読んだり、書いたり、編んだり 

8月によみおわった本

8月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。暑かったこと、仕事もかなり忙しかったこと、「ブックマーク」の編集して、印刷して、発送してというのがあったこと…で、読む時間がやや削られた。何冊かは再読、何冊かはしまいまでいってまたてっぺんに戻っての2周読み。

たまにみるアクセス解析によると、どうも私が以前読んだ本が、夏休みの課題図書だか何だかに引っかかっているらしく、とある本の検索ヒット数がいちばん多かった。コピペの読書感想文は、ばれますよー。

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心配しないで、モンスター(平 安寿子)

心配しないで、モンスター心配しないで、モンスター
(2013/02/27)
平 安寿子

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「ブックマーク」も一段落して、いろいろと図書館で蔵書検索をする。平安寿子の新しいのはあるかな…とみると、今年出た本が空いていた。ので、借りてきて読む。

どうも全体に「歌ネタ」の短編らしく、表題の「モンスター」は、ピンク・レディーから(収録されてる作品のタイトルは「UFOに乗ってモンスターが行くぞ」)。そのほか、演歌にアニメソング、ビートルズやビーチボーイズ、フォスター、サンタナ等。

いつものように、毒を含みつつ、文章は軽快で小気味よく、おもしろい。
なんせ、冒頭から、こうだ。

▼女たちよ、覚悟せよ。ばあさんライフは、しんどいぞ。
 若い女の生きる道は、ばあさんライフよりきついのだ。
 というのは、ばあさんのひがみが言わせる嫌みだがね。
     (p.9、「丘の上の馬鹿になりたい」)

といっても、ばあさんばかりが主人公ではなくて、17歳の女子高生もいれば、定年後のおっさんもいれば、30代の女、20代OL、20代の宅配便ドライバー、などなど。それぞれの短編に、隣の短編の登場人物がちらと出てきたりもする。

彌太郎さんの話(山田太一)

彌太郎さんの話彌太郎さんの話
(2004/12)
山田太一

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これは、タイトルも初めて見る小説。「途方もない話だし、証拠もない。つくり話として読んでいただく方が書きやすい。」(p.7)と物語は始まる。

ある日の郵便物の中に、画廊の個展案内があった。個展の画家とは違う名で、「十一月×日の六時に小生も参ります 彌太郎」と添え書きがある。彌太郎、といって思い当たるのは一人。もう30年あまり会ってない知人のことだろうか。

両親が営んでいた浅草の大衆食堂に彌太郎さんがよく来ていたのは、昭和11、2年から17年までのこと。私は子どもで、彌太郎さんは10代後半から21くらいまでの間。彌太郎さんは、食べに来るとよく立ち話をしていた。

赤紙がきて、出征した彌太郎さんに再会したのは敗戦後、私は中2になっていた。アメリカ軍の仕事をしているという彌太郎さんに誘われて一緒に東京へ出た。彌太郎さんの仕事場にも立ち寄った。彌太郎さんはマッカーサー司令部でマッサージの仕事をしていた。そして、駅までの地図を書いてもらい、小遣いをもらって別れた。

彌太郎さんとはそれきりだった。彌太郎さんがある日突然いなくなったと、探しに来た人があった。住所録にあったところを端から訪ね歩いて、最後にうちに来たのだという。

それからほぼ30年、彌太郎さんから音沙汰はなかった。それが、急に「彌太郎」と添え書きのあるハガキだ。私は、六時にその画廊へ向かっていた。

異人たちとの夏(山田太一)

異人たちとの夏異人たちとの夏
(1991/11/28)
山田太一

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お盆に同居人の里へ行った帰り、あまり選択肢のないキオスクの本棚から、山田太一の『冬の蜃気楼』を買って読む。傑作長編3作が、3ヶ月連続で再刊されたものだという。数日後に同じく再刊された『終りに見た街』を買って読み、久しぶりに山田太一が読みたくなって、図書館で2冊借りてきた。『異人たちとの夏』は、ずいぶん前に読んだ気がしていたが、話を読んでも、こんなだったかとあまり思い出せなかった。

