読んだり、書いたり、編んだり 

6月によみおわった本

6月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。梅雨入り後、ほとんど雨の降らなかった月の前半は、38度近い気温になった日があって、いきなり8月並みかとしおれそうになったが、月の後半は梅雨らしい空模様となった。

★月初にたまたま手にした岩波ジュニア新書で、新型出生前診断について、誤りを含む、かなり問題ありの記述を読んでしまい、それからずーっとずーっともやもやして、もんもんとした水無月だった。真っ先に連絡をとったのはWe読者の看護師さんだった。以前から新型出生前診断や遺伝カウンセリングのことで話をしていた人だ。思いを分かち合える人がいて多少救われたが(自分だけが「へんや」と思ってるわけではないということを感じられて)、もやもやは今も晴れない。

戦友の恋(大島真寿美)

戦友の恋戦友の恋
(2009/11/27)
大島真寿美

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『それでも彼女は歩きつづける』を読んで、久しぶりに大島真寿美を読みたい欲が昂進して、図書館にあった本を借りてくる。

むかしは漫画を描いていた佐紀は、同い年で新人編集者だった玖美子に、こんなへたくそな絵じゃアシスタントにもなれないとくさされて、でもストーリーは面白いから原作者としてやってみない?と誘われて、うだうだと悩んだあげくに、原作者として書いていくことになる。山本あかねという本名よりも、山本佐紀というペンネームがなじむほどに。

お互いがお互いの「生みの親でもあるし、育ての親でもある」玖美子と佐紀は、長く一緒に仕事をし、一緒に飲み、共に遊んできた。楽しげな女二人に、「どういう関係の友達?」と質問が向けられると、「あたし達、友達じゃないから」と即答する玖美子。自分たちはもっと特別な関係だと言いたいのだと、友達という言葉には当てはまらないと、佐紀も思う。

あるとき半分酔っ払った勢いで、玖美子が「戦友」だと言った。たしか、亡くなる1年くらい前。このごろ頭が痛いのだとこぼす玖美子に、病院へ行った方がいいと佐紀は忠告した。でも、結局玖美子は病院に行かず、死んでしまった。

不意にいなくなってしまった玖美子。玖美子がここにいないというところから始めるしかない。佐紀は、長い長い喪中のように、玖美子を失った日を送っていく。その日々が、穏やかに書かれていく。佐紀が、携帯もってないところに、みょうに親近感がわいた。

風の島へようこそ(アラン・ドラモンド)

風の島へようこそ風の島へようこそ
(2012/02/15)
アラン・ドラモンド

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福音館の『母の友』という雑誌で、大野更紗さんが連載してるというのをどこかで見て、図書館にあるかなと調べたら、あったので、昨年春の連載スタートにさかのぼってちょっとずつ読んでいる。

その『母の友』で大野さんが紹介していた絵本を借りてきてみる。日本語版は去年(2012年)、原作は一昨年(2011年)に出ている。

デンマークにある小さな島・サムス島は、海にかこまれていて、いつも強い風が吹いている。少し前までは、電気や燃料のつかい方も、「とてもふつう」で、暗い冬の夜にはあかりをたくさんつけ、暖房であたたかくして、お湯もつかいほうだいだった、という。その電気は、デンマーク本土の火力発電所から、海底ケーブルで届けられていた。

あるとき、デンマーク政府が、どこかの島を選んで、そこで使うエネルギーをすべてその島でつくろうという計画をたてた。選ばれたのはサムス島。

「サムス島を自分たちのつくるエネルギーだけでくらせる島にしよう」という計画がうごきだす。子どもたちは、新しい考えにわくわくしていたが、大人たちがわくわくしはじめるには、もうちょっと時間がかかった。「今のままでいい」「カネがかかる」「まっぴらごめん」「べつの島の人たちにがんばってもらったら?」等々、変わること、変えていくことには抵抗も大きかった。

この計画のリーダーとなったソーレン・ハーマンセンさんは、あきらめず、いろんなひとによびかけつづけた。

生き残ってました。主婦まんが家のオタオタ震災体験記(ひが栞)

生き残ってました。主婦まんが家のオタオタ震災体験記生き残ってました。
主婦まんが家のオタオタ震災体験記

(2012/03/14)
ひが 栞

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まんがの絵柄はあまり好みではなかったけど、宮城県の塩竃市で被災した著者が、娘2人と、地震発生からの9ヶ月間をどう生きのびたかを書いた40場面の文章は、むねをえぐられるようだった。

避難所でどんなことがあったか、自宅へ戻ったときにどうだったか、ライフラインが切れているなかで、どう暮らしたか。

航海士で1年のうち60日しか自宅にいないという夫は、地震発生のとき、いなかった。その夫との「非被災者との温度差」という話も。

本の読み方(草森紳一)

