癒しと和解への旅―犯罪被害者と死刑囚の家族たち(坂上香)
![]() | 癒しと和解への旅 ―犯罪被害者と死刑囚の家族たち (1999/01/26) 坂上香 商品詳細を見る |
『ライファーズ』から、10年前の『アミティ 「脱暴力」への挑戦』、そして13年前のこの本へとさかのぼって読む。
殺人事件の被害者遺族と死刑囚の家族が、ともに旅をし、語り合い、体験を共有する、そんな「ジャーニー・オブ・ホープ」がアメリカで始まった。この本は、旅の始まりから、旅に参加したそれぞれの体験と思い、心の葛藤を追う。この旅をとおして、参加者はおのおの、どのように希望を見いだそうとしているのか。
▼「被害者遺族の気持ちを考えると、死刑は必要だ」とは、一般によく言われることだが、日本社会では、家族を殺された被害者遺族が「死刑制度をやめよう」と社会に訴えることは想像しがたい。遺族側が「加害者に対して死刑は望まない」という意見を表明するだけで、「それでも、殺された被害者を愛していたといえるのか」と、マスコミや世間から非難を浴びせられてしまう風潮が社会にはある。
それでは、加害者側である死刑囚の家族はどうだろう。死刑制度に反対するどころか、家族に死刑囚がいると世間に知られることだけで、日常生活ができなくなる。ましてや、被害者遺族と死刑囚の家族がともに行動するなど、今の日本では考えられないのではないか。
(略)
1995年、日本では死刑の執行が定期的におこなわれ始め、執行があったからといって以前のように報道が加熱することもなくなり、執行することがあたりまえの光景になりつつあった。…メディアによって、犯人は更正不可能な凶悪人物として描かれ、被害者遺族は全員が犯人に死刑を望んでいるかのようなイメージが、つくりあげられていった。その結果、「殺人犯人は死刑で当然」という声が高まり、急速に「死刑存置」のムードを社会全般に広めていった。
このまま流されていっていいのだろうか。(pp.3-4)
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