子どもの頃に死別した両親にそっくりな夫婦に出逢った主人公。12歳で死に別れて、顔のすみずみまでおぼえているわけではないけれど、自分の中にある両親のイメージにそっくりで、まるで父と母なのだ。だからといって、そんなはずはない。

「うち来るか?」と、父に似た男に誘われ、主人公はアパートの2階の一番奥の部屋へ招じ入れられる。嘘だと思ったが、そこには母がいた。声も母だった。涙がこみあげる。

だが、30代に見える夫婦が、48になる自分の親であるはずがない。「ほんとうは、ぼくの両親なんでしょう?」と何度聞きたかったことか。けれど、二人といると、自分が少年のような気持ちになった。少年がウイスキイを飲んでいてはいけないが、酔ったはずみで「お父さん」と呼ぶと、「なんだ?」と男は答えるのだった。

ぼくらは海へ(那須正幹)

ぼくらは海へ(那須正幹)ぼくらは海へ
(1992/05)
那須正幹

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「ブックマーク」にいただいた本のアンケートにあった本を借りてみる。ズッコケ三人組の那須さんの旧作。最初は1980年に偕成社から出ていて、私が図書館で借りたのは10年後余りに偕成社文庫になったもの。私が小学校の頃によく読んだ偕成社文庫はクリーム色の字に水玉の装丁だったけど、水玉時代よりもサイズもひとまわり大きくなってる気がする。

カバーの袖には、"「学校と塾との往復だけが人生じゃない」誠史たちは筏づくりに熱中し、そして航海に出る。大海原を夢みる少年たちを通し、現代社会の矛盾を描いて、児童文学界に衝撃をあたえた傑作長編。"とある。

住宅地から自転車で30分ほど、海に近い埋め立て地のあたりは、去年の秋に工事が中断するまでは、立ち入り禁止だった。工事が中断されてから、誠史[さとし]たちはおそるおそる荒れ地へ入りはじめた。塾へ向かう近道だったせいもあるが、海岸線にそって続く土砂の山やまを《アパラチア山脈》と呼び、山脈のむこうへまわりこんだところにあった小さなプレハブ小屋で、誠史たちは塾へ行く前に集まるようになった。

去年の秋から小屋のあたりですごすようになった、同じ進学塾に通う誠史、雅彰[まさあき]、邦俊[くにとし]、勇[いさむ]に、春になってから、同じ6年3組の嗣郎[しろう]が加わる。嗣郎は家が貧しく、自転車をもってないし、塾にも通っていない。父のいない誠史、妹おもいの雅彰、おとなびた邦俊、転勤族の勇…5人の6年生は、それぞれくっきりと個性がある。

差異の繋争点―現代の差別を読み解く(天田城介、村上潔、山本崇記(編))

差異の繋争点―現代の差別を読み解く差異の繋争点―現代の差別を読み解く
(2012/03)
天田城介、村上潔、山本崇記(編)

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リクエストしたら、ヨソの図書館からの相互貸借で届く。書いてる人に院生さんが多いこともあるのか、久しぶりに"論文論文"した文章群を読む。想定読者はどのあたりなのか(誰が読むのか)、かなりジャーゴン混じりで、正直読みにくい。7月終わり頃から読んでいたが、あまりの気温の高さに読めなくなり、第III部はちらっと見るくらいしかできず。また暑さがおさまった頃に、もういちど借りてみようと思う。

とりあえず読んだところまでで、印象に残ったところの一つは、太田典礼。「西陣地域における賃織労働者の住民運動」という2章で、1931年に京都市左京区に洛北診療所が太田典礼・杉山茂・高橋松蔵らによって無産者診療所として開設された、というところに太田典礼の名前が出てきた。この人は安楽死協会(いまの尊厳死協会)をつくった人だ、ということしか私のアタマにはなかったので、無産者診療所?太田典礼は安楽死の前には何をやってきたのか?と、ぐぐっと興味をひかれた。無産者診療所は、たどっていくと、いまの民医連につながる流れである。

