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『人間を見つめて』初版(神谷美恵子)

『人間をみつめて』初版 朝日新聞社 昭和46年8月20日第1刷発行

向井承子さんの詩の引用(『We』179号「往復書簡」)がきっかけで、神谷美恵子の『人間をみつめて』を版違いで借りてきて読む。これらの本の大部分は同じだが、少しずつ内容が違う。

最初に借りてきた初版は、朝日新聞社から1971年に出たもの。版違いの本を並べてあっちを読み、こっちを読みしていて分かったことは、朝日の初版のIII部「忘れ得ぬ人びと」に収録された文章のうち、以下のものが、1974年の改訂版では削られ、その後のみすず書房版でも復活していない(他の本に入っているのかもしれないが、今のところ、ネット検索の範囲では発見できず)。

第III部「忘れ得ぬ人びと」のうち、改訂版で削られた文章と、その初出

「ミッシェル・フーコーとの出会い」…初出『みすず』誌 1969年5月号
「シモーヌ・ヴェーユの軌跡」…初出『神戸女学院大学新聞』1970年10月20日号
「新渡戸稲造の人格形成」…『からだの科学』誌 1971年1月号
「ヴァジニア・ウルフの夫君を訪ねて」…1967年『ももんが』誌より『英語英文学世界』誌 1968年3月号に転載

*『ももんが』誌については、この後に収録されている「光田健輔の横顔」(これは改訂版以降もずっと収録されている)の注記に、「田中隆尚氏が主宰する同人雑誌、高崎市…、ももんが発行所、月刊」とある。

この削られてしまった文章群がひじょうにおもしろかった。

『人間をみつめて』『うつわの歌』『遍歴』(神谷美恵子)

『We』179号の「往復書簡」で、向井承子さんが神谷美恵子の詩の一節を引用され、それを校正のときにチェックしたのがきっかけで、「なぜ私たちでなくてあなたが?/あなたは代ってくださったのだ」のあの詩に、どうも表記の違うバージョンがあることが判明。

向井さんは当初の原稿に、「許してください、らい者よ」と書かれていたが、その箇所は図書館で『人間をみつめて』をあたっていただくと(向井さんは1980年の著作集2巻を参照されたとのこと)、「ゆるして下さい らいの人よ」(「らい」には傍点)となっていた。向井さんは、自分のメモや記憶との違いが解せないとおっしゃっていたが、入稿した原稿は、『人間をみつめて』にあわせて、「なぜ私たちでなくてあなたが?/あなたは代って下さったのだ/…ゆるして下さい らいの人よ」(「らい」には傍点)とした。

人間をみつめて (神谷美恵子コレクション)『人間をみつめて』
向井さんが引用元だとした『人間をみつめて』の最新の版は、みすず書房から2004年に出ている神谷美恵子コレクションだが、この『人間をみつめて』には、初版(1971年、朝日新聞社)、改訂版(1974年、朝日選書)、そして神谷美恵子著作集の2巻として編まれた版(1980年、みすず書房)と、2004年の版の前に少なくとも3つのバージョンがある。

これらの本の大部分は同じだが、それぞれ削られた文章があったり、加えられた文章があったり、少しずつ内容が違う。

「らいの人」と「らい者」が気になって、どこかの時点でこの詩の表記の変更があったのかと思い、それぞれ図書館で書庫から出してもらったり、ヨソの図書館から相互貸借で借りてきてみたのだが、これら版違いの『人間をみつめて』の中で「らいと私」(「らい」には傍点)の章に引用されている上記の詩のタイトルは初版からすべて「らいの人に」(「らい」には傍点)となっていた。

向井さんが自分のメモに取られていたという「らい者よ」が出てこないのが不審で、他にこの詩が収録されている本がないか調べた結果、神谷美恵子の死後に、「みすず書房の吉田欣子氏が熱意をもって収集し、編集された」という『うつわの歌』(1989年、みすず書房)と、『神谷美恵子の世界』(2004年、みすず書房)、神谷美恵子著作集の9巻『遍歴』(1980年、みすず書房)がみつかった。

『季刊 福祉労働』135号 特集:東日本大震災と障害者(福祉労働編集委員会)

『季刊 福祉労働』135号 特集:東日本大震災と障害者『季刊 福祉労働』135号 
特集:東日本大震災と障害者

(2012/06/20)
福祉労働編集委員会

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特集は、「東日本大震災と障害者」。被災した各地からのレポートのほか、障害者制度改革と総合支援法案について尾上浩二さんが書いたもの、青い芝の綱領について書いた戦後障害者運動史再考という論文、「ヒトiPS細胞は何をしたのか」という新連載が収録されている。

巻頭は、「長期的に人を支える仕組みづくりのために、生活の細部を丁寧に伝えていくことが言論の役割」という大野更紗さんインタビュー。

福島での子ども時代を語った話のなかで、「何世代か前にハンセン氏病を発症した家には苛烈な差別がまだリアルに生きていました」というところに、1984年生まれの大野さんに記憶されるくらい、リアルに差別はあったんやなと思う。老人たちは「あそこの家ではお茶を飲んじゃいけない」「あそこのせがれとは絶対につきあうな」と、ひそひそ言ったそうだ。大野さんは、子ども心に「え、なんで!?」と思っていたと。

▼「知的障害の人たちは、差別されながらも、田舎というだだっ広い空間の中で、農業労働者としてコミュニティの中に労働と居場所があったりした気もします。でも、病者、特に病痕がある人に対する『村八分』、排除はすさまじい。病者や身体障害者は家の『穢れ』とされ、なきものとされる。精神疾患や、認知症についても『座敷牢』の世界です。それらは文献や資料の中の出来事ではなく、わたしにとっては、近しい地域社会そのものでした。…」(p.9)

この大野さんの話に、自分と同世代のろう者が、聾学校では手話を禁止され、ひたすら口話教育の訓練をされた、という話を聞いたときと同じくらいの衝撃をうける。
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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