本の読み方本の読み方
(2009/08/08)
草森紳一

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どこかでこの本の表紙写真を見かけて、この本にふけるアタマの角度に、なにかを刺激されて、借りてきてみる。表紙カバーの写真にはじまり、各章の扉には、本を読みふける人物や、本にまつわる写真が掲載されている(写真も著者の草森紳一自身が撮ったものらしい)。

タイトルどおり、本そのものがどうというよりも、"本の読み方"、つまりは読む場所や、読む格好、読む時間などについて、著名人を引き合いに出したりしながら、書いてある。

たとえば、

▼読書といえば、頭のみを使うと思っている人が多い。それは、誤解で、手を使うのである。本をもつのにも、手が必要である。頁をめくるにも、手の指がなければ、かなわない。読書とは手の運動なのである。(p.10)

▼本には、「めくり読み」の喜びがある。「めくるだけ」。私は、いくら多読だといっても、読んでいない蔵書のほうが、はるかに多い。ただ「めくるだけ」の喜びだけは、一冊残らず、どの本からも味わっている。(p.52)

▼読書は、「三餘を以てすべし」の発想は、農耕文化のものだということである。冬、夜、雨の「三餘」は、農業にとって、お手あげの時である。「読書の秋」は、虚業中心の「都市文化」、それにつらなる「レジャー文化」」の産物なのである。…「三餘」の成句が、生き残りきれず、死語になるだけの理由は、十分すぎるほどにある。(pp.86-87)

というような具合だ。

はれのち、ブーケ(瀧羽麻子)

はれのち、ブーケはれのち、ブーケ
(2010/11/19)
瀧羽麻子

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『白雪堂化粧品マーケティング部峰村幸子の仕事と恋』がおもしろかったので、同じ著者のちがう本を借りてきてみた。これは、大学同期6人の話。

大学で、同じ「地域文化論」のゼミだった理香子と裕人の結婚式の日を中心に、6つの章は、同期それぞれの目からみたエピソードでまとめられている。大学で学んだ地であり、今日結婚式がある神戸のスポットが章のタイトルにも入っている。ゼミの教授の口癖は「土地がひとを作る」だったというが、そのことも6人のエピソードには垣間見える。

登場人物はすっかり関西弁で、白雪堂の話とは、また全然雰囲気がちがう。著者はどこの出身かと奥付をみると、兵庫県生まれで京都の大学を出たとある。なるほどなあと思う。御影の駅からバスに乗るという大学には、地元出身の学生も多いが、進学を機に神戸でひとり暮らしを始めたという学生もいる。そんな学生時代の話も書きこまれている。

大学を出てから、それぞれが30を過ぎて、ゼミの同期には、転職したのも、子供がいるのもいる。それぞれが、自分の道に、ときに迷いつつも、ふみだしている。

ルポ 子どもの無縁社会(石川結貴)

ルポ 子どもの無縁社会ルポ 子どもの無縁社会
(2011/12/09)
石川結貴

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『We』で、青山さくらさんが連載している「ジソウのお仕事」と重なる内容。

映画「誰も知らない」が実在の事件をモチーフに脚色されたものであること、そのことを知らない人も多いだろうと本は始まる。実在の事件であることは、私も知らなかった。

日本で年間1000人以上の「居所不明児童生徒」と呼ばれる子どもが存在するという。文科省の学校基本調査にも掲載されている数値で、その数値計上の取り扱いについて、文科省からこんな通知も出ている(学校基本調査「不就学学齢児童生徒調査」における「1年以上居所不明者数」の取扱について(通知))。

居所不明とは、住民票を残したまま1年以上所在がわからず、その後の就学も確認されていない子どもで、所在がわかっている不登校などは含まれない。この子どもたちがどこにいるのか、食べて、寝て、着せてもらっているかということさえ、ほとんどわからないらしい。

それでも彼女は歩きつづける(大島真寿美)

それでも彼女は歩きつづけるそれでも彼女は歩きつづける
(2011/10/03)
大島真寿美

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We読者さんから、これを読んだと聞いて、借りてきてみた。

柚木真喜子(ゆずき まきこ)をめぐる、物語。どこか海外の映画祭で、何かの賞をもらったらしいという柚木のニュース、そこから、いろんな人が柚木を思い出す。柚木はまだ映画を撮っていたのかと思ったり、柚木さんがんばってるんだと思ったり、どうして!と苛立ちをつのらせたり。

それぞれの人が見る柚木、思い浮かべるその言動は、柚木との関わりや距離感、好悪の感情によってもずいぶん違っている。柚木の受賞のニュースで、柚木のことを脳裡によみがえらせた6人の女性の、それぞれの話が編んであるともいえる。

同じ柚木という人物を見ながら、こんなにも人の視点は違うんやと思う。同じ場面にいた者どうしの視点の違いを描いてみせる作品はけっこうあるが、それを、同じ一人の人物にむける視線の違いにかえたところが、コロンブスの卵でもあった。