さらさらさん(大野更紗)

さらさらさんさらさらさん
(2013/03/13)
大野更紗

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6月に図書館で借りていちど読み、何人か予約待ちの人がいたのですぐ返して、また順番待ちの最後について、もういちどまわってきたのを借りてまた読む。

一冊目の本、『困ってるひと』が出てから、「作家」としてものを書くようになった大野さんが、「作家以降」にさまざまな場所で書いた、あるいは語った文章をおさめたのが、この本。「個展」のような本というだけあって、装丁もふくめ、どこを見ても、どこを読んでも、大野さんが湧きだしてくるようなつくり。

大野さんのもの言いは、なかなかきつい。その、歯に衣着せず、というようなところがおもしろい。大野さんは、ずどーんと率直である。ああ、こういう人が、あの『困ってるひと』を書いたんやなーと思う。

ピストルと荊冠 〈被差別〉と〈暴力〉で大阪を背負った男・小西邦彦(角岡伸彦)

ピストルと荊冠 〈被差別〉と〈暴力〉で大阪を背負った男・小西邦彦ピストルと荊冠
〈被差別〉と〈暴力〉で大阪を背負った男・小西邦彦

(2012/10/17)
角岡伸彦

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近所の図書館にないのでリクエストしたら、去年の本ではあるが珍しく購入になったようだ。
『とことん!部落問題』とか、『ホルモン奉行』とか、『カニは横に歩く』などの著書がある角岡伸彦さんの作。飛鳥会事件で逮捕された"極道支部長"、小西邦彦を描いている。

小西と同じ立場の部落出身である角岡は、取材に乗り気ではなかった。好きで書いているわけではないともいう。
▼私は小西の批判を含めて、雑誌でも本書でも思うままに書いた。私が常に意識したのは、もし自分がそこにいたら、どうしただろうか、ということだった。市職員の立場で小西と接したとき、「それは無理です」と言えたのか? 銀行員であったら? 支部員であったら? そのような視点がない、「こんな悪い人がいますよ」といったような勧善懲悪型の記事や本にはしたくなかった。
 人間は単純に「善人」と「悪人」に二分されるわけではない。私も含めて、両方を持ち合わせている。ただ、小西の場合、双方の「量」と「質」が尋常ではなかった。(pp.249-250)

なのはな(萩尾望都)

なのはななのはな
(2012/03/07)
萩尾望都

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どこで読んだのだったか、"『なのはな』及び全ての作品を讃えて"と、萩尾望都がジェンダーSF研究会から生涯功労賞をうけた(※)というニュースをみて、マンガのリクエストをなぜか受け付けないというルールがある近所の図書館にあるか?と検索してみたら、あった。ので、借りてきて読んでみる。

2011年3月11日の震災で起こった福島での原発事故。次々と建屋が爆発し、そのなかで政府も電力会社も「大丈夫」と言っている。萩尾望都は、「胸のザワザワが止まらず、といって誰に聞いていいか解らず、何も手がつかないまま」(p.156)だったという。

キュリー夫人がラジウムを発見したところから始まる放射性物質の歴史を調べながら、萩尾望都は「人々がこの奇跡のような新しいエネルギーに魅了され、のめり込んで行く様子はハラハラします」(p.157)と書く。その力への欲望が、危険だと解っていても逃れられない呪縛のように思えて、ウランやプルトニウムを擬人化した三部作のアイデアが浮かんだのだという。

学校では教えてくれないお金の話(金子哲雄)

学校では教えてくれないお金の話学校では教えてくれないお金の話
(2011/07/15)
金子哲雄

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著者は去年41歳で亡くなった。その終い支度を書いた本は、図書館でもまだ何十人か予約待ち。テレビで活躍していた人らしいが、私はほとんどテレビを見ないので、知らず。でも、図書館に所蔵のある本だけでも12冊あって、すごい多作にびっくり。図書館にあった中から「14歳の世渡り術」シリーズ(河出書房新社)の本を借りてみた。

