもの。"お仕事小説アンソロジー"の2集めは、1集めとは別の作者たち6人が書いている。それぞれの話に書かれているのは、

・フィットネスクラブのスイミングでキッズクラスを担当するインストラクター
・派遣社員で働きながら資格をとった新米の社会保険労務士
・クルーから昇進した宅配ピザ店の店長
・遺品整理業を営む親戚に雇ってもらったシングルマザー
・地方のコミュニティFMのパーソナリティー
・メーカーに勤める事務職OL

気づいてしまったクライアントの不正にどう対処するか、問題のあるクルーをどう教育するか、自分は雇ってもらった会社の役に立っているのか…働いていて、どこかで遭遇する問題に悩む主人公たち。

お友だちからお願いします(三浦しをん)

お友だちからお願いしますお友だちからお願いします
(2012/08/11)
三浦しをん

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こないだ読んだ『本屋さんで待ち合わせ』とセットみたいな本(とくに装画が)。『本屋さん』には並べて見ろ!と書いてあったので、図書館で『本屋さん』を返して、『お友達から』を借りるときに、並べてみる。図書館のカウンターの人が、「あ?同じ本じゃないんですね」と。

よく似た装画だが、なかみは、『本屋さん』が書評いろいろで、『お友達から』はエッセイ集。いろいろな媒体から「ご依頼をいただいて書いたエッセイ」で、「多くのかたの目に触れるであろう雑誌や新聞に掲載されるエッセイなのでよそゆき仕様である!」というもの。

三浦しをんのエッセイは、仕様がどうあれ、ぬふふふふと笑いを催すものが多い。この本も、あちこちで笑いを催す。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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