六ヶ所村―核燃基地のある村と人々(島田恵)

六ヶ所村―核燃基地のある村と人々(島田恵)六ヶ所村―核燃基地のある村と人々
(2001/04)
島田恵

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小さな写真集のようなつくりの本。

『いのちと核燃と六ヶ所村』のあと、核燃建設の進行が速度を増していくなかで、1990年、島田さんは六ヶ所村に移り住んだ。だが、引っ越した借家を二週間で追い出された。大家の奥さんから、「いやー、島田さん、実は原燃の人がね、こういうの持ってきて、あんたがこういうやつだって知ってて貸したのかって、毎日来ていくのさ。ほんとに申し訳ないんだけど、出て行ってもらえないか」(p.138)と言われてのことだった。奥さんが置き忘れていったのは、日本原燃サービスの内部資料で、いわゆるブラックリストだったという。

▼大家さんは当時、村議会議員で、息子さんは翌春に日本原燃サービスに就職が決まっていた。奥さんは、私に家を貸したことで息子の就職がだめになるのではないか、と心配していた。仕方なく私は、解いた荷を再びまとめ、そこを出た。(p.139)

島田さんが青森県民になって4ヶ月後、1991年2月におこなわれた青森県知事選挙は、核燃建設をめぐる最大のヤマ場となった。現職で核燃推進の北村氏、白紙撤回を訴えた金沢氏、核燃「凍結」の姿勢で臨んだ山崎氏の3氏の争いとなった。

北村陣営の切り崩し工作はすさまじかったという。のちに山崎氏が発表した「核燃知事選大敗記 われ敗れたりされど」という手記には、こんなことが書いてあるそうだ。

白雪堂化粧品マーケティング部峰村幸子の仕事と恋(瀧羽麻子)

白雪堂化粧品マーケティング部峰村幸子の仕事と恋白雪堂化粧品
マーケティング部
峰村幸子の仕事と恋

(2013/02/07)
瀧羽麻子

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文庫棚にあって、裏表紙の紹介をぴらっと読むと「お仕事小説の白眉」とか書いてあるので、借りてみた。長くておぼえられないタイトルである(単行本のときは『白雪堂』というタイトルだったらしいが、それはそれでワカランよな~)。

著者の名前は「たきわ あさこ」。文庫タイトルにある主人公の名前は奥付のルビでは「みねむら ゆきこ」だが、本文では「幸せな子供で、サチコ」(p.79)になっていて、何かが間違っているようだ。(※)

白雪堂化粧品に新卒で入った峰村の、初夏から次の春までが描かれる。「はじめははじめて」「なにかをかえる」「ひたすらはしる」「どんでんがえし」「それぞれのみち」「おわりとはじまり」と、章のタイトルがすべてひらがな書きなのが、ちょっと目をひく。

このお仕事小説はなかなかおもしろかった。まず人物造型がくっきりしている。主人公の峰村、先輩の槙さん、同期の成宮、白雪堂化粧品の創業者の娘で「シラツユ」という主力ブランドを30年率いてきたマダム、といった会社の面々、そして峰村のプライベートでそれなりの存在感がある院生の(それは就職浪人の仮の姿であるらしい)直也など。

6/29(土)開催:リバティの未来を創るワークショップ(2)

ご一緒に~

6/29(土)開催:リバティの未来を創るワークショップ(2)
日時:2013年6月29日(土)13:30~16:30
場所:リバティおおさか(参加費無料)=JR環状線「芦原橋」下車、南へ約600メートル
共催:リバティおおさかを応援する!プロジェクト
    リバティおおさか(大阪人権博物館)

TRIP TRAP トリップ・トラップ(金原ひとみ)

TRIP TRAP トリップ・トラップTRIP TRAP トリップ・トラップ
(2013/01/25)
金原ひとみ

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金原瑞人の娘?ということは何となく知っていたが、この人の本は全く読んだことがなかった。たまたま文庫棚にあって、借りてみた。

マユという子が主人公。15の中学生だったマユは、パチンコ屋で働く年上の男の寮に潜むように同棲していて、学校には行ってない。男に縛られ、自分も縛りつけているような。そんなマユの生活は、あとの章で、少しずつ年齢が上がっても、あまりかわらない。携帯をいじって、タバコを吸って、酒を飲んで、男をひっかけているのか、ひっかけられているのか。何かに依存することで、やっと生きているようにも感じられる。

マユが夫とパリに行く章、ハワイへ行く章、そして子どもができたマユが子連れでイタリアへ行く章…男への依存、エキセントリックな行動、そういうのを読んでて、加藤和彦と結婚したあとの安井かずみが、こんな感じやったんかなーと、かってに想像した。依存というのか、加藤を縛り、自分を縛りつけるように結婚後を生きた(ように読める)安井かずみ。

マユの姿は、それに似てる気がした。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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