著者は「金銭感覚」を身につけようという。金銭感覚とは、先を見通す力、つまりは、これから先の人生を生きていくために、どれくらいお金が必要かを把握しておく能力のこと。「きちんとした金銭感覚を身につけて、世の中がどんなに変化しても、強く生き抜いていってほしい」(p.5)と、この本は書かれた。

"お金がなくてもゴージャスに暮らせる"という4章の「集才」の話がおもしろかった。それは得意だよという友だちをもとうというのだ。そういう友達を集めるには、自分もひとつでいいから得意分野をもとう。このことなら、とりあえずあいつに聞きにいこうという窓口になれば、人が集まってくる。人が集まれば、世の中の流れが読めるようになる。友だちはお金にも勝る財産だ、と著者はいう。

最後の子どもたち(グードルン・パウゼヴァング)

最後の子どもたち最後の子どもたち
(1984/05)
グードルン・パウゼヴァング

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『そこに僕らは居合わせた』を読み、『みえない雲』の人かと気づいてそれも読み、さかのぼって『最後の子どもたち』を借りてきて読む。

核爆弾が落とされ、生き残ったとしたら?
どんな状況で生きていかなくてはならないのか?

『みえない雲』は、チェルノブイリ原発事故からまもなく、もしこれが西ドイツのどまんなかで起こったら?というかたちで書かれていた。対して、この『最後の子どもたち』は、チェルノブイリ以前に、未知のできごとを物語として書いたかたちになっている。「現実」に起こったこととしては広島や長崎の被爆を参照しているようにも思った。

夏休み、家族で、母の両親が住むシェーベンボルンで過ごす4週間を楽しみにしていた、まもなく13歳になる「ぼく」を語り手に、物語は書かれている。両親と3つ上の姉、幼い妹とともに旅にむかう道中で核爆弾が炸裂したとおぼしき閃光と爆風にあい、倒木をのりこえながら、「ぼく」の一家は、祖父母たちの家へたどりつく。

隣人から、祖父母は、娘や孫たちの来訪を迎えるための買い物に、フルダの町へ出かけたと聞いて、「ぼく」の母は、フルダへ両親を探しに向かい、壊滅したフルダを目にして戻る。

『みえない雲』では、「ただちに影響はありません」とアナウンスされ、政府や軍が、原発事故の起きた一帯から人を出さないようにした光景が描かれていたが、この『最後の子どもたち』では、新聞やラジオによる発表もなにもなく、政府機能が途絶したもようが描かれる。

ほんのミニコミ「ブックマーク」80号ができました

「ブックマーク」80号の表紙半年ぶりに、ほんのミニコミ「ブックマーク」80号ができました。

このミニコミのメインは、読者による「読んだ本・おすすめ本・これから読みたい本」のアンケート。こんどの号はたくさんの本ネタをいただき、「ブックマーク」史上最厚の28ページとなりました。A5判のリソグラフ刷りです。

読んでみたい方には、送料込み1部200円で送ります(代金は小額切手の郵送でOK)。ご希望の方は、送り先をご連絡ください。
letter_peace(at)yahoo.co.jp

※日曜の最終の集配に間に合ってポスト投函できたので、定期購読の方には、お近くなら月曜、遠い方も火曜~水曜には届くと思います。

印刷発送の作業日を1ヶ月ほど前に「この8月の最後の土日」と決めたあと、猛暑猛暑猛暑にもまいりましたが、1週間前には週間予報で「土日は雨」予想が出て、紙や切手を大量に運ぶこともあり、作業の段取りをずいぶん思案しました。

しかも、ふたをあけてみると、カラッカラだった大阪に久しぶりの雨はありがたくも、とくに日曜の午前中はものすごい降りようで、ほんとうに気をもみました。雨雲レーダーをにらみつつ、土曜の午前中に印刷をすませたものは、持ち帰らずにそのままコインロッカーに預けたり。
Genre : 日記 日記
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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